見出し画像

玉子のゆくえ

卵難民である。
料理が得意ではなく自炊もほどほどにしかしないが、さすがにたまには食べたくなる、たまご。
狙い目は開店だ。化粧もほどほどに家を出る。早起きのおじいさんも皆向かう方向は同じ、7時開店のミニスーパーだ。
店の奥に並ぶたまごを無事購入、おじさんも、おじいさんも、8歳くらいのお使いの男の子もたまごを買っている。会計を済ませて店を出ると、さきほどの男の子が信号待ち中に1円玉を落とした。マイバックはなく、小さな手にたまごを抱えている。1円玉を拾うとたまごパックを落としてしまう、、、のでとっさに大丈夫よと拾って渡す。

昔、姉と、父とたまごパック買いに行ったな。お会計して袋詰めしようとしたら姉が落として。静まる店内。祖母に頼まれていたお使いだった。
呆然とする姉。何も言えない私。とっさに父は自分のお小遣いから玉子を買ってきて。パックの中でぐちゃぐちゃになった玉子を抱えて自宅にもどる。家までの時間がとてつもなく長くて長くて。

父はキッチンに直行し何も言わずにぐちゃぐちゃになった10個の玉子をスクランブルエッグにして、たまご美味しいねえ、スクランブルエッグ食べたかったんだよね!ってバクバク食べた。私も食べた。姉もニコニコして食べた。あ、このこと、私きっと忘れないって二年生くらいの私は思ってた。でも忘れてた。あの男の子が1円玉落とさなかったら、こんな大切なこと、忘れてるままだった。
男の子、ありがとう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?