SDGsマーケティング施策事例研究 Vol. 3 KOSÉ(コーセー) 雪肌精のリブランディング 「SAVE the BLUE」キャンペーンで サステナブルメッセージ強化

このnoteのポイント
・老舗ブランドが長年愛されてきた商品を、サステナブルなメッセージを強化してリブランディング
・「SAVE the BLUE」キャンペーンの世界観の元、製造から賞品使用後のリサイクルまで包括的にサステナビリティをテーマとして取り入れた
・ 若年層向けの新ラインを開発し、サステナビリティに感心が高いと言われる若年層向けのSNSコミュニケーションも強化

こんにちは、Good Tideチームのショウです。

今回ご紹介するのは、コーセー(KOSÉ)・雪肌精の「SAVE the BLUE」という、環境保全を目的としたキャンペーン事例です。
以前からCSR活動として「SAVE the BLUE」キャンペーンを実施し、売上の一部でサンゴの移植活動に積極的に取り組んできたコーセー・雪肌精。
2020年に登場した新ライン「雪肌精 クリアウェルネス」シリーズをはじめ、商品やブランドメッセージにサステナビリティをより鮮明に取り入れたリブランディングを行い、「SAVE the BLUE」キャンペーンも強化したことが話題になっています。

それではさっそく、内容を紐解いてみます。

1. ブランドのサステナビリティに対する姿勢

コーセーは、2009年から雪肌精を通じてサステナビリティ推進活動「SAVE the BLUE」プロジェクトに取り組んできました。この「SAVE the BLUE」プロジェクトの夏のキャンペーンでは沖縄のサンゴ育成活動を、冬のキャンペーンでは東北の森林保全活動を行いました。2011年からは日本だけでなく海外の環境保全活動にも取り組んでおり、非常に大きな活動へと成長しています。

2020年4月には「KOSÉ Sustainability Plan(コーセーサステナビリティプラン)」が発表され、企業として取り組むべき課題やテーマの設定、推進体制なども明らかになりました。そのなかでは、「SAVE the BLUE」のようにこれまで取り組んできた活動だけでなく、SDGsとの連動を考慮した“人々や地球環境の未来をより良いものとするための活動”が提示れており、今後の取り組みにも注目が集まっています。

2. 今回の施策の概要

2020年9月、『雪肌精』ブランドの誕生35周年を機に「Gift from the Earth SEKKISEI Clarity~地球からいただく 雪肌精 透明素肌~」という“お客さまへの約束”を掲げたリブランディングが実施され、同時に『雪肌精』の中核を担う新シリーズとして『雪肌精 クリアウェルネス』が発売されました。

このクリアウェルネスのミューズには永野芽郁さんや清原果耶さんが起用され、これまでの雪肌精ファンだけでなく、サステナビリティにより関心が高いと言われているZ世代やミレ二アル世代を意識していることがわかります。

また、クリアウェルネスシリーズにおいては以下のようなサステナブルな取り組みをしています(以下、リリースから引用)。

■CO2排出量の削減
商品の外装の一部に、環境に配慮した素材である「バイオマスPET」を採用。「バイオマスPET」は、PET樹脂の粗原料である石化由来のモノエチレングリコール(MEG)を、サトウキビの搾りかすを原料とした植物由来のMEG(バイオMEG)におきかえたもので、生産時のCO2排出量が、従来の石油系のプラスチックより削減可能です。
■プラスチック使用量の削減
一部アイテムを除き、包装資材やキット品のトレーなどでできるだけプラスチック樹脂の使用を控えるとともに、商品外装のティアテープ包装を廃止します。
■紙の使用量の削減
従来、商品に同梱していた紙製の能書や、店頭で配布するパンフレットを、QRコードを発行することでデジタル化し、できるだけ紙の使用量を減らしていきます。
■その他、サステナビリティへの取り組み
商品に印字するインキは、生分解されやすく、環境負荷の少ないバイオマスインキを採用します。また、商品の外箱は、日本でのリサイクル率が90%以上と言われるダンボール素材を採用。外箱への表記は、当社が定めたユニバーサルフォントを使用し、どなたにも読みやすい大きさと書体を採用しました。

