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オトジェニック・高橋幸宏「エイプリル・フール」(ソロアルバム『薔薇色の明日』1983年)

この記事を公開するのは、2024年4月1日である。

アメリカのポピュラー音楽の偉大な作曲家に、バート・バカラックという人がいる。映画「明日に向かって撃て」(1969年公開)の挿入歌に「雨に濡れても」という名曲があるけれど、この曲を作曲したのがバート・バカラックである。これは誰でも知ってる曲だよね。おっと、1969年といえば、私が生まれた年。私より上の世代の人だったら、たぶん誰でも知っているくらい、有名な作曲家だと思う。
そのバート・バカラックが、やはり1969年に作曲した「エイプリル・フール(The April Fools)」という曲があって、これがたいへん名曲なのである。
実を言えば、私がこの曲を知ったのは、YMOのメンバーだった高橋幸宏さんが、自身のソロアルバム『薔薇色の明日』(1983年発表)で、この曲をカバーして歌っているのを聴いてからである。
ユキヒロさんの歌う「The April Fools」が、じつに素晴らしいのだ!近藤達郎さんのひくピアノ伴奏の美しさ、ユキヒロさんの丁寧で誠実な歌い方、どれひとつとっても素晴らしい。
そしてなにより、メロディーが美しい。この曲を聴くたびに涙が溢れる。
私はユキヒロさんの歌う「The April Fools」を聴いて、バート・バカラックってすげえ、と思うようになった。同じYMOのメンバーだった坂本龍一さん(教授)も、実はバート・バカラックにあこがれていたことを、当時聴いていたFMラジオで言っていた。彼が編曲を手がけた大貫妙子さんの「夏に恋する女たち」は、ぜったいにバート・バカラックを意識していると思う。
それはともかく。

そのバート・バカラックが昨年(2023年)2月になくなったことを知ったのは、Interfmの「Barakan Beat」(毎週日曜日18:00~20:00)だった。ピーター・バラカンさんが、リスナーからのリクエストに応え(あるいは応えるふりをして)、ひたすら好きな曲をかけるという2時間番組である。ふとしたことをきっかけに毎週必ず聴くようになった。正確に言えば、週明け最初の通勤時間にradikoのタイムフリーで聴くという習慣がすっかり根づいてしまった。
音楽に疎い私は、バラカンさんの博識と選曲のセンスにすっかり圧倒されつつ、その音楽がどれもいいからずーっと聴けてしまう。知らない曲ばかりだし、バラカンさんの語る知識にもまったくついていけてないのだが、そんなことは関係ないのだ。
バート・バカラックの訃報が世界を駆け巡ったすぐあとに、番組ではバート・バカラックの曲が少し特集されていた。ビートルズの「Baby It's You」って、バカラックの曲だったんだね。
あるリスナーからのメールでは、自分が幼い頃に「雨の日の曲」としてずっと印象に残っていた曲があった。その後10代になって、その曲名をを知りたいと「雨」をキーワードにFM番組をエアチェック(死語)しまくって、ようやく自分が幼少のときに出会った曲が「雨に濡れても」という曲名で、その作曲がバート・バカラックであることを知った、という思い出を書いていた。
そしてそのメールの中で、坂本龍一さん(教授)がバカラックについて語った、
「荒れた世界の片隅にあった狂おしいまでのロマンティシズム」
という言葉と、矢野顕子さんがバカラックについて語った
「バカラックの曲を聴いたせいで、自分の作る曲がこんなふうになってしまったという人が地上に100万人はいる」
という言葉が紹介されていた。
先述の通り、教授はバート・バカラックに憧れていることをラジオで語っていたし、ユキヒロさんはバート・バカラックの「エイプリル・フール」をカバーしている。私もYMOを通じて、バカラックを知ったクチである。
実際、この番組の中でも、坂本龍一さんのラジオでバカラックの名前を知り、ユキヒロさんの「エイプリル・フール」でバカラックファンとなることが決定づけられた人のメールが紹介されていて、僕と同じ体験をしている人が多かったんだなと、感慨深かった。もちろん、番組では、ユキヒロさんの「エイプリル・フール」をかけていた。そらぁかけるさ。バラカンさんだもの。

4月1日には必ずユキヒロさんの「エイプリル・フール」を聴く。もちろんそれ以外の日にも聴いている。

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