東日本大震災十周年追悼式の天皇陛下のおことば(令和2年3月11日)

以下、東日本大震災十周年追悼式の天皇陛下のおことば本文の書き起こし:

 東日本大震災から10年が経ちました。

 ここにみなさんとともに、震災によって亡くなられた方々とそのご遺族に対し、深く哀悼の意を表します。110年前の今日、東日本を襲った巨大地震と、それに伴う津波により2万人を越す方々が亡くなり、行方不明となりました。また、この地震に伴う津波や原子力発電所の事故により、多くの人々が避難生活を余儀なくされました。この震災の被害の大きさは、忘れることのできない記憶として、今なお脳裏から離れることはありません。
 あれから10年、数多くの被災者が想像を絶する大きな被害を受けながらも、ともに助け合いながら幾多の困難をのり越えてきました。また国や全国の地方自治体、160を越える国・地域や、多数の国際機関、大勢のボランティアなど、国内外の多くの人々が様々なかたちで支援に尽くしてきました。

 わたくしも皇后とともに被災地を訪れてきましたが、関係者の努力と地域の人々の協力により、復興が進んできたことを感じています。これまで、復興に向けて歩んできた多くの人々の尽力と弛みない努力に、深く敬意を表します。
 一方で、被災地ではまださまざまな課題が残っていると思います。復興が進むなかにあっても、新しく築かれた地域社会に、新たに人と人とのつながりを培っていく上では、課題も多いと聞きます。家族や友人など、親しい人を亡くしたり、あるいは住まいや仕事を失い、地域の人々と離ればなれになれになったりするなど、生活環境が一変し、苦労を重ねている人々のことを思うと、心が痛みます。
 また原子力発電所の事故の影響により、人々がいまだに自らの家に帰還できない地域や、帰還が始まったばかりの地域があり、農林水産業への風評被害の問題も残されています。

 高齢者や子どもたちを含め、被災された方々の心の傷を癒し、心身の健康を見守っていくことも大切であると感じます。今後、困難な状況にある人々が、誰一人取り残されることなく、1日でも早く、平穏な日常の暮らしを取り戻すことが出来るように、復興のあゆみが着実に実を結んでいくよう、これからもわたくしたち皆が心を合わせて、被災した地域の人々に、末永く寄り添っていくことが大切であると思います。わたくしも皇后とともに、今後とも被災地の方々の声に耳を傾け、心を寄せ続けていきたいと思います。
 先月にはマグニチュード7を越える地震が、福島県沖で発生しました。被災された皆さんに心からのお見舞いを申し上げます。この地震は東日本大震災の余震と考えられており、このことからも震災を過去のこととしてではなく、現在も続いていることとして捉えていく必要があると感じます。

 わが国の歴史を振り返ると、巨大な自然災害は何度も発生しています。過去の災害に遭遇した人々が、そのつど後世のわたくしたちに残した貴重な記録も、各地に残されています。この度の大震災の、大きな犠牲の下に学んだ教訓も、今後決して忘れることなく次の世代に語り継いでいくこと、そして災害の経験と教訓を忘れず、つねに災害に備えておくことは、極めて大切なことだと考えます。そして、その教訓が活かされ、災害に強い国が築かれていくことを、心から願っています。
 いまなお様々な困難を背負いながらも、その苦難を乗り越えようと、弛みない努力を続けている人々に思いを寄せ、安らかな日々が1日も早く戻ることを皆さんとともに願い、御霊への追悼の言葉といたします。


東日本大震災十周年追悼式の天皇陛下のおことば(令和2年3月11日)*字幕あり https://youtu.be/s3s6eC3aUuw @YouTubeより

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