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【知りたい!】GARNET CROWサウンドのルーツはどこにあるのか?

はじめに

 GARNET CROWは、私が初めてハマった音楽アーティストです。それはもうハマりにハマりました。GARNET CROWしか音楽は聴かない! という時期さえあった。
 その後ロックと出会うことで、様々な音楽を知ることができた今でも、GARNET CROWはフェイバリットの一つであり続けています。何故か帰ってきてしまう確かな魔力があるのです、このグループには。
 しかし、以前からずっと気になっていることがあります。それは、GARNET CROWサウンドのルーツ。
 GARNET CROWのサウンドはルーツがよく分からない。浅学故に、あまり類似した音楽を聴いたことがない。ジャンルとしては、J-POPに括られますが、いかにもJ-POP的かと言われると、素直に頷けない(私がJ-POPの文脈に弱いせいもあるけれど)。少なくとも小室ファミリーから影響を受けたようなサウンドではないでしょう。
 これはちょっと特殊です。例えば、GARNET CROWと同時期にコナン主題歌アーティストとして活躍した倉木麻衣のサウンドが、R&Bをリファレンスしていることは明白(倉木麻衣自身が志向しているかどうかは置いておいて)。大抵のアーティストにはそういう分かりやすさがある。商業的にもパッケージしやすいし。そう考えると、GARNET CROWサウンドの特異性は稀有なのです。

 「GARNET CROWサウンドのルーツはどこにあるのか?」

 私はこの問いに対する答えをぜひとも知りたい。それが、解散から十年近く経ち、悲しくも逆らえないであろうリスナーの減少を前に、一人のファンが取る、GARNET CROWに対する最も真摯な姿勢な一つであると考えるから。ルーツを明らかにし、GARNET CROWサウンドを音楽史の中に位置づけることで、再評価に繋がる可能性だってあるはずです。
 そこで、この記事では、私が確認できた範囲でGARNET CROWのメンバーが影響を語っていたアーティスト、そこから類推される影響元をつらつらと挙げていきます。と言っても、私が彼女たちの音楽にハマったのは2012年、つまりは解散の一年前であり、ファンクラブに入っていたわけでもないので、情報リソースは限りなく少ない。だから、ぜひとも強火のファンの方々の力をお借りしたいのです。コメントなどで情報提供いただければ、都度記事を更新していきます。
 なお、今回はあくまで「サウンド」ルーツですので、AZUKI七による歌詞については問題にしません。
 また、かなり雰囲気重視のふわふわした記事になっていることをご承知いただきたいです。
 それではいってみましょう!

フリッパーズギター

 GARNET CROWのルーツを探る時、まず間違いなく触れられるのは、「ネオアコ」というジャンル。というのも、デビュー当時、彼女たち自身が影響を語っているからです。そのことについては、以下のブログ記事に詳しく書いていただいています。
GARNET CROWとネオアコの微妙な関係 - 長椅子と本棚2 (hatenablog.com)
 私はネオアコに全く詳しくないので、ネオアコ=フリッパーズギターみたいな浅い認識でいます。上に挙げた曲などは大好きで、こちらで幕を開ける2枚目のアルバムは何度も聴きました。その上で、GARNET CROWがフリッパーズギターに近いかと問われればうんとは答えられない。そもそも、上の記事に簡潔にまとめられているように、GARNET CROWがネオアコ色の強いサウンドを持っているかどうかは疑わしいのです。特に2nd以降は雑多な音楽性を披露していくわけですが、例えば、それでも覆い隠せない部分をルーツと呼ぶならば、それがネオアコだとは思えません。

Everything But The Girl

 では日本のネオアコではなく海外なら、ということで、イギリスネオアコ界の代表的デュオ。1stアルバムでジャケットパロディをしているだけあり、こちらはかなり似たサウンド。なんだ、やっぱりネオアコはルーツにあったのか。
 1stの頃のGARNET CROWサウンドの一つは、Everything But The GirlをJ-POP的解釈に落とし込んだものだと言ってもいいのではないでしょうか。
 因みにEverything But The Girl、最近久しぶりに新曲を出しています。

全然ネオアコじゃない!

