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【前編】木久扇師匠の後任は誰?笑点新メンバーについての考察

2024年3月31日をもって、長らく笑点を支えた林家木久扇師匠が番組を卒業しました。

1969年11月から、途中療養などで番組を休んだことはありましたが、約55年もの長きにわたって「愛すべき与太郎キャラ」として笑点に出演していた木久扇師匠。
そんな伝説的ともいえる木久扇師匠の後任は誰になるのでしょうか。

世間では色々な方の名前が飛び交っていますが、ここでは「近年のメンバー交代の分析」と「新メンバーに求められる要素」に着目して、新メンバーを予想したいと思います。

メンバーの変遷

今回の新メンバーを予想する前に、最近のメンバー変更を振り返りましょう。

2000年以降に行われたメンバーの変更は以下の5回。

2004年 こん平病気療養のため休演→たい平が代理出演、2006年に正式にメンバー就任

2006年 5代目圓楽が健康不安を理由に降板→歌丸が司会者に就任。回答者として昇太が加入

2016年 歌丸が体調不安から司会を降板→昇太が司会者に就任。回答者として2代目三平が加入

2021年 三平が降板→翌2022年に宮治が加入

2022年 6代目円楽が病気療養のため休演、後に死去→日替わりゲストを経て2023年に一之輔が加入

笑点大喜利コーナー出演者年表(2000年以降)

2021年の三平師匠の降板以外は、いずれもメンバーの体調面が理由で降板しています。今回の木久扇師匠のケースは、具体的な病気などが原因ではないとはいえ、今年の10月には87歳になるということを考慮しても、体調面を慮っての降板という部分が大きいでしょう。

笑点メンバーに「協会枠」「キャラクター枠」はあるのか

よくメディアなどで言及されるのが「笑点メンバーには協会ごとの枠がある」という話。また「キャラが被るからこの人は選ばれない」ということも言われたりします。果たして本当にそうなのでしょうか。
過去の5回のメンバー交代がどのような経緯行われたのか、それぞれのケースを所属協会や大喜利でのキャラクターに注目しながら見ていきたいと思います。

メンバー交代① こん平→たい平

2004年にこん平師匠の体調不良(当初は声帯の不調。のちに多発性硬化症であることが発覚)を受けて、弟子であるたい平師匠が加入しました。当初はあくまで代理出演だったため、若手大喜利に出演しており、こん平師匠の弟子でもあるたい平師匠が選ばれるというのは極めて自然な流れでした。
こん平師匠はいわゆる田舎者、落語でいう権助キャラでしたが、たい平師匠は有名人のものまねや音マネなどを得意とする芸達者な役回りが多く、師弟ではありますがキャラクターは大きく異なっています。

協会:落語協会→落語協会
キャラ:権助→芸達者

メンバー交代② 歌丸→昇太

2006年に司会の五代目圓楽師匠が退任し、回答者だった歌丸師匠が司会に就任。その空いた席に昇太師匠が加入しました。回答者が司会者に昇格するのは圓楽師匠と同様ですが、圓楽師匠は回答者から一度降板し7年ほどたってからの司会就任だったため、回答者からそのまま司会者に昇格したのは歌丸師匠が初めてです。
回答者としては、歌丸師匠のあとに昇太師匠が加入した形になりましたが、両者とも落語芸術協会に所属しており、同じ協会内での交代ということになります。
歌丸師匠は社会派の回答で客席を唸らせることが多かったですが、一方でハゲやジジイ、死亡ネタや幽霊ネタなど、老けて見える容姿をイジられることでも多くの笑いを取っていました。
後任の昇太師匠は加入当初は独身であったことから、嫁がいないことネタにされたり、また答えをよく噛むことが多く、他のメンバーにイジられていました。

協会:落語芸術協会→落語芸術協会
キャラ:社会派&老けキャラ→独身&噛みキャラ

メンバー交代③ 昇太→三平

2016年、体調面の不安から司会の歌丸師匠が降板。回答者だった昇太師匠が司会に就任し、後任には二代目林家三平師匠が加入しました。
昇太師匠は落語芸術協会、三平師匠は落語協会と、別の協会から後任メンバーが選ばれています。
昇太師匠が「嫁がいないキャラ」だった一方、三平師匠は妻が女優の国分佐智子さんということで、愛妻家キャラを売りにしていました。

