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無謀な挑戦の話

きっかけはネット記事だった。

ハンバーガーを100個食べるという挑戦で、見た目のインパクトもなかなかだった。今でこそYouTuberがさまざまなチャレンジを行っているが、当時はそういった存在は一般的ではなかった。

この話を知人らにすると、ぜひやってみたいということになった。

4人で100個というのはさすがに現実的ではあるまいと考え、とりあえず50個でやってみようと提案した。

するとその中のひとりのAは「50個だとインパクトないなぁ」といささか不満顔をした。

なんとか彼をなだめすかし、後日我々は某ハンバーガー店に集結した。

「ハンバーガー50個ください」とAが普通のトーンで注文すると、店員は「ご、50個ですか?」と聞き返した。そりゃそうだろう。ウリである0円スマイルもそのときばかりは身を潜めていた。

わたしたちはその光景を階段の陰でほくそ笑みながら見守る。

できあがりまで時間がかかるということで、わたしたちは座席について決戦の時を待った。

「ひとり何個いけるかね」
「10個くらいじゃない?」
「おれは15はいけるな」
「5個くらいでダメかも」
などと話していると、第一陣が到着した。

プレートには10個のハンバーガーが乗せられている。
この感じで10個ずつくるのだろうか。

「10個ずつだと冷めそうだな」
「でも、そろったとこの写真撮りたい」

第二陣が到着。
なんと次は40個一気に来た。

つなげられたテーブル上に敷き詰められる50個の物体。
壮観な眺めに意味不明な笑みがこぼれた。

「よし、戦いの始まりだ」

各自が敵に立ち向かう。
3個くらいまでは特に抵抗もなく食べられる。
5個くらいからだんだんと雲行きが怪しくなってきた。
敵を侮っていたことを痛感し、戦慄が走る。

6個目を食べ始めたひとりが「なんだかイカを食べているようだ」と言い出した。徐々に味が感じられなくなり、ただただ歯ごたえだけを感じるようになるのだ。

「みんなどうだ?」
「甘く見すぎた」
「10個食べるのもムリそう」
「つらい」

結局我々は7個ずつ食べた。
残り22個があざわらうかのようにテーブルに鎮座する。

持ち帰ろうと思ったが、袋をもらっていなかった。

仕方がないのでAのパーカーのフードとポケットに無理矢理全部をつめこんだ。結構入るものだなと妙な感心があった。

帰り道、Aは何人かに二度見されていた。

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