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宅建士試験合格講座 民法総則 > 制限行為能力者制度 #2

■ 4 保護者の権限

未成年者が自己名義の土地を親に黙って売却したとします。この場合、保護者である親はこの契約を取り消すこともできるし(取消権)、追認することもできます(追認権)。追認すると、もはや契約は取り消せなくなります。また、親は、土地を売却しようとしている未成年者に対してあらかじめ同意を与えて契約をさせることもできるし(同意権)、未成年者に代わって土地を売却してやることもできます(代理権)。
これに対し、成年被後見人の保護者である成年後見人には同意権がありません。成年被後見人は精神上の障害により常に判断力がない状態の者であり、4種類の制限行為能力者の中でも最も能力が低いと考えられます。同意をもらっても、本人が同意の意味すらわからないということが考えられます。結果、成年後見人が代理して契約してやる場合にのみ、有効な契約となりますが、同意を与えたとしても、契約を取り消すことができるということになります。

【保護者の権限(まとめ)】

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人の居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定等の処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。


■ 5 制限行為能力者の相手方の保護

(1) 制限行為能力者の相手方の催告権
制限行為能力者が行った行為は取消しできるので、取引の相手方は不安定な立場に立たされます。そこで、制限行為能力者の相手方を保護する規定(相手方の催告権)が設けられています。
制限行為能力者と取引をした相手方は、1か月以上の期間を定めて追認をするか否かを「催告」することができます。
催告は、原則として保護者に対して催告するべきですが、未成年者が18歳になった場合のように、制限行為能力者が行為能力者になった後は、本人に催告すればよいです。催告に対し確答がない場合、追認とみなされます。
また、被保佐人・被補助人と取引した相手方は、直接本人に催告することもできます。ただし、被保佐人・被補助人に対して直接催告をしたときで、確答がない場合、取消しとみなされます。被保佐人・被補助人への催告とは、「保護者から追認をもらってくるように」という意味の催告なので、期日までに返事をしないからといって追認になってしまっては、彼らの保護に欠けるからです。
なお、未成年者や成年被後見人に直接催告しても、何の効果も生じないことになっています。

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