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映画PERFECT DAYS鑑賞二回目の感想


以下の文章は映画の内容を含みます。
とても個人的な感想です。

少し前に東京に行き、隅田川テラスを歩きました。
隅田川テラスは川沿いを歩くことができる遊歩道で、私は両国からてくてく散歩開始。
川には遊覧船や屋形船が舫いであり、遊歩道には相撲や隅田川の風景など江戸時代の浮世絵が描かれている。
現代の風景と江戸時代の風景を想像しながら歩くことができて楽しい散歩でした。

隅田川に沿って6号高速道路が走っている。
浅草方面に歩いていくと、スカイツリーが大きく見えて来て、パーフェクトデイズの平山さんはこの道路も車で走っているかな?と思いました。

高速道路を走っていたらスカイツリーが見えるんだろうなーワクワクします。
逆光で暗くなってしまいましたが、上の写真は朝です。

映画パーフェクトデイズをもう一度観たいと思ったのは、一回観て書いた感想をもう少し書き足したいなと思っていたことと、映画館で上映している間にもう一度観たいなと思って行きました。
私にとって二回目を観ている時間はとても穏やかで心地いいものでした。
一回目の感想に足すのは違うかもしれないと思い、別にしました。
一回目の感想へのリンクは一番下にあります。



役所広司さんが演じる平山さんは、スカイツリー近くの静かな場所に住んでいます。
古い木造のアパート。
寝たり着替えたりする部屋にあるものは、本と音楽のテープとカセットデッキと照明器具と引き出しタンスと布団くらい。
朝は窓から聞こえてくるホウキでザッザッと掃除する音で目覚め、出かける用意をして外に出ます。
扉を開けて空を見上げる、かすかに微笑んでいる平山さん。
缶コーヒーを買って仕事道具がきれいに積まれた車に乗り、今朝聴く音楽のカセットテープを選んでセットしたら走り出します。
朝日や景色、音、車、皆一瞬として同じことはなく流れていくもの。
朝の風景と音楽と運転する平山さんはとてもフラットな感じがします。

仕事場(渋谷区の公衆トイレ)に着き、物品補充・清掃に取り掛かります。
自分で工夫して作った道具があるようで、きっと平山さんなりの作業の順番があるのでしょう、動きに無駄はなく流れるように仕事を進めていきます。

何ヶ所か現場を移動します。よく会う踊る人(田中泯さん)に会釈したり、透明の扉の使い方に困っている人に使い方を動作とともに伝えたり、トイレ内のすきまにある紙に記号を書くのは無言のコミュニケーション。
同僚と会話を交わすのは最低限、でも彼の話はよく聞いている。

サンドイッチと牛乳でお昼ごはんを食べるのは神社の緑の中。
大きな木のこもれびを写真に撮ったり、種から出てきた小さな小さな木を土とともに持ち帰り、湯呑みに植え替えて世話をしている。

一日の仕事が終わると、着替えて自転車に乗りお風呂屋さんへ。
さっぱりしたらもう少し自転車をこいで浅草地下の鉄板焼き屋さんへ、一杯飲んで何か食べる。
お風呂屋さんでも鉄板焼き屋さんでも人と会話をするわけではない、笑顔で会釈をする。

寝る前に本を読み、眠る。部屋にテレビやラジオはなく、携帯はガラケー。

休みの日は、衣類を洗濯したり寝る前に読む本を買ったり、気になっているママ(石川さゆりさん)のお店で飲食する。

毎日は同じではないけれど、平山さんの暮らしはほぼ決まったことを繰り返しているよう。
そしてそのひとつひとつのことを穏やかに行うことを大切にしている生活。

平山さんが声を出して訴えた、それは同僚が急に仕事をやめてしまった時。
現実問題として二人でしていたことを一人でするのは負担が大きすぎるだろうし、それによって生活・仕事のリズムがかき乱されることが続いてしまうなら、平山さん自身の心や体のリズムも乱れてしまうからなのだろう。
きっとそれをよくわかっているんだな、と思いました。

一回目に観た時はストーリーがどうなっていくのかわからなかったのと、上映時間が長めなので少し疲れてしまったけれど、
二回目は平山さんの生活を描くこの映画を観ていて私自身がすごく穏やかな気持ちになりました。
映画を観終わったあともその感情は続いています。



ここから私自身の話をしながら、感じたことを書きます。
この映画を一度観てから、二月にきっかけがあって出会った本を読みました。
その本で自分の気質というものを知り、ある程度理解することができました。
すべてのことが気質で説明できるのではないし、ひとりひとり違うのだけど、本に書かれていた内容から、なぜ自分はこうなんだろう?と思っていたことのあれこれに納得がいき、自分との付き合いがかなり楽になりました。

何かを見たり経験した時に起こる感情は「美しい」「楽しい」こともあり、「ショック」「悲しい」こともある。期待しすぎてしまい「悲しい」ことになったこともあります。
受け取るのはさまざまでひとつの感情だけでないのだけれど、「ショック」や「悲しい」ことのほうが、記憶に残りやすいそうです。
「美しい」ものを見ても、その前後に「悲しい」ことがあったらそっちが強く残ってしまう。
いつも自分の中に占めるのはそんな感情ばかりになりがちだし、体も疲れることばかりだなぁと思っていました。

不安や気分が落ち込むことも多く、何か行動してもマイナスの感情が強く残るのが当たり前になっていました。
感情は記憶とも結びついているから過去のことがマイナス多めのことばかりだったら、おおげさかもしれないけれど、毎日「悲しい」ことが基本で、さらに「不幸探し」までしていたように思います。
そしてそんな自分の状態は、もうしょうがないものと思っていました。