また、雪肌精ブランド全体では、容器回収システム導入によるプラスチックのリサイクル
などが行われています。

こうしたサステナビリティに貢献していこうとする姿勢を示したメッセージはCMやドラッグストア等の店頭だけでなく、銀座のコーセーコンセプトストアにおける展示や、オンラインのバーチャルストアでも発信されており、サステナビリティのイメージを一気に強化していこうとする意気込みが感じられます。

これらの取り組みをどのように発信していったのか、施策の詳細を見てみましょう。

3. 施策の仕組み

コーセーでは、以下のような各種施策を通じて今回のリブランディングとサステナブルな取り組みを紹介しています。

①メッセージの発信
■ コンセプトストアの活用
2019年12月にオープンしたばかりのコーセーのコンセプトストア「Maison KOSÉ(https://ginza.maison.kose.co.jp/)」で、“Earth&Nature”をコンセプトとした『雪肌精』の世界観が体感できる空間演出を2020年9月10日から期間限定で実施。

10月中旬からは、オンラインサイト「Maison KOSÉ」の「バーチャルショップ」でもコンセプトストアの様子がみられるようになるなど、リアルとオンライン両方でさまざまな発信を行っています。

■ SNSプロモーションの展開
雪肌精のInstagramアカウントでは、ブランドミューズの新垣結衣さんによる雪肌精の新CMを配信。

また同アカウントでは、クリアウェルネスのミューズである永野芽郁さんと清原果耶さんによるCMやWeb動画、広告写真と並んで、雪肌精をサステナブル商品として紹介している投稿も見られます。

永野さんによる「Maison KOSÉ」ツアーでは、実際にコンセプトストアの世界観やサービスを体感する様子をライブ配信・IGTVでシェア。スタッフからサステナブルな取り組みについて説明を受ける様子や、事前に募集していたインスタライブ出演者との生トークなども配信され、非常に盛り上がっていました。

②生活者と取り組むサステナブルアクション
2020年9月から「Maison KOSÉ」で実施していたプラスチック容器の回収プログラム「SEKKISEI Earth Beauty Program」が、同年11月からは全国の「イオン」「イオンスタイル」33 店舗にも拡大。
雪肌精をはじめとするコーセーブランドの使用済みの対象容器を「イオン」「イオンスタイル」の化粧品売場(コーセーコーナー)に設置されたオリジナル回収ボックスに入れると、テラサイクルジャパン合同会社のプログラムによって回収され、回収量に応じて付与されたポイントが「SAVE the BLUE」プロジェクトのサンゴ育成活動費用として寄附されるという仕組み。

海洋汚染や海の生態系に影響を及ぼす海洋プラスチックごみ問題を多くの人に知ってもらうべく、埼玉県のイオンスタイル上尾とテラサイクルジャパンとともに海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂を使用した“SEKKISEI 買い物かご”も誕生し、イオンスタイル上尾での使用がスタートしています。

■「SAVE the BLUE」プロジェクトによるキャンペーン実施
コーセーでは、「SAVE the BLUE」プロジェクトとして、夏と冬にキャンペーンを行っています。いずれも対象商品の売上の一部を環境保全活動に寄附するというものであり、持続可能な循環型社会を実現するために企業と生活者が一緒に、そして継続的に取り組んでいる好例といえます。

・夏のキャンペーン:沖縄のサンゴ保全活動の費用として寄附

・冬のキャンペーン:東北エリアの森の植樹費用として寄附

4. 施策のポイント

\ここがポイント/
定番商品のリブランディングによる、サステナビリティのメッセージのインパクト
1985年から和漢植物エキスを配合した化粧品として長く愛されてきた雪肌精は、長年パッケージを変えず、いわばその安定性や定番性によって安心感をお客様へ与えてきました。
それと同時に、信念を持って「SAVE the BLUE」の環境保全活動を続けてきたサステナビリティ貢献への実績も持ったブランドです。
この商品力と環境保全の実績の両方に信頼を置き、マーケティングメッセージとしてサステナビリティのイメージ強化に踏み切ったことが、今回の1番のポイントだと思います。

リブランディングをしても商品に惚れこんでついてきてくれるファンがいること、そして商品パッケージの変更や新ラインの追加と言った新しい施策も、「サステナビリティのトレンドに乗っただけ」というにわか感を与えない環境保全の実績があることにより、リブランディングが雪肌精の「肌にいい」という普遍価値に、「地球にやさしい」という付加価値を与える結果となりました。

