『誕正24年』

目が覚めると、ベッドの中にいた。

少し離れた向かいに、姉も目が覚めたようでベッドから起き上がる。

ベッドの奥に、服をハンガーにかける収納がある。

ベッドから居間の方の天井へ目を移すと、プレハブの継ぎ目から外の光が漏れている。

私「ねぇねぇ、あれ、板と板が歪んで何ヶ所も穴空いてるよ、ヤバくない?どーする?」

姉「あとで何とかする。」

私「今日、リゾット食べると運気アップらしいよ〜」

そんな会話をしながらベッドから降りて着替えてる姉を後に、一つ下の段に降りて居間に出る。

高い天井のプレハブ小屋を間借りしているようだった。

必要最低限のものだけ持ってきて置いた感じの部屋だった。

飼っている鳥が、戸棚の上で白い器から餌を食べている。

私「こんな所で餌食べさせたら殻が落ちてくるじゃん。」

姉「鳥は高い所の方が、安心してご飯食べれるでしょ。」

私は、飼ってる鳥が満足そうにご飯を食べている姿を見に行き、右羽を伸ばしてるのを見て、

私「ほんとだ、ゆっくり食べてるわ〜」

と感心し、姉がトイレから出てきて、キッチンに立つ所まで小走りで行った。

姉「トイレに貼ってある選挙ポスター剥がしたいな。あとで剥がすか。」

トイレの壁に、背景が黄色の、男性政治家が森田健作さんのような姿形で、ガッツポーズをしている選挙ポスターが貼られていた。

姉がリゾットを作ろうとしている。

その間、私はもうひとつの戸棚の中身を調べ始めた。

ほぼ何も入っていないのだが、母が空箱にインスタントスティックの箱をぎっしり詰めていた。

(なんでこんなもん集めて綺麗に箱の中に詰めてんだろ?)

戸棚の上にも、箱が大小バラバラに置いてあり、黒い蓋で下が黄土色の紙の素材で作られた、小さい箱を手に取った。

黒い上箱に銀色の文字で[慰霊被災者誕正24年]と書かれていた。

私「…誕正24年?戦争があった年?」

私の中で、その元号は遠い昔のような…10年くらい前のような変な感覚だった。

箱を開けると、薄いオブラートのような和紙に包まれた銀色の棒が、アンバランスにぶら下がっている素朴で綺麗な風鈴が入っていた。

持ち上げると、トップに銀色の金具があり、その下に大きめな細石石1枚を中心に、ワイヤーで棒がアンバランスに数本広がっている。

私「ねぇ、この石綺麗だね、なんの石?」

姉「瑪瑙の種類だよ。」と言いながら調理をしながら返事をしてくれる。

薄く白い透明な石で、ヒラメの薄切りのような筋のような線が、斜めに3列入っている。

ふと姉がそれを持ち、私の頭の上で軽く鳴らした。

銀色の棒が頭に触れながら、綺麗な音を立て脳内を掻き回す。

私は肩をすくめ、ゾワゾワと心地良いの狭間で身震いをする。

その瞬間に目が醒めた。

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