読んだ本の中に、「悲しい」感情はあるけど「美しい」「楽しい」こと、心地よいものが身近にある良さ、大きな幸せを期待しすぎるより小さな幸せを感じること、そのひとつひとつを喜ぶ方を大切にするのが穏やかに過ごせる方法のひとつとありました。
これは当たり前のことかもわかりませんし、確かに「楽しい」感情や気づきはあったのに、自分は正反対のことばかりしていたのかなぁと思いました。

平山さんの生活を観ていて、平山さんが微笑むときに私も微笑んで小さな幸せを感じていました。
こもれびや太陽の光がつくるゆらめき、二回目はこんなにたくさんあったのねと発見してうれしくなった。

もう一つこれも気質なのかと思うことに、『相手の考えていることを勝手に想像して、それが絶対正しいことだと思い込む』ということがありました。
そしてそれはおおむね間違っているということ。
人の思いや考えていることはわからない。
会話できる身近な家族でもそう、なにかしら関わる人ともそう。
コミュニケーションがスムーズにいかず、疲れることが多々ありました。

テレビやスマホから流れてくる情報に感情を揺さぶられることも多い。
外からの情報が入る時間はかなり減らしたほうがいいんだろうなと思う。その情報はほとんど小さな幸せや心地よさとは結びつかないものばかり。

平山さんは、情報を入れすぎることはないし、仕事も人との関係が少なく自分のリズムでできることを選んでいる。
全く人との関係を拒否しているわけではなく人とは笑顔で会釈するし、楽しく脈があるのかも?と思ってる?ママのお店には行き会話する。
妹(麻生祐未さん)との関係から、過去にいろいろあったのだろうということは何となくわかる。
傷ついたことがたくさんあったのだろうということも。

しかし今の生活は平山さん自身が選択したもの。
シンプルな生活そのものを大切に、自分が気づく小さな幸せを感じながら生きていきたいのだろう。
人との適度な関わり、こもれびに微笑み、小さな木を育てること、朝のホウキの音や車の中で聴く音楽、仕事も気持ちよく体を動かせることなのかもしれない。
それが平山さんのPERFECT DAYSなんだろうな。

先日、東京に行った時に立ち寄った店や場所で親切にしてもらったことや、隅田川テラスを歩いたこと、旅が終わるころに私の過ごした時間はとても幸せだったなと感じました。

ひとつひとつの小さな「うれしい」「ありがとう」それをことほぎ、喜ぶことができるようになったのかと、そのことがまたうれしくなりました。



生きている人は皆、日々の生活を送っている。
自分で選択した生活をしていても外からやってくるものはある。
人との関係や環境の変化など。
それは小さな幸せに影を落とすものかもしれないし、新たな光をもたらしてくれるかもしれない。
予想はつかないし全くわからない。
日々の生活では感情や体が揺さぶられてしまうことは起こる。それはプラスとかマイナスで言えるものでもないし、対策をしておくことはできない。

喜びや悲しいこと、光と影があるのは音楽家や小説家やアーティストと言われる人たちだって同じだと思うが、彼らは作品として音楽や文章やアートを届けてくれる。
素晴らしいプレゼントだと思います。

平山さんの仕事場への行き帰りドライブ中いつも流れている音楽。
遠い記憶や近い記憶、今日これからのこと?平山さんの頭に浮かんでいるのは何だろう?
平山さんの暮らしに音楽は無くてはならないものということがうれしい。
好きな音楽を聴いているだけの時もあるだろうし、頭に浮かび体に記憶している感情が音楽とともに平山さんにしかわからないかけがえのない世界となり、車の中で鳴っているのかもしれない。笑顔になったり、涙があふれそうな平山さんを観て、そう思いました。



私はエレファントカシマシ、宮本浩次さんの曲を知り、聴き、音楽の喜びを三年ほど前から知るようになりました。
歌詞やメロディがなんでこんな風に表現できるのだろう!といつも思ってしまう。

曲がふいに浮かぶことはよくあります。
これは以前には無かったことで、なんだかうれしいことです。
今日は、『脱コミュニケーション』
歌詞を読んで、フフフと思っています。

エレファントカシマシの新曲『No more cry』
スカイツリー近くの川辺は、ミュージックビデオなどでメンバーが歩く風景として出てきます。

映画PERFECT DAYSも、No more cry MVも、今の東京が舞台で、ドーンと大きく立って光っているスカイツリーが風景として出てくるのはなんだかうれしいです。



映画 PERFECT DAYS
私にとって『そう、それ大切なこと』を表現しているこの映画に、平山さんに今のタイミングで出会うことができてよかった。
平山さんの世界は映画の物語だけど、何かあったときには平山さんを思い出そう、平山さんに立ち帰ろう、また映画を観ようと思っています。

ヴェンダース監督の作品は初見だと思うので、他の作品を観てみたいと思いました。

生きてる限り日々の生活は続き、未来の予想はできないけど、小さな幸せは身近にある。
歩いていて猫さんに会ったり、電車の車窓から海や美しい空が見えたり、小さな花を見つけたり、素敵な本に出会ったり、あたたかい陽の光を感じたり、気づく瞬間からうれしくなります。

「悲しい」はふいにやって来るかもしれない。
自分で大切と思うことを大事にしながら、美しいものを見つけた気づけたその気持ちをヨシ♡と、心の中で微笑んで日々過ごしていけたらと思います。
周りの人や素敵な人たちとの関わりを適度に持ちながら。


この文章を読んでいただき、
ありがとうございました。


二月に観た一回目の感想はこちら
https://note.com/good_alpaca576/n/n4d9ef62ad2d2?sub_rt=share_b


映画PERFECT DAYS
https://www.perfectdays-movie.jp

No more cry ミュージックビデオ

エレファントカシマシ
https://www.elephantkashimashi.com/sp/



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