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お坊ちゃま探偵誕生 花房あきら君

   はじめに

 子供の頃から、少年探偵団や怪盗ルパンなどが好きでしたので、最初は児童文学のつもりで書き始めたのですが、やはり少しは性の事にも触れた方が自然ではないかとの思いで執筆をつづけました。
児童ポルノ禁止法なるものがあるそうなので、どこまで許されるのか分からないのですが、お楽しみいただければ幸いです。

  お坊ちゃま探偵誕生 花房あきら君
             大空まえる

   淡い想い出

 あきら君は小学六年生に進むところです。
近所の友だちは、同級生の、のぼる君。
一つ下の、さとし君。二つ下の佳代ちゃん。
みんな仲良しです。
山の麓に、あきら君たちの家はあります。
学校までは歩いて三十分ぐらいでしょうか。
古い木造の校舎は落ち着いていて、趣のあるたたずまいです。
あきら君たちのクラスには、可愛い女の子が転校してきました。
おさげにしています。
彼女は、たちまちクラスの人気者になりました。クラスが明るくなったようです。
あきら君は学校を案内してあげました。
「おトイレは、あそこ。
ここが図書室だよ。」
「ありがとう。
私、本を見ていくわ。」
「そう。
じゃあ、また後でね。」
本は一人で見た方が落ち着くと思ったので、先に教室へ帰りました。
彼女は勉強も、なかなか出来るのです。
休み時間には、鬼ごっこや隠れん坊、それに、石蹴りなどをして、あきら君も一緒に遊びました。
ところが、ご家庭の事情だったのでしょうか、また、すぐに転校していってしまったのです。
ほんの僅かな、ほんの僅かな思い出だけを残して・・・・・。
あきら君は、今でも時々、彼女の住んでいた家の前を通ってみるのです。
ただそれだけの事なのですが・・・・・。
新緑の眩しい頃でした。
 つゆの長雨が続いています。
そんな、ある日の事です。
「あきら、ヒヨコを買ってあげようか、どうする・・・・・。」
夏ちゃんが言いました。
「いいよ。
いらない。
もう、買わなくていいよ。」
あきら君は応えます。
苦い思い出があるのです。
じつは、以前にもヒヨコを買ってもらったことがあったのですが、良く世話ができなくて、かわいそうなことをしてしまいました。
それだから、もうヒヨコは飼うまいと心に誓ったのです。
そう、あれは悲しいことでした。
ヒヨコは可愛すぎます。
小さくて、毛がふさふさしていて、愛らしい目、ちっちゃな嘴、ちっちゃな足なのです。
畳をトントントンと叩けば駆け寄ってきます。
何度やっても飽きません。
何度でも繰り返します。
「ピー子!ピー子!トントントントン!」です。
タッタッタッタッ!と駆け寄ってくるのです。
そして、「ピーヨ!ピーヨ!」と鳴きます。
歩けばチョコチョコちょこちょこと付いてきて足に纏わりついてくるので危ないのです。
ペットというか、友達というのか、楽しい遊び相手ができました。
それなのに、急に元気がなくなったのです。
(おーい!元気を出してくれよ!いつものように遊ぼうよ!)
心で叫んでも届きません。
せっかく、いい遊び相手ができたのに。
(僕を一人にしないでおくれ!)
その願いもむなしく、二~三日後には亡くなってしまったのです。
(あーっ!僕のピー子がいなくなってしまった・・・・・。
あんなに楽しかったのに・・・・・。)
悲しくて堪えられませんでした。
(もう、あんな思いはしたくない。)
今でも、その思いは変わらないのでした。

