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ポケモンでわかる!「性格ガチャ」全8種類④&⑤

本日の被害者は…4番モリー…と、5番マードック。サブキャラで出番が少ないからとかではなくて、今回解説する「感情型」については内向・外向の両者をセットで扱った方が分かりやすいと思ったので。



「感情」は合理的?


ユングが分類した4つの心理機能において、「感情」は「思考」と対極の機能であると考えられている。思考型の人がすぐに「なぜ?」や「どうして?」を問うことを通じて物事を認識するのに対して、感情型の人物の特徴は「自分が好きか・嫌いか」「それを見てどう感じたか」で現象を把握することだ。


以前に出した例では、ポケモンの御三家を選ぶときに、何を基準に選択したかによって、タイプの分類ができると説明した。それに従えば、思考型の場合は「どのポケモンがストーリー攻略で有利か?」「後々のパーティに必要になるのは何タイプか?」といった要素を考慮して、合理的な選択をすることを好む。

一方で、感情型の場合には、「とにかくこのポケモンが好き」「カッコいい・可愛いから」「一緒にいたいと思わない」など、自分の内側に生じた情動をもとに選択する傾向がある。つまり、好きか嫌いか、美しいか醜いか、快か不快かなど、物事から受ける感情が判断の基準となる。


理屈や理由を問いたがる「思考型」に対して、自らの気持ちに素直な「感情型」が対極の機能であることは、なんとなく理解できるだろう。また、思考型は比較的男性に多く、感情型は女性に多いとされている。



思考型の男性が泣いている女性を見て「ヒステリー女」と言ったり、感情型の女性が頑なに意見を曲げない思考型の男性を「カタブツ」と呼んで非難するのは、お互いの劣等機能を、つまり自分が目を背けたいと感じている一面(後述する”影”)を見せつけられているような気がするからである。


また、これはさらっと読み流してもらって構わないが、ユングは「思考」と「感情」の機能を「合理機能」と呼び、一方で「感覚」と「直観」を「非合理機能」と称した。「感情」が合理的であるとか、「直観」「感覚」が非合理的などと言うとおかしく感じるが、これには理由がある。


「感覚」「直観」の機能は、まず外界から何かを自分の内に取り込むための機能である。一方で、「思考」「感情」の機能は、直観や感覚によって取り入れた情報や刺激を基にして判断を下す機能であるとユングは語っている。リンゴそのものは勝手に存在していて、形や色も自ずと決まっており、いわば理性の入り込む余地はない。そこにある理由や良し悪しを判断するのが、理性の仕事である。


簡略化すれば、それが何であるか(感覚)・それはどんな可能性を秘めているか(直観)を見極めるのが「非合理機能」の役割で、好き嫌いの判断(感情)・理由や法則の発見(思考)を行うのが「合理機能」である。


女子力高めおじさん登場?!


では、キャラクターの分析に入っていこう。まずはマードックから。この人に注目している人は少ないように思えるが、キャラクター造形という面から見れば、かなり珍しく独特に思われる。というのも、感情型の男性はそれほど多くなく、しかも外向的感情型となると、他のアニメや漫画のキャラクターを参照してみても、ほとんど思い当たる例がないのだ。


もしかしてサワロ先生に似てる…?


外向的感情型の特徴は、自分の気持ちに素直に従うのだが、周囲が「良い」「快適」と思うことが自分にとってもそのまま当てはまるので、協調性が高く気が利いて、面倒見が良く愛嬌のある人物と評される。つまり、このタイプの人は、自分と周囲が気持ちよく過ごせることを重視するため、パーティ会場などでは切り盛り上手で、非常に重宝するのである。

マードックは作中での出番が多くなく、限られた描写から人物像を浮き彫りにするしかないが、彼が外向的感情型であることは容易に読み取ることができる。


マードックは自室から出てこようとしないドットを心配して、どうにか外に出て来させようと画策する。だが、この時の方法がかなり独特で、毎晩ケーキを作って誘き出すという、摩訶不思議な作戦を行うのである。


たとえばだが、不登校の子供の親がいるとして、部屋の前にケーキを置いたりするだろうか?普通なら部屋の外から呼びかけるとか、強引に入って説得を試みるなど、話し合いによって考えを変えようとするのではないだろうか。つまり、「理性」によって子供の考えを正すことで、引きこもりという現状を解決しようとするのだ。


