夜がなければ、宇宙があることに気づいていない。
映画「夜明けのすべて」を観に行きました。
この映画には起承転結がありません。
とにかく穏やかにストーリーは展開されます。
青くもオレンジがかった映像はどこか寂しくも温かい。そんな印象を与えてくれました。
映像、セリフ、登場人物、すべてが優しい。
その温かさのせいか、映画を観ている時間は時の流れがゆっくりに感じました。
私はこの映画を観ながら、自分の過去を振り返って気付かされたことがあります。
それは、過去の自分はあまりにも”人の優しさ”を受け取れていなかったということです。
うつ病と闘っていた当時の自分は、なぜか周りの人が全員敵のように感じていました。
「どうせ気持ちを分かってくれる人はいない」
「自分は負け組だ」
「みんなに非難されている気がする」
こんな捻くれた考えをしていたと思います。
そのせいか酷い孤独を感じながらも、
「誰とも関わりたくない」
「周りの反応が怖い」
と苦しくなったら、ひとりになることを選んで生きてきました。
当時の自分は視野と思考がありえないほど狭くなっていました。
周りの励ましの声が聞こえませんでした。
常に暗闇にひとり、という感覚です。
周りの人の優しさにも気づけません。
きっと声をかけてくれた人もいただろうし、助けを求めれば救ってくれる人がいたんだと思います。
その声かけや対応が”正解”と言われるようなものでなくても、そこにはその人なりの優しさがあったかもしれない。
この映画では、私が当時見失っていた、
”周りの人の優しさ”が痛いほど描かれているような気がしました。
そして、”周りの人の優しさ”を素直に受け取るということの大切さに気づかされました。
いくつか好きなシーンがありました。
以下ネタバレを含みますのでご注意ください。
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藤沢さん(萌音ちゃん)が山添くん(北斗くん)に対して、「パニック障害になって良かったことってある?」と尋ねたシーンです。
これに対して、山添くんが「全くない」と答えたことが印象的でした。
私自身、適応障害、パニック障害、うつ病を経験して、克服まで過ごしてきましたが、なって良かったとは全く思わないからです。
寛解して1年が経った現在になってようやく、
「無駄な時間や経験ではなかったかもしれない」と思えるまでにはなりましたが、
辛かった時間は決して「良かった」と言えるものではないです。
映画ならパニック障害をある意味、美化されて描かれてしまうかなと思っていましたが、
「全くない」とシンプルで素直なセリフになっていることが、なんだか嬉しかったです。
次に、山添くんの通院のシーンです。
精神科の病院の先生が言った言葉が印象的でした。
『簡単に手に入る情報は声が大きな人のものばかりだから鵜呑みにしないで』
私はうつ病になった時に、自分に起きている症状が理解できず、ネットでよく検索をしていました。
検索して簡単に出てくるものは確かに浅い情報で、不確かなものばかりなのに、なぜか納得して落ち込んでいました。
まさに鵜呑みにしていたなぁ、と振り返ってしまいました。
簡単に手に入ることを絶対に信じないとまで言いませんが、自分なりに考えて情報を取捨選択しなければいけないですね。
次にいちばんの見どころシーンだと思いますが、藤沢さんのプラネタリウムのナレーションのシーン。
本当に心地よくて、ずっと聴いていたいと思うほど素晴らしかったです。
全部メモをしたいくらいの心地よい言葉と、萌音ちゃんの優しい声で、涙が出てしまいました。
『人間は夜がなければ、宇宙があることに気づいていない』
という言葉がありました。
この言葉の深さに、これまでの経験や記憶、想いが一気に溢れ出て交錯しました。
他にもたくさんのお気に入りのシーンがありましたが、この辺にしておきます。
心にそっと寄り添ってくれるような、繊細かつあたたかな作品、夜明けのすべてに出逢えてよかったです。
星の話が散りばめられた作品で、北斗くんが主演なのもナイスすぎるよ監督!!という感じです。
以上、映画の感想備忘録でした✍️
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