   伯母の家

 北鎌倉は春です。
岡山生まれ、岡山育ちの花房あきら君は伯母の家へ遊びに来ているのです。
小学六年生を迎える春休みのことでした。
湘南の風は、爽やかです。
今日は江ノ島で子供探偵大会があるので伯母と一緒に行ってみる予定になっていました。
あきら君は起きると直ぐに雨戸を開けます。
気持ち良い朝です。
庭の芝生が清々しく、小鳥の鳴き声が心地よく聞こえています。
伯母は一人暮らしなので朝食は伯母が作ってくれるのです。
おいしい味噌汁でした。
地元のテレビ放送で今日の子供探偵大会のことが報じられています。
毎年行われている恒例のイベントなのです。
伯母はお洒落をしていました。
あきら君も準備OK。
さあ、出発です!
伯母の車は白のスポーツタイプで、その運転は華麗でした。
海岸沿いの道を風に吹かれながら進んでゆくと、やがて江ノ島です。
そして橋を渡ります。
広場が会場になっていました。
朝から大勢の親子連れで賑わっています。
あきら君たちも、それに加わりました。
子供だけでは危ないので保護者同伴が原則なのです。
ヨットハーバーには沢山のヨットが並んでいます。
岩場の方では釣りをしている人も多いのです。
江ノ島神社の参道も賑わっていて、土産物屋が活気づいています。
饅頭の蒸籠が湯気を吹いていました。
「お集りの皆さーん!
朝早くからご苦労様です。
おかげさまで子供探偵大会も今年で50回目を迎えることができました。
これも偏に皆様方の謎解きに対する情熱の賜物です。
今後ともよろしくお願いいたします。
さて、今年の暗号は皆様のお手元に前もってお届けしたものでございます。
この三日間で謎は解けましたでしょうか。
どうぞ宝の鍵を見つけてください。
もちろん、それは、この江ノ島のどこかにあるのです。
ご検討をお祈りいたします。」
また、これを読んでいる皆さんも先へ読み進める前に、ぜひ、今から三日間のうちに暗号を解いてみてください。
難しいと思いますので、大人の人に相談しながらがいいでしょう。
 これが暗号です。

 10000=036

2776 94135 24164

以上です。  

   謎を解く

 さて、読者の皆様。
暗号は解けましたでしょうか。
そうとう難しい暗号だと思います。
結局、この暗号を解いた人はいなかったのです。ただ一人、花房あきら君を除いては。

 「ご来場の皆様。
この暗号を解いた方が、お一人だけ、おられました。花房あきら君です。
あたたかい拍手をお願いします。
それでは、この謎を解いた道筋を説明していただきましょう。どうぞ・・・・・。」
そこで、あきら君は語り始めました。
 「この謎を解く鍵は、最初の数列にありました。10000=036です。
一万=036ですが、これを、どう解いたらいいのか・・・。036はオサムと読めるではありませんか。一万=おさむ、です。
マンは、おさむ、です。
マンはオサム。あるいは、まんがおさむ。
そうなのです。漫画おさむ、と読めるではありませんか。漫画おさむ、と言えば、文字通り漫画の神様とまで言われている手塚治虫先生のことに違いないのです。手塚治虫先生と言えば、その代表作は、もちろん鉄腕アトムでしょう。そして、鉄腕アトムというのは何を意味しているのでしょうか・・・・・。アトムといえば原子。そこで、暗号の数列を解く鍵となる物は何か、と思ったときに思い浮かぶのは、元素の周期表だったのです。
やってみましょう・・・・・。
2と7の交わったところはRa。7と6でRe。つぎの数列は、9と4でCo。1でh。3と5でy。そして次の数列は、2と4でCa。1でh。6と4でCr。
RaRe。 CoHY。 CaHCr。 
これでは何のことか、さっぱり分かりません。
ただ、RaReはレアと読めます。
そうなのです。二番目と三番目の数列は解き方が間違っていたのです。
9と4でCo。次が1ではなくて、13と5なのです。すると、In。
三番目は、2と4でCa。16と4でSe。
これなら意味が通じます。
Coinでコインです。Caseでケース、箱です。
レアなコインケース。珍しいコインケースです。江ノ島でコインケースと言えば、江ノ島神社のお賽銭箱でしょう。しかも、珍しいものとなれば、巾着の形をしたお賽銭箱があるではありませんか。そうして、無事に宝の鍵を見つけることができました。以上です。」
広場へ集まっている人たちは、ただただ感心するばかりでした。

   ご褒美

 お昼は伯母と共にしらす丼を食べたのでした。
江ノ島では釣りを楽しむこともあります。
どういう訳か、橋のたもとでは黒鯛の子供が群れていて、それを、チンチンと呼ぶのだそうですが、けっこう楽しめるものです。
夕食には、畳いわしが出ましたので、それを細かくほぐして、ご飯の上へまぶし、お湯をかけていただきました。

