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レイコの自分⇔自分 お悩み相談室   1981年17歳「物理化学が全然わからない」

中学生の頃は、不得意な科目がありませんでした。少しやればわかることが多かったので、勉強も何の苦もなくやっていました。
けれども、高校生になったら、いきなり理解できない科目ばかりになりました。中学生の頃のような勉強のやり方が通用しなくなり、特に理数系はいつの間にか授業についていけなくなっていました。

 
今のレイコ(以降「レ」):授業、わからないよね。
17歳のレイコ(以降「17」):何をやってるのか、全然。物理なんて、高校に入学した最初のテストで、中学の時には見たことない点数取っちゃって。なんか、ショックでもう、心が折れちゃった。
:高校生になったら、急に勉強が難しくなった感じだよね。
17:うん。中学の時は少しやればわかったんだ。国語は得意だったし、英 語もできた。数学や理科も面白かったよ。でも、高校に入ったら、教科書読んでもわからないことばっかで。勉強が面白いって思えなくなっちゃったんだ。
:化学の夏休みの宿題も、全然解けなくて、電話で友達に答えを聞いたりしたよね。
17:そう。でも、答え聞いても、写すだけで全然わかってないから。
:なんでその答えになるのか勉強し直すとかもしなかったね。
17:だって、物理も化学も将来何の役に立つの?molとか、ナントカの定理とか、普段使わないし、これからも使う気しないし。
:あれ、逆切れ?
17:大人になって何になるとかもわかんないのに。何のためにこんなわかんないこと、勉強しなきゃいけないのかがわかんないよ。
:は? わかんない、わかんないって、ずいぶん威張ってるねぇ。わからないことをわからないままにしておくのは、偉くもなんともないよ?
17:そんな、威張ってるだなんて…。ほんとに、どうしたらいいのか、わかんないんだよ。

勉強できない自分を認めたくないし、将来の目的も目標もないもんね。
17:何になりたいとか、ないし。なんでみんな先のこと、考えられるんだろ。大学受験もいやだ。点数取れる気しないし、きっと落ちる。これ以上難しいことしたくない。
:簡単にできることが好きだよね。高校も、もっとラクに入れるところにしようとして、お父さんに「自分が目指せる上限を見ろ」って言われたし。
17:そうだよ。だから、言われた通りにしたら、周りはみんな当たり前みたいに勉強ができる人ばっかりで。
:でもさ、それでもうらやましいとか、悔しいとかはなかったよね。自分ももっとがんばろう、とかも。
17:そういう、なんとかしようって気持ちは全然ないよ。ただ、わかんないや、って感じで。

:何かをやろう、っていう原動力、動機がなかったよね。なぜ勉強をする
のか、っていうこともちゃんとは考えてなかった。具体的に将来どんな仕事をしたいとも、どんなふうに生きたいとも、ね。今、同級生のみんなに高校時代の話を聞くと、やっぱり自分の進む道をきちんと考えて、どの大学に行くとか決めてた人が多いよ。
17:もう、勉強はいらない。ラクにできることだけしたいよ。できないことはやりたくない。毎日好きなマンガや本を読んでいられたら、それだけでいいのに。
:その気持ちはわからなくもないけどね。それはそれで楽しいだろうけど、そのうち飽きるよ。たぶんね。
17:そうかなあ。
:本当にそういう暮らしがしたいのなら、そうなるように自分を持っていくしかないね。
17:どうやって?
:めちゃくちゃ勉強して、高い給料をもらえる仕事をして、めちゃくちゃお金を貯めて、若いうちに引退するとか、お金持ちの男をつかまえて結婚するとか。あとは、宝くじ?
17:そんなの、全部無理だよ。
:そうだねー。宝くじはまず期待できないし。早く引退できても、お金の運用なんかを考えなきゃいけないし、お金持ちの家に入っても、いろいろなお付き合いとかがあって、ぼーっとしていられないことが多いよ、きっと。
17:そしたら、全然ラクじゃないじゃん。
ラクに生きるなんてないよ。
17:えー?

:そういえばさ、理数系だけじゃなくて、国語や英語、文系の教科もできなくなってるよね。
17:だって、古文も漢文も今の言葉じゃないから、よくわかんないし。世界史も日本史も倫理も覚えられないことばっかだし。英語のリーダーもグラマーも、わかることの方が少ないよ。英検も絶対受かろうとか思ってなかったから、真剣に勉強もしなかった。
:2級、もちろん落ちたし、英語、今も全然しゃべれないもんね。なんで勉強しないの?
17:だって、興味ないから。
:そうだ、興味がなかったんだ。だいたい、勉強だけじゃなくて、人にも興味がなかったよね。誰がどんな道に進もうとしてるのかとか、何を勉強したくてどんな大学に行くのか、とか。
17:やろうって思えないことはめんどくさいだけだもん。大学も行こうと思ってないから、誰がどこの大学に行くかなんて、関係ないし。
:絵を描いたり、文章を書いたりするのは好きでしょ。イラストレーターとか、小説家になりたいと思ったりしてたはずじゃ?
17:そんなの、趣味だよ。仕事にはできないよ。特別な才能を持ってる人だけがなれるんだよ。
:確かにね。そうなんだけどね。なんとかしよう、って気持ちもないんだよね。親が作った家に住んで、食べるのも何も困ってないから、それ以上のことをする気は起きないんだ。
17:でも、お小遣いは足りないよ。
:だったら、バイトすればいいのに。
17:だって、アルバイトはしちゃダメって言われてるし。
:あー、そういうとこは大人の言う通りにしちゃうんだ。自分がどうしたいかなんて考えないんだよね。あ、違うな。そもそもアルバイトをする気はないんだ。それを周りのせいにしてるだけだね。


【ある意味、自分の欲求に忠実ですが】


遠い未来のことはなかなか考えられません。10代の時に、30代、40代の自分のイメージを持つことは、できませんでした。それどころか、目の前に迫る20代の自分のイメージさえも考えられませんでした。当時、頭にあったのは、その場限りのこと。
難しいことはやりたくない。大学へ行く意味もわからない。自分はどんな道に進みたいのか、自分に何ができるのか、真剣に考えたこともない。ラクにできることしかしたくない。
ずっと、好きなマンガや本を読んで過ごしたい。

そういう欲求を持つこと自体は悪くはないのでしょうが、その願いを叶えるには、そうするための知恵や経済力が必要で、そうするにはやはり勉強をすることが最も確実で近道であるはずです。けれど、17歳のわたしは、自分の未来に対する意識があまりにも薄く、10代後半にしては、小学生並みの幼さでした。本当の小学生でも、もっとしっかり将来を考えている人がいるのに、です。

しかも、自分の気力のなさにも無自覚で。自分自身に興味のない人間が、周りの人に興味を持つわけもなく。
物理的な視力は今よりもずっとマシだったはずですが、何も見えてなかったですね。当時の同級生は、よくこんなわたしに付き合ってくれていたな、と思います。


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