山本浩二

ひとひらの舞台

山本浩二

ひとひらの舞台

最近の記事

見解の違い

「ありのままの姿を見ろだと、なんのことだ」 「あなたは色メガネで人を見ていると言っているのよ」 「そんな眼鏡かけてるつもりないけどな」 「人は誰でも物心つくころにメガネがついちゃうのよ、そうできているの」 「色眼鏡って何かの例えなんだろうか」 「自分が見たいように見えるというメガネのことよ」 「それを色に例えているのかな」 「実際そう見えているでしょう」 「あいつ赤く髪の毛を染めているぞ」 「いいえあの人の髪は青よ、ほらよく見てごらんなさい」 「ふたりともあいつは緑に染め

    • 精神治療室

      「どうしてここまでほっといたの、変だと思ったことあるわよね」 「個性かなと思っていたので」 「もう薬では治せない、手術しかないけどいいかしら」 「なんとか助けて下さい、生きている宝なのです」 「この心の病はかなり進行している、難しい手術になるわ」 「助かるでしょうかなんとかお願いします」 「できる限り手は尽くしますけどこれまで前例がないのよ」 「助かる可能性があるなら覚悟にいといません」 「大切な人のために協力お願いします」 「手術室に同席してもよろしいのですか」 「情愛

      • むむむ

        「やっと見つけたぞ霧に包まれた森の中にある大きな沼」 「本当にあるのねおとぎ話か昔話に出てくるところ」 「世界は広い知識は少ない知らないことはおびただしいってことだな」 「目の前に現れたこの沼のことだってわからないものね」 「水面がなぜか玉虫のように色が変わっていくぞ」 「なんなのこの沼、異世界への入り口なのかしら」 「なんだか誘われているような気分になってきた」 「好奇心に抗えなくなり沼に引き込まれるのを口を開けて待っているの」 「弱ったなだんだん魅力的になってきた、こ

        • 不安な期待

          「一見とても小さな船に見えますが不思議の世界へお連れします」 「どうせ子供だましで作り物の見世物部屋だろう」 「いってらっしゃい、ぞんぶんにお楽しみくださいませ」 「もう子供がはしゃいでいるぞ」 「高層建築物やこの船が空中に浮いているわ、どうしたのでしょう」 「遊園施設のはずじゃなかったのか、なんか危険な気分になったぞ」 「魔法の国にでも紛れ込んでしまったのかしら」 「どうしてか理由が分からんけど穏やかじゃないな」 「建物が寄ってくるわ、それとも船が近づいているのかしら」

          ヒヨリ様

          「民よ、メガレス様を信じよ」 「なんだべ」 「信仰すれば、そなた達はメガレス様のご加護を受けられるのだ」 「はあっ、おら達はヒヨリ様に愛されているんじゃが」 「そなた達はメガレス様の子なのだよ」 「そうかも知れんけど、ヒヨリ様の子だと思っとる」 「メガレス様はそなた達を導いてくれるのだ」 「救いはいつでも自分自身の内にあるとヒヨリ様の教えだで」 「メガレス様に従えばそなた達の苦難は癒されるのだぞ」 「ご先祖様も救われるのかのう」 「信じる者だけだ、それが宗教というものだ」

          精神領域科学

          「絆力学と縁力学ですって、なにそれ面白そう、集団心理学かな?」 「いや精神領域力学の一部なんだ」 「またまた変なこと考えたのね、超能力のことなのかしら」 「物性力学での絆の引力、縁の重力みたいなものの研究だよ」 「宇宙は物質領域と精神領域の重ね合わせだとのあなたの持論ね」 「そう思えば多くのことが納得できるはずだろう」 「あらゆるものに神様が宿り心がある説明にはなるってかな」 「そう河原の石ころにも、流れている水にも意識があるんだ」 「あなたの言い分だと人工知能にも心があ

          精神領域科学

          寄せては返す

          「膨張する宇宙のように多様化多様性が増殖しているわね」 「生物の種類は増え続け、新たな病気も見つかり続けているな」 「このまま増え続けていくとあるとき破裂して消えてしまうのかしら」 「それこそビッグバンってか」 「平行世界も増え続けているのかしら」 「多種多様化できる余地がある限り増えていくだろうよ」 「広がる余地いっぱいになったら今度はまとまる時期に移るのかな」 「水蒸気が集まって雨となり川となって海になる、そして蒸発の繰り返し」 「世界や宇宙は無と無限の間を波のように

          寄せては返す

          この世は公平

          「生まれ変わってやり直すですって、今度は人間とは限らないわよ」 「じゃあ何になるんだ、もっとまともな人間に成りたいのに」 「あなたの嫌いな生き物はなにかな、もしかしたらそれになるのかも」 「げげえ、これから辛くても修行に励むとするか。うん、そのほうが好い」 「どうして生まれた環境が悪いですって、前世で良い事したのかしら」 「そんなの知らない、覚えているわけがない」 「覚えているかどうかにかかわらず、前世の結果が再試験だわ」 「現世って試験をやり直す場なのか。まずしくても頑張