   学校生活

 それから月日は流れ、あきら君は田舎での暮らしを楽しんでいました。
 学校の講堂は木造の重厚な造りで、学芸会の時や映画や人形劇の鑑賞などの時に使われていました。
人形劇のお手伝いをすることもあるのです。
道具の搬入搬出などで、時には劇そのもののお手伝いもします。
 今日の演目は、オズの魔法使いで、あきら君が裏方のお手伝いをしていると、ふいに、人形を扱うように言われました。
劇は、丁度ドロシーたち一行がエメラルドの都を目指して森の中へ差し掛かったところで、怪獣に追われて丸木橋を渡るところだったのです。
みんな渡り終わって、一番後から遅れて逃げていた案山子が、いま渡ろうとしているところで、それを、あきら君が演じていました。
ご注意が出ているのです。
「まだまだ、まだまだ!」
そうなのです。
怪獣を引き付けるだけ引き付けてから丸木橋を渡るというシーンです。
「渡って!」という合図とともに、一気に丸木橋を渡ります。
そして、みんなで「よいしょ、よいしょ!」と、掛け声をかけながら、丸木橋を谷底へ落とすのです。もう怪獣は追ってこられません。
みんなで「わーい、わーい!」と、万歳をするのでした。
ほんの僅かなお手伝いでしたが、あきら君にとっては又とない、貴重な体験となりました。
そうかと思えば、市民会館で行われる演劇を見に、下級生たちを引率するお手伝いもあるのです。道々、事故の無いように注意をします。
それと同じ様に、下級生たちとさせて頂く街頭募金のお手伝いをすることもありました。
少しでも先生方のお手伝いになれば良かったのです。
 入道雲がムクムクと湧き上がっています。
蝉の声が頭の中まで染み透るようで、今は夏だぞと言わんばかりです。
こういう時は、氷水の宇治ミルク金時が思い出されます。
あきら君は、いつの間にか中学一年生になっていました。
学校は小中高一貫校で育成部があり、あきら君は育成部長なのでした。
 学校の傍の山は城山と呼ばれていて、何度も授業で調査に訪れていました。
古代の山城の土塁や石積みが残されているのです。
もう崩れかけていますが、今でも、その痕跡が分かります。
あきら君は、一人で来ることもあるのです。
とても興味を惹かれるからでした。
総社にある鬼ノ城と同じく、発掘調査によれば、七世紀後半に築かれたもののようです。
白村江の戦いで、唐・新羅連合軍に大敗した後、大和朝廷は倭の防衛のために、対馬~畿内にいたる要衝に様々な防御施設を築いています。
鬼ノ城は史書に記載がなく、築城年は不明ですが、発掘調査では七世紀後半に築かれたものとされているのです。
古代吉備の国の栄えた証しでしょう。
 あきら君は、国語の勉強では短歌が好きでした。
じつは、あきら君は信仰者なのですが、大切な信仰として短歌を教えていただいているのです。
感動に丁度の程良い表現、過不足のない真実表現をさせて頂けるように歌を詠み、推敲することが大切なのだそうです。
それを教祖に、溝尻先生に、磯和先生に、水谷先生方に教えていただいています。
 ある日の吟行会で、良寛さんゆかりの、玉島の円通寺へ行った時の歌です。