ドットも言ってしまえば引きこもりのようなもので、マードックとフリードが困っている様子が描かれている。ドットと同じ思考型のフリードには、理由をつけて「外に出なくても生きていける」ことを正当化するドットに対して、合理的な瑕疵がない以上は反論のしようがなく、珍しく解決策を提案できずにいる。


一方で、マードックは「ドットにもみんなと一緒にいてほしい」という気持ちを持っている。しかしながら、ここでマードックがドットに対して「みんな待ってるから出てこい」と言わないところが、実はすごいところなのだ。思考型のドットにとって、周囲からの「感情的」な呼びかけは、かえって反発心を掻き立てられ、問題をより一層ややこしくなる原因にもなりうるからだ。


ママ友地獄は”影”の逆襲?


僕は「性格ガチャ」の各回の最後に、その人物の劣等機能が物語を通じてどのように鍛えられていくか、展望を述べるようにしているが、これはユングが提唱した”影”という概念と関わっている。


ユングがいう”影”とは、簡潔にまとめれば「生きられなかった自分」「認めたくない自分の一面」といえる。たとえば、思考型のフリードは常に冷静で合理的であるが、その一方ではもっと感情に身を委ねたり、自分の気持ちに素直に行動することを拒んでいるため、後者が彼にとっての影=「生きられなかった半面」ということになる。


マードックの場合は、「ドットもみんなと一緒にいればいい」と思っているのだが、これは彼自身が考えて導き出した結論というよりは、「引きこもりはよくない」「みんなで協力すべき」「1人だけ外れていると周りの人が嫌な思いをする」といった、世間一般的な価値観に照らして出てきた考えである。

ぼっち飯なんか怖くねえぜ…


世の中のお母さん方を揶揄うつもりは毛頭ないことは予めご理解頂きたいのだが、「みんなやっているから、あなたもやりなさい」「〇〇くんも行ってるんだって」「子供がいじめられないために」といって、塾通いや習い事を子供にすすめ、好きでもないママ友と付き合う人は、自分の考えよりも「世間体」を重んじる感情機能の働きが強すぎると考えられる。


僕は典型的な内向的思考型の人間なので、「みんながやってるからって、自分もやらなきゃいけない理由にはならないでしょ」「〇〇くんがなんやねん」「そんなんでいじめてくる奴と友達になる必要なくない?」と考えてしまう。



これは極端だとしても、外向的感情型の人は、対人関係をよくすることばかり考えたり、周囲に好かれようとしすぎると、主体性を失って没個性的になる危険がある。しばしばドラマで見かける、「ママ友付き合い、もう無理」と疲れ切ってしまうアレとか、子供のためと思って頑張っているにも関わらず「ママなんか嫌いだ」言われてしまうアレは、外的な人間関係にばかり囚われてしまい、無視されてしまった自分の内面や子供が”影”となって忍び寄り、本体に復讐を企てていると考えられる。


その点で、マードックにとっては、非常に強固な主体性を持つドットは”影”と呼べる存在である。マードックはドットを通じて自らの劣等機能に向き合っている。


だが、マードックは賢明にも感情に訴えかけることを押しとどまる。逆に言えば、だからこそマードックは「自分がもっと美味しいケーキを作れるようになる」という、一見すると意味不明な解決策以外に思いつかなかったとも言える。


いずれにせよ、これもマードックが「生きて来なかった一面」に直面して苦悩する姿を、制作陣がさりげなく描いているのである。


「静かな水は深い」:内向的感情型モリーの場合


さて、お次は同じく感情型のモリーを見ていくのだが、内向的感情型の彼女はマードックとはずいぶんと違うと感じるかもしれない。


クール・ビューティ


外向的感情型にとっては、周囲の雰囲気や世間の評判が、自分にとっての感情に直接繋がると書いた。適度に人と人とのコミュニケーションをサポートしたり、大人数が集まる場で切り盛りすることが得意である。


その一方で、人間関係を円滑にするために奔走して疲れ切ってしまったり、身近な人にまで自分の価値観や世間体を押し付けるようになると自分の個性を失ってしまい、本来なら得意とする気持ちの微妙なコントロールができなくなり、あるいは激情に身を任せてヒステリックになり失敗してしまうことになる。