          この世は公平

          次の選挙

          「今度の選挙ってアンケート調査みたいだわ」 「どこか変わったんか」 「立候補者、政党のほかに支持者なし、支持政党なしを選べるのよ」 「選択肢が増えて投票率が上がるんだろうかな」 「だけど支持しないなんて無効票じゃないの」 「それに中には現状に満足してる奴だっているだろうに」 「満足してる人は棄権すれば良い、どんな結果も甘んじるってことだから」 「じゃあ無効票は不満票なんかな」 「無効票は選挙結果を左右しないけど、重大な民意だわね」 「政治に不満を持っているってか」 「有権

          不安と悔しさ

          「精神領域に異常事態が起こったわ」 「なんだその異常事態って」 「種族をなくさない為の女性体と男性体を引き付ける力が弱まったのよ」 「種族の引継ぎが困難になったってか」 「子供は種族の未来でしょう」 「種族を引き継げるのは確かに子供たちだな」 「その子供はどうして生まれてくるのよ」 「男女が惹かれ合った結果だな。その興味を持てなくなったのか」 「種族保存欲の力が弱まっているの」 「ただ見ているだけしかできないのか」 「今の科学力ではどうにもならないようよ」 「このまま滅び

          不安と悔しさ

          世の調和

          「住みにくい世の中だ、変な規則が多いし不公平だし」 「それはあなたが社会をあまり解ってないからだし楽したい人多いからよ」 「解ってないだって、何年この世界で生きてきたと思ってんだ」 「それじゃあただぼんやりとした生活を重ねてきただけなのね」 「どうしてこんなに変な規則があるんだろう」 「その規則を決めるのは誰だかご存知でしょう」 「選挙で選ばれた政治家先生たちだろう」 「変な規則の数は面倒だと権利を投げ出した人たちの割合でしょう」 「不公平感はどうしてなんだ」 「権利を使

          ゴミ捨て効果

          「おいおいあの星のまわりゴミがたくさん捨てられてるぞ」 「宇宙のオアシスならぬゴミ捨て場ね」 「丁度いい、これで船が身軽になるな」 「軽快に宇宙旅行ができるわ、ラランがラン」 「どうなっているんだ一気にゴミが増えたぞ」 「これじゃあ人工衛星を安心して打ち上げられないわ」 「放射性物質も衛星軌道上にあるようだな」 「そんなのが地上に降ってきたらどうなるの」 「時どき空で閃光が起こっているわね」 「宇宙ゴミ同士がぶつかって爆発してるようだ」 「これでは宇宙研究開発ができないわ

          ゴミ捨て効果

          問われる生き様

          「ふむふむなるほどなあ」 「どうでしょうか天国か極楽へ行けるでしょうか」 「ううむ、九十九年も生きていたのにたいした事してこなかったなあ」 「辛い事や苦しい事が多かったんですけど、良くも悪くもの人生です」 「この成績じゃあなあ、地獄に落とすのは気の毒だな」 「ではでは?」 「かといって天国や極楽へは送れんよ」 「ええっ、じゃあどうなるのですか」 「あんた一人に迷っている時間ないかんな、よし決めた」 「いったいどこになったのですか?」 「再試験つまりやり直しだ、もう一度頑張

          問われる生き様

          ルーク計画

          「星の欠片のような小惑星を帯で巻くように包むんだ」 「その帯が居住区になるのね」 「そして自転させると遠心力で重力ができる」 「宇宙ステーションルークの完成ってことかな」 「居住区外にエンジンを付けてルークは宇宙船にもなったよ」 「地球めざして宇宙旅行の始まりはじまりだわ」 「居住区にあまり人がいないのがちょっと寂しい」 「最初の住人は工事関係者だけだものね」 「優雅に旅を楽しむことはできない」 「星のかけらを加工するのね」 「宇宙船の発着場や実験室を造る仕事があるんだ」

          ルーク計画

          役立つ訓練

          「いよいよ避難訓練ね、今回はどのような障害でしょう」 「毎回突っ込みどころ一杯で楽しみだ、催し物みたいだものな」 「でも油断したら大変よ、被災者になってしまうもの」 「何回避難訓練に参加してると思っているんだ」 「地割れですって」 「地震なんかなかったし、そう書いてある板が置いてあるだけじゃないか」 「何度も避難訓練に参加したはずでしょう、それとも嘘だったのかな」 「言ってみただけじゃないか、楽しみのひとつだよ」 「ようやく避難所だわ、あまり人が集まっていないわね」 「今

          役立つ訓練

          開拓者の壁

          「やっと精神領域を可視化できたわ」 「なんだい白黒の星空みたいな写真だな」 「見えないものを見えるようにしたのよ、もっと敬意を払ってよ」 「確かに画期的だな、おめでとう」 「うーん、うーん」 「なにをそんなにうなっているんだい」 「この画像どうなっているのか分からないのよ」 「精神領域なんだろう、人の気持ちは分からないってことじゃないか」 「可視化できてもねえ、なにを見ているのか分からなくっちゃ」 「落ち込むことないよ、画期的な最初のものは理解しにくいものだ」 「あらこの