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初めての お仕事。

YMO(イエロー マジック オーケストラ)が
テレビに登場した頃。
 電子音の旋律に感電した。

前髪を伸ばし、モミアゲはテクノカット。

☆(テクノカット…!?)

髪型は完成した。
しかし、致命的な類似不足事項があった。


「キーボード」を持っていない。

テレビ画像で「Roland」とマークされていることに気づいた。

Roland。

メーカー名なのか?機械の名前?、
値段も知らず、どんな楽器なのかも。

  (同じものが欲しい。)

高校生の時代。
冬休み、春休み、アルバイト実行を決断。

短期間でおカネを稼ぐ。
技能も資格もない。
あるのは体力。

職種は限定されてくる。

「引っ越し」。

募集広告の連絡先に電話する。

「明日から来な。」

面接は無い。
即日採用。
翌日、勤務。

A地点から、B地点へ荷物を運ぶ。

それだけだ。

箱の詰め方、順番、荷物の持ち方、
手順がある事を後日、覚えた。


仕事内容の話は
どこかのコラムでいたします(笑)。
時効と思いますが、
出演者の呼称を変更しております。


仕事にも慣れてきたある日。

荷卸しが遅くなり、深夜に。
同じ高校の相方と二人で事務所へ。

「おい、バイト君。
   仕事は慣れたか?」
支店長?事務長?らしきオトコ。

「遅くなったからウチで飯、喰ってけや。」

こんな遅くの時間に
おじゃまするのは迷惑かと、
言ってはみたが。

「作って待ってるヒトがいてよ。」

拒否権は、無い。

黒塗り、セダン、大型…クルマに乗る。
音もなく潜水艦のように走り出した。

「いいか、これからオレが言う事を
    良く聞くんだぞ。」

事務長が話す。

「なにがあっても"美味しいですね~"」
「"料理、得意なんですね、"」

「これ以外、言うな。」

互いに見合わせた。

…不安な予感がする。


門構えと重い扉、監視カメラが複数。

扉が開く。

犬が2頭。
黒いドーベンマン。
黒い服のおにーさん。

(俺たち、死んだな。)

奥座敷に連れられた先に
食事が用意されていた。

豪傑感のある方の登場。

「お、ご苦労さん。
 メシ、食っていってな。」


(確かに、拒否権はないな。)
(早く、帰りたい。)

「口に合うかわからないけど、
沢山あるから。」

(ムスメかな?)

入れ替わって入ってきた女性。

演歌番組出演しても違和感のない、美しさ。

和製美人。

立食。

汁物から。
温度がヌルイ。
 致命傷ではない。
濃い。
味が濃い。
致命的。

揚げ物。
肉。
唐揚げか?
肉が半ナマで油が舌にまとわりつく。
致命傷。

大盛りご飯。
炊きあがり、硬い。
致命傷。

豪傑感のある方、再入場。
「最近、アレが料理に目覚めてな…。」

「そうなんですか。」
答える。

「味、どうだ?」

「美味しいですね。」
台本のままに。

「そうだろ、俺もそう思う。」

(本気でそう、思ってるのかな?)
懐疑的感想。
(早く、帰りたい)

「お替り、いるか?」
豪傑。

「お腹、イッパイです。」

「ん?、そっかぁ…!?」

表情が険しくなる豪傑。
「ウチの、アレが作ったんだよ…」


(雰囲気、マズい…どうする!)


「美味しいす、もう少しください。」

(相方、ナイスだ‼)

「そっか、そうだよな。遠慮するなよな。」

ご飯、肉、増量となる。

「料理、得意なんですね。」

皿に増量加算。

酢の物らしき小鉢。
ワカメと胡瓜。
酸味増々。
甘さ増量。
味の不調和音。
致命的。

(早く、帰りたい)

「汁物、要るだろ。」

「十分、頂きました。」

豪傑、表情が険しくなる。
「あん?」

(もう、要らない。)

「ありがとうございます、頂きます。」
相方の返事。


「そうだろ、若いんだから。」
機嫌良くなる豪傑。

(お腹が痛くなってきた、、、)

その後に食べた料理の記憶が無い。

近くの駅まで送ってもらった。

車のテールランプが見えなくなると同時に
吐いた。

翌日も吐き気と微熱。
体調不良で仕事を休む。

回復まで1週間。

予定していた予算に達せず。

シンセサイザー購入の意欲減退。

モデルガンを購入し、終る。

分別が出来る年齢となるが、
半年ごとに仕事を辞め、
転職を繰り返す人生となった。

最初の仕事選びは慎重に。
相性が悪いと思えば逃げること。
(失敗しても死ぬことでもないし。)

#はじめての仕事

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