良寛さんさくらんぼうがうれましたと
  岩に彫られし一句ありけり

この、あきら君の歌を磯和先生が添削してくださいました。
それが、次の歌です。

 良寛さんさくらんぼうがうれましたと
  岩にほのぼの彫られし一句

いかがでしょうか。
(僕が詠んだ歌よりも、添削して頂いた歌の方が、僕の感動が良く表現されている。)と、あきら君は感心頻りでした。
(本人よりも、その人の気持ちを分かってあげられているんだなあ。)と、感心しないではいられないのです。
 そんなことで、あきら君は国語が好きになり、文学に目覚めたのでした。
数学は、特に好きではなくっても分かることは分かるので自分流で解いていたのですが、解き方があるんだなと気づいてからは好きになりました。
理科は生まれつき好きでした。
一番好きなのです。
特に物理に興味があります。
力と運動。
作用と反作用。
光の屈折。
電流と電圧と磁場などなど。
 社会は常識だと思って、少々馬鹿にしていたのですが、昔からの人の暮らしに違いはあるようでも、衣食住など本質的には、さほど違いはないようで、今に生かしてゆかねばならないと思っているようです。
体育は、標準的な運動神経はあるのではないでしょうか。
逆上がりもできますし。
でも、スポーツマンではないと思っているのでした。
音楽も好きなのです。
ジャンルを問わず、一応何でも大丈夫のようですが、でも、楽譜を読むところまでは難しいのです。
 技術と家庭科も日曜大工などは好きで、一般的なことは出来ると思っています。
美術も好きなのです。
しかし、絵を描くのは下手なので、上手に描きたくて苦しんでいます。
生まれつき上手な人もいるようで、羨ましいのです。
まあ、人には向き不向きもありますから、仕方がないのでしょう。
 今では懐かしい小学校ですが、その校舎の前の運動場の、その前に正門があり、その向かいに幼稚園の正門があります。
あきら君は卒園式の時に健康優良児で表彰されました。
 事前に練習をして臨んだのです。
前に出てから、まず右へお辞儀をして、それから左、そして正面に一礼をして感謝の言葉を述べ、表彰状をいただいたのでした。
懐かしく思い出されます。
幼稚園には、檻の中にウサギが飼育されていました。
砂場の中央には藤の木が植えられていて、細い幹が、まるでロープでもあるかのように絡まって太く聳え、屋根の如くに広がって葉を茂らせているのです。
小さな庭が大きく感じられていました。
それに比べると、小学校の校庭は相当大きくて、サッカーなどもしました。
給食棟の横のブランコも大きく漕ぎます。
鉄棒も小さいものから大きいものまで揃っているのです。
ジャングルジムも良く登りました。
二宮尊徳の石像もあるのです。
 下校時間の頃に雨が降ってきた時には、夏ちゃんが傘を持って迎えに来てくれていました。
やはり親ですね。
ありがたいです。
 学校の裏手の山に生っている柿を取って食べたりもします。
なかなか旨いのです。
 あきら君はサッカーのことは良く知らないので、ドリブルなどはできません。
ただ、ボールが来れば蹴るだけです。
相手のゴールを目指して、遠くへ蹴ればいいのだとばかり思っていました。
 中学生になってからは、海戦ゲームも良くします。
正方形に、縦横二十個ぐらいの升目を書いた紙を用意して、二人でやるのですが、縦は一、二、三と数字にしたら、横はA、B,Cとアルファベットを割り振っておくのです。
お互いに戦艦A、駆逐艦Aなどを升目の中に配置して、戦艦は三発、駆逐艦は二発、潜水艦は一発、発射でき、また、戦艦は三発で撃沈でき、駆逐艦は二発で撃沈でき、潜水艦は一発で撃沈できるのです。
そして、それぞれの艦は、その置かれた升目に接している周りにだけ砲弾を発射できます。
ですから、「Cの三に戦艦A三発!」と言えば、その周りの何れかに相手の戦艦が居ることが分かるのです。
また、その着弾が自分の艦に異常がなければ、「異常なし!」と告げます。
もし、隣の升に着弾した場合は、「戦艦A波しぶき!」と告げるのです。
的中すれば、「戦艦A撃沈!」と、相手に告げます。
駆逐艦二発で戦艦に当たった場合は「戦艦大破!」と告げて、合わせて三発以上になるまでは生き延びられるのです。
じゃんけんで後先を決め、交互に砲弾を発射し合っていきます。
艦は、それぞれに戦艦A,戦艦B、戦艦Cなどと、お互い同じに増やして始めることもできるのです。
また、ひと升づつ移動できますので、その時は「戦艦A、右上へ移動!」と告げます。
そうして、いずれが早く撃沈し尽くせるかを競うのです。
授業の合間の休み時間に楽しむには、ちょうど良いゲームだと思いますので、良くやっています。
 そろそろ秋の訪れが感じられる頃です。
青空に薄絹を流したような雲が見えます。
暑さも大分収まってきているのです。
朝晩は、すっかり涼しくなってきました。
もうじき秋祭りです。
遊歩道に立てられた幟旗が、吹き続く風に、はためいています。
そこを横切ってゆくのは、赤とんぼです。
空気は、どこまでも、澄んでいました。

