溺れる者は豆にも縋る
鬼は外
会ったことはないけれど
福は内
見たことはないけれど
信じてなんかいないのに
惰性で今年も豆を握って
口の中で香ばしさを転がして
年の数だけ腹ごしらえ
値の張る巻き寿司を頬張る
柄にもなく恵方なんて探して
食器棚のガラス戸の向こう
間抜け面が私を笑っていた
侮辱だろうか
普段は気にもしてないものに祈るのは
滑稽だろうか
最後には縋ってしまうのは
それでも
それが弱さと分かっていても
雨の夜長に豆をまこう
玄関の戸を開け放って
鬼は外
今年は良いことありますように
福は内
何も失いませんように
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