見出し画像

はし

寄り道して、橋を渡った。

夕焼けの見える時で、橋からはあんず色に縁どられた雲の流れる、すうと薄く、果てのない、遠い山々が見渡せた。下には川がある。大きな川だ。手前にも奥にも、緑草を敷いた小さな堤防が続いている。片方から夕陽が差して、奥の草々がきらんと照れて、水面に映るよりどり緑。橋から川まではうんと高い。欄干に両手をついて、見下ろして、ああこれは落ちたら死んでしまうなと一言。ドキリとして風が吹いてそよそよ。見上げて、空を群になって飛ぶ雁がね寒き、あんずの雲をかき分けて、秋を往く。そのまま片手を欄干にカタカタ引っかけながら、不意にごうごうとバイクが通った。ぎょっとした拍子にまた川を覗くと、鴨の家族の小旅行。おとうさんおかあさんまっておいてかないで、三匹の子鴨が列になって一生懸命。ぼよんぼよんと水面が波に揺れた。乾いた岸に上がって、ぎゅうっとくっついた鴨家族。ふと川を見ると、あれ子鴨がもう一羽。家族のいる方を一心に見つめて、ごめんなさいおとうさんおかあさん、おいてかないで。もう必死で前のめり。落ち着いて、ちゃんと足をかいて、見ているこちらも一心に応援した。がんばれ、もう少し。

そこで橋を渡り切ってしまって、鴨の群は見えなくなった。さて子鴨は無事についたかしら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?