001 ジンクスのお助け
ジンクスがあって、
最悪の想定をしていれば、それは起こらない。
っていうのがある。私には。
例)寝坊した。→ 「絶対遅刻する」と想定。 → 約束の時間に間に合う
例)難しい交渉がある。 → 「相手が激怒。ぶん殴られる」と想定。 → 交渉成立
「想定」するけど、とくに何もしない。
思うだけでいい。最悪の想像をそっと置く。それだけ。
たいていはそれで突破できた。
たまに外れることもあったが、勝率はわりと良い。
倍率の高いライヴのチケットも、「当たりっこない」と思って応募すれば、厳正なる抽選の結果当選するし、
あれほど漏れそうだったウ●コも、ちゃんと公衆便所の便器へおさまる。
ちゃんと漏らす想定していたからね。
「ぜったいに悪い病気なんだろうな」
そっと置く。
あの日もその手を使った。
病院から帰ってきた母は笑顔だった。
「肺に腫瘍があるんだって。たぶんガン」
今回は、外れ。
でも、当たり。
想定していたし。こっちとしては。
そうそう。このジンクスの良いところは、最悪の想定をしてあるから、もし実際に起こっても焦らずに済むってところ。
後日、詳細な検査結果が出た。
どの臓器にガンがあるのか、ご丁寧に書いてある書類が渡される。
あれ? 肺だけじゃないじゃん。あっちもこっちも。どこもかしこも。
ガンのデパート
ガン銀座
にっちもさっちも。
具体的に何ヶ所に見つかったのか、覚えていない。そんな書類見たくなかったし。
今こうなってみると、ちゃんと見ておくべきだったのかも。
うーん。ジンクスはちゃんと踏んだんだけど。
ジンクスが悪いのか。
ああ。ここまでヒドいという想定をしていなかったから、こうなったのかも。
想定の最悪レベルが足りなかったんだ。
「お母さん、治療受けてみようとおもうんだ。治るかわからないけど」
今年中に死ぬ。
そっと置く。
もちろん頭ん中で。
結果このジンクスは上手くいった。
ここから母は2年半生きていた。
書くにあたって「ジンクス」の意味をネットで調べてみたら、
『悪い言い伝え』
とあった。
なるほど。
ジンクス
が悪かったんだ。やっぱり。
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