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Goodpatchが世界の行政デジタル化について調査し、発信していきます!

はじめまして。この度、株式会社グッドパッチは公式noteを立ち上げました。

これから、社内の行政デジタル化リサーチチームが、様々な国の行政サービスのデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の事例をはじめ、総合的な知見をシェアしていきます。

本記事ではまず、日本行政のDXのこれまでと、私たちが行ってきたリサーチ内容についてご紹介します。

日本行政が大きくDXに向かっている現状

2019年5月にIT技術の利用によって行政の手続きや行政職員の利便性を向上させるため、「デジタル手続法」が公布されました。このデジタル手続法では「デジタル技術を活用した行政の推進の基本原則」としてデジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップの3つに基づいた行政デジタル化の方針が定められました。

この流れから、2020年の9月にはデジタル庁の発足に向けて準備室が立ち上げられ、担当大臣である平井卓也衆議院議員が「まずUIを徹底的によくしろということだ。」と発言したことは大きく注目を浴びました。

さらに同年の12月には「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が発表され、デジタル社会を形成するための基本原則やデジタル庁を設置する意義や業務内容について打ち出されています。

今年9月にデジタル庁を発足すべく、現在も着々と準備は進んでおり、4月6日にはデジタル改革関連法案が衆議院・本会議を通過し、35人の民間IT技術者の採用が決定しています。


これと同時に2020年12月より、IT総合戦略室では「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定され、2020年から2026年までの期間において、様々な個別施策を元にデジタル・ガバメントの推進を狙うことが発表されています。

デジタル庁の基本計画との関係を整理しながら進めることが公言されていますが、基本的には独立した計画として推進されるものです。その内容には利用者中心の行政サービス改革として、「サービス設計12箇条」に基づいたサービスデザイン思考の導入や、国・地方デジタル化指針としてマイナンバー制度におけるデジタル基盤の抜本的な改善などが挙げられています。

他の流れとして、経済産業省は国内企業のDXを推進するために様々な施策を展開しています。2018年9月には「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を公開し、既存システムを刷新しなかった場合に起こりうる2025年のシナリオや、それに対応すべく打ち立てられたDX実現方針の啓蒙を試みています。

加えて、経済産業省は企業がアクションを起こせるようにDX推進ガイドラインDX推進指標を策定し、サポート体制の整備を続けています。

このように日本の行政サービスが急速なDXを求められていることが明らかな現状において、Goodpatch内部としてなにか動けることはないかと考えた末にたどり着いたのが、私達にとってもまだ未知の領域だった行政のDX動向を正しくキャッチアップし、知見を得ることでした。日本の行政のみならず世界の行政DXの成功事例にも目を向けることで、今後の動向の是非を判断できる視座を獲得することを目的としています。Goodpatchでは昨年の11月から、本格的にリサーチチームを発足し、活動しています。


これまでにしてきたこと

リサーチに伴い、外部ステークホルダーとの関係構築を進め、関係者への情報発信を行ってきました。

これまでに行ったのは、行政のデジタルシフト推進支援を行う一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアム(OGC)への参画と、東京都副知事の宮坂学さんが主催する勉強会での講演です。これらの会合で代表土屋が登壇し、「世界のデジタル行政のユーザー体験を調べてわかった今、行政にデザインが必要な理由」について講演をしました。

1. オープンガバメント・コンソーシアム(OGC)
OGCは、本格的なデジタライゼーションが新たな社会価値とイノベーションを創り出すことができると考え、デジタライゼーションに関して政府機関等に対して意見具申・提案を行っています。
Goodpatchは、これから行政が構築するであろう新たなデジタルサービスには、利用者視点のUI/UXデザインが重要だと考えています。国内唯一の上場デザイン会社として、政府へUI/UXデザインの重要性について提言を行うべく今回の参画に至りました。


2. 都庁での勉強会
宮坂さんが主催する勉強会は、デジタルに関する知識のブラッシュアップのため自らオンライン形式で実施し、任意で希望する職員も聴講できるものです。そのため都庁職員の方から多くのご意見、ご質問を頂き、リサーチの方針にブラッシュアップできる機会となりました。


これまでの調査内容

リサーチ内容の一部は、Goodpatch Blogにてすでに公開されています。これまで主に電子政府ランキング上位3カ国であるデンマーク、韓国、エストニアとユニークな行政サービスを提供しているスウェーデン、中国のリサーチをしてきました。

1. デンマーク
デンマークは国連の電子政府ランキングで1位に輝いており、国民からも高い評価を受けています。デンマークの特色として挙げられるのは、「NemID」と呼ばれる電子認証サービスです。公共サービスへの支払いや、送金、病院の予約なの様々な場面で使用することができます。加えて、デンマークデザインセンターや破壊的タスクフォースの設立によって、ユーザー視点を獲得するための組織形態も確立していることが分かりました。


2. 韓国

韓国は国連の電子政府ランキングで2位にランクインしています。韓国の特色は、国民IDカードを用いた行政ポータルサイト「政府24」です。現在では転出入、住民票の取得、自動車の登録など役所が発行する書類のうち約9割の手続きをオンライン上で行えるようになっています。このポータルサイトはコンテクスト重視の表示、直感的なアイコンデザイン、ワンストップの申請などの優れたUI/UX設計によって、高いサービス満足度を実現していることが分かりました。


3. スウェーデン
スウェーデンは国連の電子政府ランキングで6位にランクインしています。スウェーデンの特色は、電子認証サービス「BankID」です。行政関連の申請、地方自治体のサービス、オンラインショッピング、インターネットバンキングなどで利用できます。これらの導入によって、電子政府を評価するEUのレポートの「User Centricity」項目ではEU平均を超える高得点を記録しています。


4. エストニア
エストニアは国連の電子政府ランキングで3位にランクインしています。エストニアの特色は、国民IDと電子政府プラットフォーム「X-Road」です。国民IDはデンマークやスウェーデン同様、日常生活の様々な場面で利用でき、インタビューでも「クレジットカードよりもIDカードを信頼しています」との発言があったほどの信頼感です。エストニア政府のデジタルサービスを支えるX-Roadは世界中に輸出され、様々な公共機関、民間企業のデジタルサービスの基盤として機能しており、まさにDXにおけるリーダーシップ的存在です。


5. 中国(上海)
中国・上海は都市別の国連の電子政府ランキングで9位にランクインしています。中国の特色は身分証の取得が義務化されており、普及率は99%となっている「居民身分証」と上海の行政サービスポータル「一網通辦」です。IDと結びついた利用ができるため、住居関連の手続き、婚姻登録、社会保障、医療、観光など様々なサービスの申請をオンライン上で行うことができます。加えて、実名制の導入によってワンストップのサービス提供ができているため、高いユーザー体験を維持しています。


さいごに

Goodpatchでは引き続き、行政のDXについてリサーチを行い、4月26日より毎週月曜日にリサーチ内容を発信していく予定です。これまでのリサーチ内容に加え、新たに様々なテーマについてリサーチを行います。現時点で取り上げる予定のテーマは、

・世界の行政におけるサービス設計のガイドラインの意義
・世界の行政におけるデザインシステムの思想とその有用性


の2つです。これらについて、リサーチ結果を順次お届けします。4月26日からの記事公開まで今しばらくお待ち下さい。

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