見出し画像

深呼吸すら許されない

もはや毎年恒例だが、今年もPM2.5の数値が上がっている。あきらかに窓の外が煙っている。家はバンコクの中心部の高層ビルが立ち並ぶエリアにあるのだが、近くにあるはずのマンションがもやでよく見えない。太陽なんて見えるはずもなく、感覚としては今にも雨が降りそうな空模様、という感じ。雨が降ればいくらか流されるはずなのだが、11月から2月は乾季ということもあり雨も降らない。外に出るともやっとした明らかに体に悪そうな空気が体にまとわりつくようだ。マスクをすればいいのだろうがとにかく暑い。花粉症のようにくしゃみが出るわけでもないのでなんとなく大丈夫だろう、と思ってしまう。

とにかくどんよりとした気持ちの悪い天気と空気で気持ちが萎える。太陽の光が恋しい。晴れてもPM2.5がなくなるわけではないのだけど、それでも明るい方がいい。ここ数日はずっと昼間も薄暗く、どうしても気持ちが落ち込みがちになってしまう。ずっと部屋に閉じこもっているわけにもいかず、外を歩いてもなんだか息が浅くなってしまう。今にも壊れそうな車が黒い煙を吐いて走っているのを見るとなんだか腹が立ってくる。「今すぐ車検制度を導入しろ!」と心の中で叫ぶ。おそらくそんなことをしたらこの国は一瞬で終わってしまうだろう。あてのない怒りは空気の汚いところの屋台でソーセージなんかを食べているタイ人にも向かう。いくらマスクしてもそれ食べたらだめぞ!そしてまず!コーラをやめろ!と彼らは何も悪くないのにイライラが止まらない。とにかく全てに腹が立つ。反抗期か。

それでも、今すぐ日本に帰るわけにもいかない。遊びに来ているわけではないのだから。我々はここで「生活」をしている。食べて、眠って、生きなければならない。自分の力ではどうにもならないことがたくさんあってしかもこんなに暗いと本当につらい。駐在員の妻のみなさんはだんなさんが会社に行ってしまった後、こんなに暗いところにひとりでいては本当に心を持っていかれそうになるに違いない。ぽかんと空いた昼間の時間、深く深呼吸することすら許されず、逃げる場所もない。どうか、どうか、なんでもいいから明るいことを、自分を楽しませる何かをみつけてそこに全力で逃げ込んで欲しいと思う。

あの地震のあと、目に見えない放射能に翻弄され(それはまだ終わっていない)、大気汚染にどっぷりつかり、私たちの体はどうなっていくのだろう。できる対策は取って、とにかく明るい方を、心が楽しくなるなにかでやり過ごしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?