東京国際映画祭アニメーション部門

10月23日から開催された第36回東京国際映画祭(TIFF)のアニメーション部門を鑑賞した。
今回のTIFFアニメーション部門は前回までの「アニメと特撮」という括りから部門全体をリニューアル。プログラミング・アドバイザーはアニメ評論家・藤津亮太さんが続投した。
前回までの「東京から発信」から「東京で世界の今を知る」へと変化。
「ビジョンの交差点」と題して、日本と世界のアニメーションの最先端を見せるというコンセプトの下、国産4本、海外5本の長編アニメーションの新作上映、「海外映画祭と監督」として内外で受賞歴のある3本の長編アニメーションの上映と監督の登壇、「アニメ・シンポジウム」として2つのプログラムが組まれた。
これまでとはガラリと趣向を変えた試みで、特に海外の未公開長編が観られることに注目が集まり、全国のアニメファンが集結した。

海外アニメーションは5本の長編(後述)が上映され、いずれも2023年の新作。
国籍、テーマ、技法、ルックが異なり、多彩さの中に今日性と普遍性を見出すことが出来る作品が揃い、見応えがあった。
国籍で言えば中国作品は2本選出だったが作画と3DCGとルックも大きく異なり、今最も勢いのある国と言える中国の現在を伝えていた。
各作品の上映後に行われた監督と藤津さんのトーク、あるいは藤津さん単独での作品解説も理解を深めることに役立ち意義深いものだった。
初回上映ではまだ空席があった『深海レストラン』の2回目の上映は完売。初回の好評を聞きつけたのだろう観客の素早い動きに驚き、情報感度の高い観客が集合する映画祭と改めて感じた。

映画祭会場は日比谷・有楽町エリアの映画館が中心。
会場的には通常の映画興行を続行中の映画館を使用しての上映だったが、元々映画街である周辺エリアを挙げて大掛かりな宣材や企画の展開があり、映画祭ムードも高まった。
シン・ゴジラ像が建つ日比谷スクエアでは11月3日からの新作ゴジラ映画公開も控えて賑わいが増し、日々の往来が楽しみだった。
場所的にも飲食や交通手段に困ることもなく快適に過ごせたのも、実は映画祭としては珍しいことでポイントが高い。

文化の秋だからか他のアニメ関連イベントとスケジュールが重なることもあり、当初の予定を変更せざるを得ない場合も発生。苦慮しながらではあったが結果的に非常な充実を覚える映画祭だった。
通常のアニメーション上映では見かけない層の観客や、デートとして楽しむカップル客も多く、東京国際映画祭という歴史と伝統のある映画祭ならではの光景だったと思う。
作品的にも藤津さんのセレクトが効力を発揮、新たな発見の連続だった。
監督の登壇も多く、トークも貴重。公式ニュースですぐに取り上げてくれるのもありがたかった。
藤津さんをはじめ映画祭運営サイドの方々には感謝しかない。
次回にも大いに期待したい。

TIFFについて、藤津亮太さんのインタビュー。長文だが良い記事。
https://anime.eiga.com/news/column/tiff2023_news/119729/

海外長編は以下の5本。各作品については別に書く予定。
『アートカレッジ1994』中国、リウ・ジェン監督、作画、119分。
『リンダはチキンがたべたい!』フランス、キアラ・マルタ&セバスチャン・ローデンバック共同監督、作画(クリプトキノグラフィー)、73分。
『深海レストラン』中国、ディエン・シャオポン監督、3DCG、112分。
『ロボット・ドリームス』スペイン・フランス、パブロ・ベルヘル監督、作画、101分。
『トニーとシェリーと魔法の光』チェコ・スロバキア・ハンガリー、フィリップ・ポシヴァチュ監督、ストップモーション(人形)、83分。

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