協会:落語芸術協会→落語協会
キャラ:独身&噛みキャラ→愛妻家

メンバー交代④ 三平→宮治

2021年末、三平師匠が「スキルを磨きなおす」ために番組を降板。翌年に桂宮治師匠が加入しました。
三平師匠は落語協会、宮治師匠は落語芸術協会の所属。別の協会からの後任メンバー選出でしたが、三平師匠が昇太師匠の後任だったことを考えると、落語芸術協会に回答者枠が戻ったともいえます。
宮治師匠は子供が3人おり愛妻家・子煩悩キャラ。またのちに加入する一之輔師匠とは年齢が近く、ほぼ同時期に番組に加入したこともあり、お互いを罵倒するなどライバル関係を築いています。

協会:落語協会→落語芸術協会
キャラ:愛妻家→愛妻家・子煩悩

メンバー交代⑤ 六代目円楽→一之輔

2022年、六代目円楽師匠が病気療養のため番組を休演し、そのまま復帰することなく同年9月に逝去。休演後は週替わりで東西の人気落語家がゲストとして出演していましたが、2023年4月から春風亭一之輔師匠がレギュラーとして加入しました。
円楽師匠は圓楽一門会、一之輔師匠は落語協会所属。円楽師匠はインテリ、毒舌キャラとして知られていましたが、一之輔師匠は毒舌というよりは皮肉屋といった印象です。また前述の通り、宮治師匠との罵倒合戦も定着しつつあります。

協会:圓楽一門会→落語協会
キャラ:インテリ・毒舌→皮肉屋

以上のように、2000年以降のメンバー交代を見てきましたが、メンバー交代における両者の所属協会やキャラクターの変化については、さほど重要視されていないように感じます。
5回の交代で後任が同じ協会だったのは2回、キャラクターをそのまま継承したケースはほとんどないといってよいでしょう。

笑点メンバーに求められることとは?

では、笑点メンバーに求められることとは何なのでしょうか。
あくまで個人的な意見ですが、以下の3点が重要なのではないかと考えます。

1.個性的なキャラクター

笑点はもともと、長屋に住む人たちと大家をイメージして作られた、といわれています。司会者が大家、メンバーが店子で、その個性豊かな店子が大家さんに楯突いたり、店子同士でやりあったりするのはまさに落語に出てくる長屋そのもの。これが番組の大きな魅力にもなっています。
この店子であるメンバーは、泥棒、貧乏、与太郎、キザ、インテリ、権助…というように、非常にわかりやすいキャラクターで構成されています。
キャラクターがハッキリしていて個性的であればあるほど、周りもイジりやすくなる=笑いを生み出しやすくなるわけですから、キャラがハッキリしていること、個性的であることはとても重要な要素だと思います。

2.アドリブ力

大喜利は、出されたお題に対して、その場で面白い回答を考えるという非常にアドリブ性の高い演芸です。当意即妙に、またほかの人よりも面白い回答を考えつく力=アドリブ力、というのは大喜利において欠かせない要素です。
一方で、「笑点には作家がいて、台本があるじゃないか」という指摘もあります。これに関しては私は関係者ではないのであるともないとも断言することはできません。ただ事前に決められている回答があったり、やり取りの大まかな流れが決められていたとしても、それから外れたアドリブによるやり取りや、予定外の回答によって生まれる笑い、というのも大いにあるはずです。
いずれにしても、お題に対する回答、そしてメンバー間のやり取りにおいても、アドリブ力というのは非常に重要だと思います。

3.(いい意味での)タフさ、鈍感さ

笑点は今や国民的な人気番組です。
メンバーの動向は話題になりますし、今回のようなメンバー変更は多くの議論を呼ぶなど、国民の関心を集めています。
一方でメンバーに対する評価というのも、以前よりも格段に厳しくなっています。特に最近のSNSの発達により、誰が面白い、誰がつまらないといった意見が耳に届きやすくなったことで、出演者は以前よりも「批判の声」にもさらされやすくなっています。
SNSをやらないベテラン世代の人であればそのような声も気にならないでしょうが、SNSに親しんでいる世代にとっては、こういった「世間の声」は耳をふさいでいても入ってきてしまうもの
そういった声に動じないタフさ、鈍感さというのも、これからの出演者には求められる要素だと思います。

木久扇師匠の後任は?

それでは、話を本題に戻します。
番組を卒業した木久扇師匠の後任になるのは、いったい誰なのでしょう。

ネット上やメディアで名前が取り沙汰されている芸人さんについて、前述の3つの要素を踏まえたうえで考察していきたいと思います。

<後編に続く>


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