松尾 豪

国内外電力市場・制度と燃料中・下流(ガス・石炭)の調査を行っています。CIGRE会員、…

松尾 豪

国内外電力市場・制度と燃料中・下流(ガス・石炭)の調査を行っています。CIGRE会員、電気学会正員、公益事業学会会員。資料引用等のお問合せはgo.matsuo@eesi.co.jpまで。

最近の記事

世界のLNG・石炭需給状況(23年8月)

①世界のLNG輸入状況(単位:万トン)②世界のLNG輸出状況(単位:万トン)③世界の一般炭輸入状況(単位:万トン)④世界の一般炭輸出状況(単位:万トン)

    • 太平洋戦争による電力業界に対する影響

      (1)戦時下の電力体制①電力国家体制  昭和13年に成立した電力管理法、昭和17年に施行された配電統制令を受け、日本の電力体制は日本発送電と9配電会社に統合され、電力国家管理体制が完成した。 発電・送電機能を日本発送電(以下「日発」)が、配電・営業機能を北海道・東北・関東・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の各配電会社が有していたものの、電圧階級による切り分けは明確なルールが存在せず、70kV送電線については日発・配電会社双方とも保有する状況であった。 以下図は中部配電の

      • 長崎市への原子爆弾投下による電力業界に対する影響

        昭和20(1945)年8月6日に広島市へ原子爆弾が投下され、続いて8月9日には長崎市にも原子爆弾が投下され、長崎市だけで73,000人以上の死者を出した。当時長崎市は九州配電長崎支店の営業範囲であり、本稿では九配長崎支店の被害・復旧活動について記す。 (1)被害 8月9日11時2分、アメリカ陸軍航空軍第509混成部隊所属のB-29戦略爆撃機「ボックスカー」によって原子爆弾「ファットマン」が投下された。九州配電長崎支店では職員21名が殉職し、職員の家族77名が死亡した。長崎支

        • 広島市への原子爆弾投下による電力業界に対する影響

          本投稿は、以下ツイートを再編集したものです。 昭和20年8月6日午前8時15分、米軍機によって広島市に原子爆弾が投下され、電力業界も壊滅的な被害を受けた。当時広島市の送電業務は日本発送電中国支店が、配電・営業業務は中国配電が担っていた。本稿では広島における電力業界の原爆被害・復旧活動について記す。 (1)日本発送電中国支店の被害状況①中国支店の被害状況 日本発送電中国支店は現在の広島市中区大手町3丁目(現在の中国電力大手町寮付近)にあり、爆心地から900m地点であった。

        世界のLNG・石炭需給状況(23年8月)

          近年の実績リスト

          詳細は弊社Webサイトをご覧いただくか、お問合せをお願いいたします。 ■支援実績支援先 ・大手電力会社(東証プライム上場、50Hz所在) ・大手電力会社(東証プライム上場、60Hz所在) ・大手機械メーカー(東証プライム上場) ・経済産業省 資源エネルギー庁 ・Bain & Company(Bain External Adviser/2022年) ・大手総合商社(東証プライム上場) ・大手石油会社(東証プライム上場) ・国内大手都市銀行(東証プライム上場) ・大手都市ガス

          近年の実績リスト

          国際フォーラム「ロシア・エネルギー・ウィーク」の様子(Deepl直訳)

          2021年10月13日モスクワ へドリー・ギャンブル上級特派員(通訳)こんにちは、大統領閣下。皆さん、お待たせしました。ロシア・エネルギー・ウィークへようこそ。このフォーラムは20周年を迎えた。アブダビを拠点に活動するCNBC上級特派員、へドリー・ギャンブルです。パネリストを紹介する。Totalのパトリック・プヤンヌCEO、BPのバーナード・ムーニーCEO、Exxon Mobileのダレン・ウッズCEO、Daimler兼Mercedes Benz会長のオラ・カレニウスCEO

          国際フォーラム「ロシア・エネルギー・ウィーク」の様子(Deepl直訳)

          ACER(欧州エネルギー規制庁)が公表した 「HIGH ENERGY PRICES」 全訳(前半)

          ※注:実際のレポートはこちら Executive Summary本レポートの背景 エネルギー価格は欧州全体でこれまでかつてない高水準に達している。2021年10月のガス価格は半年前の4月に比べて4倍に、電力価格は2倍の水準に達している(※電力価格上昇の主要因はガス価格上昇が原因)。当然ながら、現在のエネルギー価格高騰は、欧州連合の政治的議題の最優先課題となっている。 各国政府は、エネルギー価格高騰の要因分析に注力しており、高騰が一時的か、恒久的に続く変化なのか、見極めよ

