本の感想⑤

二木先生

とあるきっかけで担任、二木が小児性愛者かつ小児性愛者向けの漫画家だと判明した田井中。
その担任が描く漫画が収録された雑誌(コミックLO?)を万引きしそこねて捕まる田井中。
田井中は別に小児性愛者ではないし、普通ぶっている二木の二面性を気持ち悪がるためにただ読んでる感じ。
変わってると昔から言われてきた田井中。
周囲と同じになろうと「特訓」をしたけど途中でやめてしまった田井中は、自分より「世間から忌み嫌わる面」を持ちながらも、皮を被って周囲に溶け込む二木に羨望していた・二木になりたかった、というのがこの本の解釈っぽい?

物語を通して、二木と田井中が埋まりそうで埋まらない、むしろお互い埋めるつもりのなさそうな距離感で互いを甘噛している関係。

二木は二木で自分の立場や妥協点をわかっている。
彼自身の倫理観がある。
だからどれだけ田井中が説教しても効くはずがない。
田井中が投げてくる正論は、二木がすでに攻略済みだからだ。
それでも、二木が言った「来世はまともな性癖の人間に生まれたい」は二木の本音だろう。

二木が小児性愛者だとクラスにバレてしまう展開で「実際に手を出していならよくない…?」みたいな空気が出てくる。
そうじゃない。それはそうかもしれないが、そうじゃない。
むき出した刃で傷つけることはないとわかっていても、進んで近づくなんてするわけない。
だから、傷つけるとわかっている事実は隠さないといけない。

二木の秘密を持ち続けて、あろうことか自分を守るために最終手段で追い打ちをかけるつもりだった田井中を、最後まで好きになれなかった。
終盤、委員長や二木をかばう姿勢を見せたときの人間味を差し引いても、田井中がしたことは最悪だ。

ミステリー小説かなと思いつつなんだかんだ青春ストーリーで終わるかな?と思ったけれど、どっちでもなく後味は良くなかったかなぁ。
面白いかどうかは別として、考察するのが大好きな人にはなんかたまらなそうな1冊かも。

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