   心のかげり

 お母さんと一緒に映画館に行っていた時のこと。
「あきら、向こうを向いていなさい!」
お母さんに言われて後ろを向くあきら君。
ちょうど男と女の色っぽい場面でした。
(ああ、こういう時には見てちゃあいけないんだなあ・・・・・。)
そう思ったあきら君。
その日以来あきら君は、こういった場面では、いつも向こうを向いているようにしていました。
男と女が色っぽいことをするのは、いけない事なんだなあと思ったのです。
子供心にも強く印象付けられました。
女の子と仲良くしたかったのですが、振られるのが怖くて、できないのです。
その上、女の子と仲良くしているところを人に見られて、焼きもちを焼かれたり、仲間外れにされたりするのも怖かったのです。
ですから小学校の校庭で、久しぶりに会った親戚の女の子に「こんにちは!」と声を掛けられた時にも、何のわだかまりもなく一緒に仲良く遊んでいた小さい時の様には振る舞えませんでした。
人目が気になるのです。
まるで古くからの因習で、掟に背いたものは村八分にされるかのように・・・・・。
そういった心の屈折が、後にあきら君が女性の恥ずかしがっている姿を見るのが好きになった原因かもしれないのです。
学校でも、さも女の子には興味がありませんとばかりに見栄を張っていました。
そんなわけはないのに・・・・・。
性のことは、ひた隠しに隠しているのです。
まるで悪いことでもあるかのように・・・。
それがあきら君に暗い影を落としていました。
 ところが中学一年生になってからのことですが、或る日、可愛い女友だちができました。
中学三年の先輩で、育成部活動で知り合ったのです。
学校のそばの市民会館で上映されていた映画を見に小学生たちを引率していた時の事。
列から離れてしまった子を列に戻そうとしていたところ、走ってきた車を彼女が止めてくれたのです。
「ありがとう。」
「気を付けてね!」
それだけだったのですが、彼女のことが好きになってしまいました。
放課後、学校に残って一緒に勉強をしたり、趣味について話し合ったり、一緒に下校したりしているのです。
歴史の年表について、アドバイスをしてくれたりもします。
数学、国語、理科などなど、何かと勉強を教えてもらったりしているのです。
 あれは、校庭で野球をしていた時の事でした。
飛んでいったボールを探しにおトイレの後ろに回り込み、ボールを拾おうとしました。「「キャーッ!」
女の子が騒ぎます。
「誰か覗いているわよ!」
「違うよ!ボールを探しているだけだよ!」
あきら君は弁解をしますが、聞き入れてもらえません。
とうとう痴漢扱いです。
女の子たちは許してくれません。
そこへ彼女が通りかかったのです。
「許してあげなさいよ。
そんな人じゃあないわよ。
私のお友達なの。
許してあげて!」
彼女のとりなしで、やっと許してもらえたようなことだった。
「ありがとう、助かったよ。」
「今日の放課後、一緒に勉強しようか。」
「うん、いいね。」
「私んちへ来る!」
「いいね!
ぜひ、お邪魔するよ!」
二人は手をつないで下校します。
彼女んちは学校から近いのです。
「お邪魔しまーす!」
おばさんにも挨拶をしながら彼女の部屋へ。
そこは女性らしい部屋だった。
ピンクで統一されている。
何となくいい香りさえする。
勉強はさておいて、彼女の部屋を味わう。
ベッドは女性らしく整っている。
ドレッサーもある。やはり女性だ。
窓のレースのカーテンを揺らしながら、爽やかな風が入ってくる。
もう勉強は、どうでもよかった。
机に向かっている彼女の肩に、そっと手を置いてみる。
そこへ彼女のお母さんが紅茶とケーキを運んでくれた。
「どうぞ召し上がって。
ごゆっくりなさってね。」
「ありがとうございます。
いただきます。」
食べ終わると鞄を開き、教科書を出して勉強のまねごとをする。
「この机、使ってね。
私、ドレッサーを使うから。」
「そう、悪いね。」
ひとまず勉強することにした。
それから三十分もたったろうか、彼女がのぞきに来た。
「どう、頑張ってる?」
そう言いながら、胸を僕の背中へ押し当ててくる。
柔らかな胸の感触が心地いい。
「ちょっと一休みしようかな・・・・・。」
そう言って、彼女の胸を触らせてもらう。
「だめよ!
まだ早いでしょ!」
そう言いながら、彼女は離れてゆく。
「幾つになったら触らせてくれるの?」
「そうね、高校生になってからかしら?」
「まだまだだね。
残念だなあ!」
「少し見るだけ、見せてあげるね。」
そう言って、彼女は胸のボタンを外してゆく。
なんと美しいものか。
白い乳房がのぞいている。
はっと息をのむほど美しかった。
「さあ、勉強の続きをしましょ!」
そうして、また勉強の続きをするのだった。
窓のカーテンを揺らしながら入ってくる風が、頭を冷やしてくれる。
でもやはり、もう勉強が手につかなかった。

   おわりに

 性は大切だから、大事に扱いたいですね。
間違いのないよう気を付けなければなりませんが、けっして悪いものではないですよね。
子供の頃から培ってしかるべきものでしょうね。

          著者 大空まえる
        えいめいワールド出版

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