          ACER(欧州エネルギー規制庁)が公表した 「HIGH ENERGY PRICES」 全訳(前半)

          10月6日プーチン大統領発言全文(ほぼ直訳)

          10月6日にロシア・プーチン大統領が、「エネルギー危機は欧州の過ちであり、ロシアはガス市場を安定化させる準備ができている」といった趣旨の発言を行い、欧州のガス価格が急落する局面がありました。 これは、ロシア政府首脳が集まった「エネルギー開発に関する会議」の席上で行われた発言でした。 残念ながら、私はロシア語には疎く、機械翻訳(DeepL)を通じた翻訳を行ったものを以下の通り貼付します。 意訳を行える個所は行っていますが、意訳が困難な部分は、日本語として難があったとしても

          10月6日プーチン大統領発言全文(ほぼ直訳)

          Kwasi Kwarteng ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣のエネルギー価格高騰に関する庶民院演説全文(21年9月20日)

          自由化先進国である英国では、9月に入ってからガス・電力価格の高騰により、多くの電力・ガス小売事業者が経営危機に陥り、9月末までに10社が事業停止に追い込まれました。 Kwasi Kwartengビジネス・エネルギー・産業戦略大臣は、これら経営危機に陥った小売事業者への救済策は用意しない方針を明らかにしています。 本記事では英国政府の方針が明らかになった9月20日の庶民院演説全文を紹介します。 和訳(一部意訳を含みます)議長の許可を得て、英国のガス市場について報告する。

          Kwasi Kwarteng ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣のエネルギー価格高騰に関する庶民院演説全文(21年9月20日)

          テキサス電力危機を経た州世論について

          2021年2月のテキサス電力危機では、停電により数百万人が影響を受け、100名以上が死亡したと見られている。州議会は電力規制変更の法案を可決し、市場における上限価格の低下や発電設備の寒波対策などは講じられたものの、供給力確保に向けた具体的な政策的措置や他州との連系線増強などの施策は盛り込まれず、将来のリスクを内包していると批判されている。 ところが、6月中旬より米国を襲った熱波の影響でERCOT管内でも多くの電源が計画外停止、ERCOTは節電要請を実施する事態となった。

          テキサス電力危機を経た州世論について

          インバランス等料金単価の上限値設定に対する見解

          1月15日、経済産業省よりインバランス等料金単価の上限を200円/kWhとする特例措置が実施されると公表され、SNS上で大きな議論を呼んでいます。私は今回の事態においては、インバランス等料金単価の上限設定が必要だと考えており、今回の特例措置については賛同しています。 JEPX前日市場では、1月4日以降売り玉が売り切れてしまい、買い手が価格を付ける状況が継続的に発生し、徐々に価格が上昇していきました。METIによるインバランス上限価格設定の発表まで、JEPXスポット市場の約定

          インバランス等料金単価の上限値設定に対する見解

          2020年夏にカリフォルニア州で発生した計画停電の概要①停電の経緯

          2020年8月14日-15日にかけ米国西部を記録的な熱波が襲い、カリフォルニア州では需給逼迫に直面、California Independent System Operator(以下、CAISO)は大規模な計画停電に踏み切った。 CAISOは10月6日に計画停電の中間報告書を発表したが、今後の対策についてはCAISOで検討が続いており、連邦エネルギー規制委員会(以下、FERC)もCAISOの対応に不備があるとの指摘を行っている。 中間報告書では、今回の計画停電の原因として

          2020年夏にカリフォルニア州で発生した計画停電の概要①停電の経緯

          メキシコで発生した大停電について

          2020年12月28日(月)午後2時28分、首都メキシコシティを含む12州で1,030万人が影響する大停電が発生した。停電した需要は8,698MWであり、これは当該時刻の需要の26%に相当する。停電発生時点の需要は31,789MWであった。 1. 時系列メキシコ国立エネルギー管理センター(CENACE)が公表している停電に関する情報、12月30日にCFEがオンライン上で記者会見した際に公表した情報を整理すると、時系列は以下のとおりである。 ・午後2時27分 Lajas変電

          メキシコで発生した大停電について

          インバランスは出してはいけないものなのか?

          日本の電力関係者の間では、インバランスは「出してはいけないもの」と認識されている。ところが、現在の日本の電力市場制度は、「実質パワープール」と呼ばれることが多く、パワープール制の下ではインバランスの概念はない。 需給バランスを反映するものはリアルタイム市場価格であり、前日市場も相対卸取引も基本的にはリスクヘッジのための金融的取引として認識されている。 2022年以降に開始される新インバランス制度は、調整力の限界的なkWh価格を参照する(需給逼迫時の補正の仕組みも存在)。20

          インバランスは出してはいけないものなのか?