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木彫人形が動き出す瞬間の心の高鳴り…「眠れない夜の月」

劇場版ごん GON, THE LITTLE FOX(2019年製作)

ストップモーション・人形アニメーション作家、八代健志監督の作品をWOWOWで見ました。

まずは、日本人みんなの心のふるさと「ごんぎつね」の物語。

監督自作の木彫り人形の独特さに、最初は少しとっつきにくい印象でしたが、すぐ引き込まれました。

ごんの子どもらしい生き生きとした動き。
木彫りで表情は決して豊かではないのに、なんて細やかで、なんて雄弁な。そして背景も画面も美しい…

人間の子どもの姿の時のごん

ごんは、兵十や他人から見たら動物の姿に見えて、ごんの視線で語られるときは人間の子どもの姿、という演出。誰もが知るラストシーンをいかに効果的に迎えるか、に心を砕いたのでしょうか。

私は郷土玩具やスーベニール、人形が大好きなのですが、人形は特に笑っていないお顔が好きなのです。例えばドイツのシュタイフのぬいぐるみのように無表情な子が好きです。キティちゃんもそうか。

子どもでも大人でも、いつも楽しい気分の時ばかりではない。辛い時や悲しい時もあるし、つまらない時や攻撃的な気分もあるし、本当の気持ちを隠して別の表情を作っている時もある。

笑っている表情の人形を抱いたときに、共鳴できなくて心が通じ合えない虚しさを感じる時がある。

八代監督の木彫りの無表情な人形が、動き出した瞬間に命が宿るように見えて、思わず心が高鳴りました。

心が伝わる表現は、いろいろなやり方があるんですね。最近、韓国ドラマの直球の心や気持ちの表現に慣れていたせいか、とても新鮮で感動しました。

先日久々にペ・ドゥナの映画「空気人形」を見直しましたが、この映画も無表情と身体の動きが語る雄弁さ、改めて感じました。

眠れない夜の月(2015年製作)

実は、「ごん」より同じ八代監督作品「眠れない夜の月」の方が私は大好きになりました。


巨大な木々が茂る森の中に、つつましく暮らす少年とその家族。
ある日、少年の目の前に突然現れた「リスの姿をした月の番人」。高い樹に引っかかってしまった“月”を一緒にはずして欲しいと言う。このままでは、永遠に夜が終わらない世界になってしまう―こうして、少年とより月から来たという“リス”は、時間の止まってしまった夜の森へ冒険の旅に出る!

公式HPより引用

日本の森を現した暗い画面ですが、とにかく美しい「夜」
子どものお話でずーっと「夜」なのも珍しい。

「夜」は怖い。
でも、お父さんやリスの友達がいてくれて夜の冒険に寄り添ってくれる。
家に帰ったら、お母さんが迎えてくれる温かさと安心感。

この世界観、唯一無二。

木彫り人形も素晴らしいですが、靴や衣服、食器、食べ物、釣り道具に至るまで、こだわりぬいた小道具たち。
想像したものすべてを自分で創り出すことができる人間の手。偉大です。

撮影方法も面白いので、メイキングムービーは必見!

八代健志監督作品
「ノーマン・ザ・スノーマン〜北の国のオーロラ〜」
「ノーマン・ザ・スノーマン〜流れ星のふる夜に〜」
こちらは、子どもと一緒に見ると楽しいかも。


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