「未来少年コナン」

※『電撃TV&ビデオ攻略ガイド』(2001年1月5日発行)より再録

放送日時・1978年4月4日~1978年12月29日
毎週火曜日19時30分~20時、全26話
放送局・NHK総合

■作品解説 宮崎駿初監督作品
NHK初の連続アニメであり、宮崎駿の初監督作品。最終戦争後の緑が蘇りつつある地球を舞台に、太陽に育まれた自然児コナンが美少女ラナを守って仲間と共にインダストリアの独裁者レプカの陰謀と戦う物語。
宮崎は原作を換骨奪胎、長年蓄積したモチーフとテーマ、持てる技術の全てを投入、実作業でも八面六臂の活躍を見せ、マンガ映画の香りを残す驚異の大傑作を完成させた。

●見どころ 宮崎アニメの原点
『コナン』の魅力はとにかく見てもらうのが一番なのだが、それでも見所を幾つか。先ずはコナン自身の魅力が存分に発揮される1話で驚異的な足指の力に驚こう。海岸で海鳥と話すラナのか細い姿も印象的。彼女をかかえて走るコナンの「ラナは軽いな、鳥みたいだ」の名セリフも必聴。捕らわれのラナと再会を果たし、宮崎アニメの定番、高い塔からの脱出を図る6話。ラナを抱きかかえたまま高所から飛び、着地したコナンの足裏から頭の先までビリビリと衝撃が伝わって行く、いかにも『コナン』らしいマンガチックな名場面。8話の、海中で身動き取れぬコナンにラナが口移しで空気を与えるシーンは後に内外のメディアにパクられまくった。浜辺で初めての出会いを回想するシーンも美しく、どこまでも続く砂漠をラナを背負って駆けるシーンも印象的。
ラナの故郷ハイハーバーにインダストリアの兵士が進攻し村を襲う。「ラナに、さわるなー!」コナンの絶叫が響く17話。心と心が通じ合う二人が18話で見せる絶大な信頼関係も感動的。大津波で帰る術を無くした女兵士モンスリーが失われた少女時代を思い出す19話。麦わら帽子に長い髪で愛犬と共に走る姿が愛らしい。彼女が次第に人間性を取り戻していく過程は名セリフ「バカね!」の変遷と共に輝いていた。24、25話の巨大機ギガントでの攻防は最後の山場。発進シーンの重量感。美術の山本二三が自らセルに筆を入れたハーモニー方式によるギガントの迫力。風圧に抗しつつ巨大な翼の上を走るコナンの姿に胸躍る。「うろたえるな!」と叫びつつ兵士の先頭に立って駆け回るレプカも見逃せない。
宮崎アニメの登場人物は皆一生懸命だ。そして皆が変わって行く。極楽トンボだったコナンは意識を持った少年に、ラナはコナンの大らかさに心の抑圧を解放され、ジムシイは仲間と暮らす楽しさを知り、モンスリーは心の鎧を脱ぎ捨てて素直な女性に、ダイスは良き海の男となってモンスリーと結ばれる。インダストリアの住民も人間として立ち上がる。このキャラクターの浄化と解放のドラマは、宮崎アニメの重要なモチーフとして継承されて行く。
全編に渡って活躍する飛行艇ファルコ、お椀型のフライングマシン、流線形のナメクジマシン等の独特な宮崎メカも見逃せない。12話のコアブロックの様相、23話の太陽塔の復活等のSF的なビジュアルも見もの。最終26話、鳥になってコナンの元へ翔ぶラナ。そして大団円。この充足感。大いなる人間賛歌。発達し過ぎた文明への警鐘と、自然との共生の提唱を根底に、圧倒的な動きの魅力で見せる『コナン』は正しく宮崎アニメの原点なのだ。

▲周辺情報
学生時代から温めていたモチーフという8話で全力を出し切った宮崎は9、10話で高畑に演出の助力を仰いだ。明らかに毛色の違うこの話数を見比べることで二人の演出作法の違いが解るかも。
また3話でジムシイがタバタバ(タバコ)を吸う場面はNHK側の配慮で初放映時にカットされて話題を呼んだ。そのジムシイは大の食いしん坊。飼っているブタにつけた名前もそのものズバリ「うまそう」だ。
再編集の映画版が流行した当時、『コナン』もやはり映画になったが、内容は本編と正反対の内容に改ざんされていた。当然宮﨑監督はノータッチ。なお、近年『コナンⅡ』がTV放送されたが、内容的、スタッフ的には無関係。

※初出:電撃ムックシリーズ『電撃TV&ビデオ攻略ガイド』メディアワークス発行(2001年1月5日)、構成・編集=島谷光弘
※内容は執筆当時のものです。

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