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エンタと観光再創生のための道行き

観光動機をいかにして増やしていくか。VR技術が進めば行った気になれる今の時代、実際に行ってみたいと思わせるのは容易ではありません。

例えば、次のような企画。

ムー旅メキシコ・ツアー 三上編集長と行く! メキシコの神秘と歴史を体験する5泊8日の旅

メキシコの呪物や魔術文化に触れるソノラ市場、宇宙人の痕跡のような遺物が集まるアリステア博物館も巡り、ミステリースポットのテポストランではUFOコンタクティのロベルトさんによる「召喚」体験もあり。そして魔女マリカルメンとの遭遇もある! 現地ではメキシコ文化に通じた日本人スタッフが通訳と案内をしてくれる

テーマ性を前面に押し出して、コアなファン層だけを狙っていく。このような企画は、クラブツーリズムさんが狙ってきた路線であり、学識者と行く歴史探訪系のツアーでもなかった訳ではありません。意識高い系グリーンツーリズムのような体験観光モノもこの類でしょう。さらに広げれば、買春要素のあるイロモノ企画も昔からありました。座禅や滝行を組み込んだ企画もニッチ市場狙いです。

しかし、老舗のオカルト系ミステリー専門誌「月刊ムー」という有名ブランドを絡めての海外旅行商品、しかも高額設定となると異彩を放ちます。すでに完売だそうで、幅広いファン層を確保していることが分かります。

ムーのブランドを構成する重要部分は、エンターテインメント性でしょう。ミステリーの舞台を訪ねるとかいった企画はありましたが、編集長・三上丈晴氏のような華がありませんでした。月刊ムーは、マーケティング戦略として編集長をキャラクター化して露出させ、広く親近感を抱かせていくようにしいると、三上氏自身が言っておられました。実務上の(真の)編集長は、別に居るのだそうです。

日本旅行には、平田進也氏というブランド力のある企画者がおられます。ビジネス番組でも紹介され、即時完売が続出というユニーク企画をガンガン打ち出してこられた有名な方ですが、この方は添乗員(同行)もやっており、随所にかくし芸まで披露しています。まさに、プロデューサー兼エンターテイナー。

こうした人材が次々と登場されれば、我が国の観光シーンも進化していくのでしょうが、ここまで「情熱」のある方が現れません。かつて、観光カリスマという褒章的な制度を国土交通省がやっていましたが、供給者側(着地側・迎える側)の優秀な人材をカリスマ認定するというもので、平田さんのような仲介的な立場の方に光を当てる発想は、役所の「所管」による事情から出てきません。旅行業者は消費者保護の観点から規制・監督の対象であっても、振興支援の対象には含まれて来ません。結果、公金が流れないので観光コンサルタントの方で、旅行業者のエンターテインメント能力向上を扱う方も見たことがありません。

旅行動機を創造することが、成熟した市場の活性に欠かせませんので、月刊ムーの参入には大いに注目したいと思います。観光旅行のエンターテインメント性は、重すぎず、軽すぎず、硬すぎず、柔らかすぎず、結構知的な挑戦なのです。




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