ところが、内向的感情型の場合には、自らの胸の内に込み上げる強い思いが行動の原動力となる。外から見ると控えめで落ち着いていて、ともすると冷ややかで無感動にさえ感じられる。それは、その人物は細やかな感情を持っているにも関わらず、内向的ゆえに興味や関心が周囲や外界には向かないため、内なる感情を表に出すことを好まなかったり、適切な表現の仕方を知らないからである。


モリーは完全にこのタイプに当てはまる。彼女はオリーヴァの森の中で、リコに向けて「医者の家系に生まれ、一族はポケモンセンターで働くことになっているのだが、自分自身は野生のポケモンたちを助けたいと思っている」と、過去と内に秘めた想いを語った。


あまり自分のことを語りたがないのも内向型の特徴


あまり多くを語りたがらず、一見クールに見えるモリーだが、その胸には森のように深い優しさと炎のように熱い想いを秘めており、まさしくユングの「静かな水は深い」という表現が当てはまる、典型的な内向的感情型の女性である。このタイプは、ナイチンゲールに見られるように、深い感情に支えられて尊い自己犠牲を成し遂げることや、高い宗教性や芸術性を見せることがある。


その一方では、モリーもマードックと同じく、思考を劣等機能としている。作中では、モリーが傷ついたポケモンの治療にかかりきりになって、リコとロイに巨大オリーヴァとの戦いを任せっきりにしてしまう場面があり、彼女の強すぎる想いが保護者として取るべき合理的な判断を曇らせていることが描かれている。


このように、内向的感情型の人物は、自分の感情を押し通そうとするあまり、わがままになったり、時には残忍にさえなることがある。あるいは自身の感情を表現できないため、他人が自分をどう思っているかを尋ねられずに気になってしまい、神経衰弱の状態に陥ってしまうこともある。


パートナーは似たもの同士?


最後に、マードックとモリーの相棒ポケモンについて触れておこう。


マードックの相棒であるイワンコは、図鑑の説明に「小さい頃はよく懐く。育ってからも主への恩は忘れない」とあるように、自分の内なる感情に従う感情型であると思われる。また、マードックにはもう1人、一緒にケーキを作るマホイップいて、こちらも「信頼するトレーナーにはクリームでデコレーションした木の実をあげる」とあるように、トレーナーとの信頼関係を重んじるポケモンだ。


忠犬


モリーの相棒はラッキーで、こちらも図鑑によれば「傷ついたポケモンや人がいるとたまごを分けたえる優しいポケモン」とあり、周囲への気配りや優しさを大事にする外向的感情型であると考えられる。作中ではだいたいどこのポケモンセンターにもラッキーがいて、傷ついたポケモンや来客ににこやかに対応している。

ポケセンの受付担当


このように、トレーナーにとっての相棒は自分と似たポケモンの方が、互いに心地よい関係を築きやすいのかもしれない。だが、心地よさに止まらないのが今作の深い部分だ。



イワンコとマホイップは、ドットのことで悩むマードックに対して「時間をかけて関係を築く」ことや「信頼を抱きつつ待つ」ことを示唆するが、たしかに「信頼」という感情は時間をかけて育て上げ、自分の胸にグッと抱え込むべきもので、慌ててでっちあげることはできず、無闇に他者に振りかざすべきものでもない。外向的なマードックに、内なる感情の大切さを教えるのがイワンコとマホイップの仕事でもある。



ラッキーは、モリーが心に秘めた優しさを外に向ける手本を示している。内向的なモリーは思いやりや慈悲深さを備えているのだが、周囲からは冷たい女性に見えてしまい、普段はそれらの資質を発揮できずにいる。だからこそ、自分から積極的に他者に関わることが求められており、ラッキーが身をもってその方法を見せてくれているのである。


マホイップって200種類おんねん


次回予告:クソ陰キャ引きこもりオタク配信者の頭の中とは?


次回はお待ちかねのドットが主役の回。僕は彼女と同じ内向的思考型なので、頭の中が手に取るようにわかってしまう。そんなわけで、ドットについては長くなりすぎないように頑張ってまとめたいと思う。

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