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NVIDIAに工場は・・・

 私の妻は、数年前から株を始めておりデイトレやスキャルピングに関しては私より先輩です。
 その妻が、「NVIDIAって凄いね!」「NVIDIAの工場に勤めている人の奥さんはウッホウッホだね!」と言っていました。
 妻よ、NVIDIAには工場は無いはずだ・・・(多分)。

半導体の業界は分業制


半導体業界

 半導体は、分業化が進んでおり、設計をする企業と製造をする企業がほぼ分離しています。図は、簡単に半導体の種類と企業を示したものです。(この図ではロジックを中心に書いています。メモリはまた別の業界構造があります。)
 今話題のNVIDIAはGPUの設計専業の企業です。製造はたぶんTSMCが実施していると思います。
 なぜ、こんな分業制になったかと言うと、どちらも「途轍もなくコストがかかるから」だと思います。
 昔は、Intelのように設計も製造も両方やって、製造の先進性を設計にも生かすことで市場を席捲することが主流でした。Samsungも一時期はスマホ用のSoCで絶好調だった時があります。
 ところが、設計にも製造にもお金がかかり過ぎてしまい、片方が停滞すると市場で勝てなくなるようになりました。
 特に製造には国家予算並みの投資が必要で、最新プロセス(数nm、原子のレベルで制御する必要があります)は、ほぼTSMC一択の状態になっていると思います。
 一方、設計も用途毎に専用化しないと凡庸な性能になるため、各企業はそれぞれの得意分野の開発にしのぎを削っています。
 一昔前はスマホ用のSoCが最も儲かる半導体でしたので、QualcomやAppleが絶好調でした。そのころは、TSMCの最新工場のラインはSoCで埋まっていたと(奪い合いだったとも)聞いています。
 このように、設計をする企業は設計に専念して、最新プロセスを持つ製造企業に製造委託するようになりました。設計専業をファブレス(fabrication facility less)と呼ぶことが多いです。

NVIDAは何故好調?


GPUの使用用途の変遷

 NVIDIAはGPU専業のファブレスです。
 自作PCをやる人だとGPUと言えばNVIDIAが第一候補に挙がるほど有名です。昔は複数のGPUメーカーがありましたが、今生き残っているのはNVIDIAとAMDの2社だと思います。GPU専門で無ければ、IntelやAppleやGoogle等も技術を持っていると思いますが、今GPUの製品として手に入れるには2社に限られます。
 GPUは画像処理に特化したロジック回路なのですが、画像処理が進化するにあたり、演算機(CU)を大量に置いて、並列処理するようになりました。 
 その演算の仕方が行列を駆使する方法で、ニューラルネットワーク(NN)ととても良く似ている技術でした。
 私は専門では無いので、画像処理について詳しく知りたい方向けに、参考リンクを貼っておきます。(Udemyで有料ですが、画像処理の基礎から丁寧に教えてくれます)

https://www.udemy.com/course/image_processing_python/#instructor-1

Udemy
画像処理の基礎

 これに気が付いたNNの技術者達がGPUを利用しだして、NVIDIAもそれに乗ってNN用の機能をCUに付与するようになりました。このため、Python等のライブラリでもNVIDIAのCUDAが前提になっていることがあります。(AMDのGPUに適用しようとすると微調整が必要だったりして面倒)
 さらに、NNを大規模に実施した生成AIが自然言語や画像に適用できることがわかってきました(私は技術的に全く追いついていません・・・。なので、詳細説明はご容赦ください)。このあたりは、みなさんもChatGPTで経験されていると思います。
 生成AIにはGPUを大量に使う必要があるので、今GPUを供給できるNVIDIAが注目されているのだと思います。

次はどの企業だろう

 株をやっている者として、「NVIDIAの次はどこだろう?」はとても興味のある話題です。
 でも、候補は挙げられますが、断定はなかなか難しいところです。
 前述のように、半導体の設計企業は沢山あります。また、NN技術もかなりの企業が持っています。これらから、勝ち組企業を予測するのは極めて難しいことだと感じます。
 「個人的な感想」になってしまいますが、以下の企業は有力だと感じています。
・マイクロソフトとChat-GPTの組み合わせ
 言わずと知れた、生成AIのトップです。Chat-GPTの内紛の際、マイクロソフトが創業者を含めた技術者を丸ごと抱え込みそうになりましたが、元の鞘に収まったようです。ここなら、生成AIに最も適した回路設計ができると思います。
・Google
 Chat-GPTが出る前は、NNのトップでした。自然言語処理に使っているLLM(Large Language Models)は、Googleの技術だったと思います(BERTとか)。Chat-GPTは教師データを大規模にしたLLMなので(細かいところは違いがあると思いますが)、Googleの技術はChat-GPTと同等レベルだろうと思います。
 さらに、Googleは半導体設計の技術も持っているので、その意味ではマイクロソフトとChat-GPT連合軍より有利かもしれません
・AMD
 NVIDIAに次ぐGPUメーカーです。すでにNN用の製品を出していますし、有力だと思います。ただ、サーバー用のチップが絶好調なので、生成AI用に戦力をどこまで割くかだと思います。やるとすれば、生成AIの技術を持っている企業と組むのが得策な気もします。

 残念なことに、どれも株価が上がり過ぎていて、これから購入するには妙味が薄い気がしています。

工場はTSMC一択

 GPUの設計が、どこが勝つかはわかりませんが、工場はTSMCしか無いと思います。
 TSMCは台湾にしか工場がありませんので、某国が台湾進攻すると大変なことになります。
 なので、今、米国と日本に半導体工場を作っているところです。それでも、最新プロセスの工場では無いので、GPUのような半導体はしばらく台湾でしか製造できない状態です。
 ちなみに、TSMCの日本工場を作っている熊本はとても景気が良いそうです。
 妻が言っていた「工場関係の方がウッホウッホ」はあながち間違ってないかもしれません。

妻よすまない・・・

 NVIDIAのGPUがニューラルネットワークに使われていて、とても有力企業なのは5年以上前から知っていました。仮想通貨にも使われていて、とても利益を上げていることも知っていました。
 なのに、「NVIDIA株を買って一儲け!!」ができなかった私を許してほしい・・・。
(でも、妻はこれを最後まで読まないと思います。私のnoteは「くどい!」とのこと・・・)


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