思てたんと違う!

タイトルは2008年のM-1グランプリで笑い飯が最終決戦の3組に残れないことが確定した際に西田が放った言葉である。

あくまでも個人的な意見だが、これがM-1史上最も一番面白かったシーンだと思う。

私達の日常にもたくさんの「思てたんと違う!」が溢れている。

最大料金1200円と思ってたコインパーキング、よく見たら最大料金は平日のみ適用って書いてあって5000円以上かかった時の「思てたんと違う!」。

パッケージ見てめちゃくちゃタイプだと思ってレンタルしたAVを再生し、画面に無加工の女優が映った時の「思てたんと違う!」。

2020年のゴールデンウィークの過ごし方、レジャーの余地なく「思てたんと違う!」。

誰もがたくさんの「思てたんと違う!」を経験しながら生活している。

この「思てたんと違う!」は自身の予想よりも悪い結果になった場合に発生するもので、大きく分けて下記の4種類に分類できる。

・G to B (Good Result to Bad Result)
良い結果になると期待していたが悪い結果になった場合の「思てたんと違う!」

・G to LG (Good Result to Less Good Result)
良い結果になると期待していたがさ思ったほど良い結果にならなかった場合の「思てたんと違う!」

・N to B (Nothing to Bad Result)
何も起きないと思っていたが悪い結果になった場合の「思てたんと違う!」

・B to MB (Bad Result to More Bad Result)
悪い結果になると思っていたが想像以上に悪い結果になった場合の「思てたんと違う!」

前述の例をこれに当てはめると笑い飯の例はG to LG、コインパーキングの例はN to B、AVの例はG to B、今回の新型コロナウイルスに関しては初期はN to B、4月以降はB to MBに分類できるだろう。

こうして名前をつけて分類すると学術的な記事の様にも見えてくるが、私はこの問題について研究したことなど一切なく、ただ思いつきで書いているだけなので、これを読んでいる皆さんも決して深く考えることなく、適当に読んで欲しい。

Don't think. Feel.

画像1

ここからは私の人生において経験した「思てたんと違う!」体験の中で特に印象的だった事例を紹介したいと思う。

私はインディーズバンドをやっている関係で、楽器演奏をする方との出会いが非常に多い。

今回の登場人物であるAさん(仮名、女性)もまた、昼間はOLとして働きながら夜はライブバーなどで楽器演奏をする方だった。

私とAさんはたまに一緒にご飯に行くこともあったり、それなりに仲良くしていたつもりだ。

ある日、私はAさんのライブ演奏をとあるライブバーに観に行き、お酒を飲み、同席した他のお客さんなどとも談笑しながら「じゃそろそろ帰るね」とAさんに挨拶をして店を出ようとしていた時だった。

「待って、ちょっと2人で話したいことがあるから、お店の外で待ってて」

突然Aさんに呼び止められた。ライブ演奏後にAさんもお酒を飲んでいたためお互いにほろ酔いだ。

このタイミング、異性、お酒も入っている、2人で話したい、以上の条件から私でなくともおそらく一般的な感覚を持つ人ならなんとなく察しはつくだろう。

一旦店の外に出てAさんを待つ間、私は限られた時間の中で真剣に考えた。

少しぽっちゃりしているが愛嬌があって可愛らしいし、少し天然だけど性格も良くて、元々仲も良い、そして相手も楽器演奏をする人なので、お互いの活動に理解もあるだろう。断る理由なんてあるだろうか?

ありよりのありの方向に思考はシフトしつつも、優柔不断な私は結論を出せぬまま彼女が店の外に出てきた。

「ごめんね〜、帰ろうとしてるとこ引き留めちゃって」

いやいや全然問題ないし、むしろそういった気遣いのできるところがさらに好印象ですらある。

~それで、話って何?~

「実は私、今、不倫してて...」

思てたんと違う!

予想だにしない切れ味の鋭い変化球に手が出ず、1ストライク。
本来であればN to Bの様に思える場面であるが、一度期待して気持ちが高まってしまっているため、このケースはG to Bである。
ていうか相手は誰やねん、職場の上司とかか?できれば知り合いでないことを祈る!

~えぇ〜そうなん!正直びっくりしたわ!相手はどんな人なの?~

「相手はひと周りぐらい年上のフリーターなんだけど」

思てたんと違う!

想像を絶するチェンジアップにバットを振り損じ2ストライク。
B to MBだ。事態は想像以上に深刻である。
しかし中年でフリーターにもかかわらず嫁がいて不倫相手もいる男の恋愛戦闘力の高さは我々一般人にとっては脅威でしかない。おそらく本気を出せば一夫一婦制をとっている日本社会の夫婦制度を破壊することができるレベルのモンスターだ。

しかし、しかしである。
これをわざわざ私に相談してくるということは、いわば、「あなたに私の不倫をとめて欲しい、あなたの愛で私を軌道修正して」というメッセージなのかもしれない。

意を決して再度バッターボックスに立ち、もう一度バットを構える。

~それで、Aさんはどうしたいと思ってるの?~

「実はもし今の奥さんと別れてもらった時の慰謝料とか計算してみたんだけど、払えない額じゃないなって思った。」

思てたんと違う!

手を出せばこちらの手が粉砕骨折するぐらいの豪速球を見送り3ストライク。
相手の男はフリーターで慰謝料を払えないことを見越し、それを肩代わりする覚悟までしている。そこまでしたいと思える相手に私は出会ったことがあるだろうか。

脈なし、心停止、バッターアウト、ゲームセット。
試合終了のサイレンが鳴り響く、対戦相手と観客に一礼して球場を去る。

一応、やめといた方が良いと思うとは伝えたが、既に燃え上がってしまった恋愛感情というのは山火事の様なもので、多少周りから水を差されたぐらいでは鎮火しないものなのだ。

彼女と男とその奥さんでの最終決戦がどうなったのかについては、私は聞いていない。

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