ターゲット別のコミュニケーション施策
マーケティング施策の定石ではありますが、サステナビリティのメッセージの発信においても、それぞれのターゲットに対して異なる施策を丁寧に施しています。

往年の雪肌精ファンである30代以降の世代にはコンセプトストアを通してコミュニケーションを、新規顧客としてターゲティングされた20代を中心としたZ世代へは、新シリーズのミューズにZ世代の若手女優を起用し、 SNSによる投稿やライブ配信を行いました。

顧客がサステナビリティ活動に「参加できる」機会の用意
顧客が雪肌精を購入することで自らも雪肌精のサステナビリティ活動へ携わっていることを感じられるように、コーセーの化粧品ボトルの回収をコンセプトストアとイオン系ショップで受け付け、貢献を可視化しました。
またキャンペーンでは、「商品の底面積分」と1人の購入貢献が明確に森林面積の拡大につながることがわかる表記を取り入れています。

透明性のある施策を実施することで、サステナビリティに関心のある人を惹きつけるだけでなく、たくさんの化粧品の中から1つを選ぶ検討段階で、「地球への配慮」を検討項目として人々のマインドの中で可視化することもできた可能性が高いです。

一方で、今回のリブランディングに対する業界関係者からの注目はあったものの、顧客の関心度合を示すクチコミの数は、調査期間の 2020年7月1日~ 2021年2月3日において190件と決して多くはありませんでした。(※1)
今後はリサイクル活動に参加した顧客が発信をする機会を設けるなど、より多くの人を通してブランドの取り組みが伝わるような施策の組み合わせがあるとより効果を升のではないかと思います。

※1 「雪肌精」と「SAVE the BLUE」または 「リニューアル」の両方を含むオーガニックツイートを集計/集計期間: 2020年7月1日~ 2021年2月3日(ブームリサーチ調べ)

5. あとがき

施策の中でも特に注目してほしいのが、雪肌精を「サステナビリティ」という今、関心が高まっているテーマでリブランディングすることで、化粧品として改めてスポットライトを当てた点です。
コーセー・雪肌精が長年行ってきた自然の保全活動へのコミットメントと、商品の成分やパッケージのサステナビリティ化による新たな付加価値がうまくリンクしていると言えます。

食品や日用消費財業界でも、今まで行ってきた環境保全活動をうまく活かすことで、サステナブルな事業やマーケティング活動が考えられるかもしれません。


参考

PR TIMES 2020/6/21「~あなたが美しくなると、地球も美しくなる。~雪肌精「 SAVE the BLUE」プロジェクト 沖縄のサンゴを守る、2020年夏のキャンペーンを開始」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000094.000041232.html (2021/2/2)

SEKKISEI NEWS RELEASE 2020/6/26「~1985 年発売『雪肌精』の 35th year 第二弾~
『雪肌精』が生まれ変わります。誕生 35 周年を機に初のリブランディング2020 年 9 月16 日に新シリーズ「クリアウェルネス」を発売」
https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2020/06/20200626.pdf (2021/2/3)

SEKKISEI NEWS RELEASE 2020/8/26「Gift from the Earth SEKKISEI Clarity ~地球からいただく 雪肌精 透明素肌~生まれ変わった『雪肌精』の世界観をコンセプトストア「Maison KOSÉ」に表現」
https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2020/08/20200826.pdf (2021/2/3)

PR TIMES 2020/10/23「~あなたが美しくなると、地球も美しくなる。~雪肌精「SAVE the BLUE 」プロジェクト東北の森林を守る、2020年冬のキャンペーンを開始」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000142.000041232.html (2021/2/2)

PR TIMES 2020/10/27「~あなたが美しくなると、地球も美しくなる。~『雪肌精』のプラスチック容器回収プログラムを全国のイオングループ33店舗に拡大 リサイクルの収益を沖縄のサンゴ育成活動へ寄附」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.000041232.html (2021/2/3)

KOSÉ 雪肌精 SAVE the BLUE
https://www.kose.co.jp/sekkisei/savetheblue/ (2021/2/2)

KOSÉ Museum Since 1946
https://www.kose.co.jp/company/ja/museum/history/ (2021/2/9)

KOSÉ Sustainability plan 2020/4
https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2020/04/kose_sustainability_plan20200430.pdf (2021/2/2)

SUNTORY 「水と生命の未来を守る森」
https://www.suntory.co.jp/company/hitotoshizen/200301.html (2021/2/9)

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