The Cranberries

 個人的な真打登場。アイルランドのロックバンド・The Cranberries。ボーカル中村由利が1stアルバムをお気に入りに挙げていますが(現在出典であるネットインタビュー記事は読めなくなっている)、影と光のコントラストというか、ダークさとポップさのバランスというか、そういう辺りが似ているように感じるのです。

 ↑この曲の歌の旋律は、かなり「水のない晴れた海へ」に近い。「巡り来る春に」のような雰囲気も感じます。

 ↑こちらも「Cried a Little」のようなダークさ・激しさに溢れています。

 ↑これはもう「Timeless Sleep」↓の元ネタと言っていいのではないでしょうか。

(こっちはそんなにノイジーじゃないけど)
 「Zombie(ゾンビ)」に対するアンサーソングが「Timeless Sleep(永遠の眠り)」だったら非常に面白いと思う。無視されがちですが、GARNET CROWにはそういうことをやるくらいのユーモアがあります。

 The Cranberriesは、普通にロック史を辿っていても辿り着かないバンドですし、インディーロック界隈でも現状取り立てて評価されている気配はありません。アイルランドのバンドとしても、やはりU2には知名度で負けてしまう。(とは言えセールスは世界規模なので凄まじい)
 ですが、ここまで紹介した楽曲のように、The Cramberriesにしかないサウンドが確かにあります。ルーツとしての可能性もあることだし、GARNET CROWファンにぜひ聴いてもらいたいバンドです。
 因みに、The Cranberriesでおそらく一番有名な曲はこれ。

 ウォン・カーウァイの映画『恋する惑星』でフェイ・ウォンがカバーしたことでも有名。ドリームポップみの溢れる幸せな浮遊感に満ちた名曲。最近だとドレスコーズの志磨遼平が、イントロを(おそらく)引用しています。


The Smiths

  The Cranberriesは明らかにThe Smithsの影響を受けているので、GARNET CROWは少なくとも間接的にThe Smithsをルーツにしている(クランベリーズのドロレスとザ・スミスのアンディ・ルークが新バンドを結成 | NME Japan (nme-jp.com))、という非常に雑な類推。それやり始めたら結局The Beatles、更にはChuck Berryに行き着くのではというのはご愛敬。
 AZUKI七がThe CureやJesus Jones、Kula Shakerなどを好んでいるし、他のメンバーも勧められてこういうTHE・インディーロックを聴いていた可能性も?

björk

 中村由利がフェイバリットとして挙げるアーティストの一人(The Cranberries同様出典となるインタビューは読めなくなっている)。とは言っても、サウンド的に似ているかは微妙なところ(そもそもアルバムによって大きくテイストが変わる)。ですが、その一つの作風に留まることのない実験的でオルタナティブな精神は、影響を与えているかもしれない。例えば、「Anywhere」や「この冬の白さに」「海をゆく獅子」に顕著なGARNET CROWサウンドの実験性は、björkのアティチュードに影響を受けた中村が担っていたのかも。

Teenage Fanclub

 言わずと知れたスコットランドのロックバンド。恥ずかしいくらいに真直ぐなギターサウンドが胸をうつ彼らを、GARNET CROWのギタリスト・岡本仁志がフェイバリットに挙げています。「fill away」などで聴けるポップで歪んだギターサウンドは、TFC直系と言っていいでしょう。

おわりに

 かなりふわふわとした記事になってしまいましたが(大体にして影響がどうこうという話は明確なリファレンスでない限りふわふわしてしまう)、これから有識者の方々の情報提供によって充実したものになっていく、はず……。
 例えば、今回全く言及できていませんが、ラテン系の音楽などは、「僕らだけの未来」以降、彼女たちの音楽にとって重要な要素になっているはずです(個人的には好きな路線でないけれど)。この辺りに詳しい方がいたらありがたい。

 しかし、GARNET CROWを聴いていると常々思ってしまうのは、勿体ない、という気持ち。アルバム曲やB面曲を聴けば分かるように、GARNET CROWの音楽性は幅広い。ですが、キャリアを見れば、それが存分に活かされたとは言い難い。おそらくはレーベルの意向によって、J-POPの枠を抜け出すことができなかったのが本当に勿体ない。もっと「His Voyage」や「WEEKEND」のように自由なGARNET CROWを、「短い夏」や「nonsense」のようにユーモア溢れるGARNET CROWを見てみたかったと思ってしまうのです。後は、6分以上の大曲や、2分くらいのクールな曲も聴いてみたかった。
 また、リズムに対する関心が薄かったのも勿体ない。打込みにも当然強みはありますが、楽曲によってはリズム隊を揃えてレコーディングしてもよかったはずです。生の人間でしか出せないグルーヴというのは確かにあるのですから(『LOCKS』や『メモリーズ』の曲の多くは絶対に生楽器の方がいい)。「二人のロケット」と「夕立の庭」はドラムが参加していますが、やはりサウンドが引き締まっている。
 とはいえ、そうした点を差し引いても、GARNET CROWの楽曲は素晴らしい。その魅力を後世に伝えていくためにも、ぜひとも彼女たちのサウンドルーツを探っていこうではありませんか!

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