見出し画像

妖の唄ー出来損ないの死神に鎮魂歌をー【sanngoさんコラボ】



今、ひとりの心優しい死神が逝った。

偽の宣告書を掴ませられ、残酷に逝った。血にまみれた優しい死神に泣き崩れる美鈴の元に現れる黒いスーツの男。


美鈴は間近に居るその男の気配を目に映るまで気付かなかった。

「だれっ!?」
「麒麟と申します。立派でした。犬という生き物は受けた恩を決して忘れないと言います。転生という鎖に縛られてもなお、貴女を守ろうとした」
泣く美鈴。

麒麟は怒っていた。
かつてないほどに。

「居るな、死風しにかぜ
『やっぱりわかったぁ?』
黒の死装束に身を包んだ身体の大きな死神が嗤う。
「死神として転生した魂を弄ぶなよ」
『ヒト風情がいきがるなよ?麒麟』

美鈴には麒麟が独り言を言っているようにしか見えない。

麒麟から突風が放たれる。
『やる気かぁ?麒麟』
麒麟は懐より呪符を取り出しボソボソと呟き始める。
「幾多遍く異形、此を持ちて忌むべしーー」
『効かねぇよ』
壱焔ひとほむら
死風へ向かって投げられる呪符から蒼白い焔。
符を弾き飛ばす死風!
死風の四方周囲に散った符から、死風を囲み込むように舞い上がる蒼白い焔!
「弐式、残焔ざんえん
業火に包まれる死風。
『ん??あぢっ!あぢい!!』
強引に焔の中から飛び出した死風。
『あぢいな、この野郎!お前に宣告書出たら絶対にオレが担当してやるからな』
捨て台詞を残して消える。
「残念、わたしはこころちゃん以外に担当してもらうつもりはないんでね」


まったくわからないやり取りを見て呆然とする美鈴。
「これはこれは失礼、お嬢さん。優しい彼はーーイマイチよろしくない死神に弄ばれてしまったようでね」
「え……?」
「あ、いやいや……。さぁ、彼を弔ってあげましょう」

麒麟はレオを抱きあげ、美鈴とその場を後にした。


小高い丘の上。
美鈴の家の庭に転生の因果をも断ち切った優しい死神が眠っている。


[完]


サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。