舞台 あの頂上をめざして 感想

7/28-8/1の間、恵比寿エコー劇場にて行われている、あの頂上を目指して〜14年越しの奇跡〜 を見に行ってきました。その感想です。


先に結論を言っちゃいますと、めちゃくちゃ面白かったです。矢部学野球部の絆やそれを支えた周りの人々の優しさは、競技は違えどチームスポーツに大学時代の大半の時間と情熱を費やした自身の体験と強くかさなる事もあり、まるで自分がチームメイトの一員かのように、身近で、強く心動かされるものでした。

なんで最初に結論を述べたかと言えば、観劇前実は結構不安だったんですよね。推しの初ヒロインという期待が強い一方で、久々にシリアスな演劇で、しかもテーマが障害者の奇跡の話、と。その不安は後に綺麗に拭われるのですが、語弊を招かぬよう言葉を選んでいたら中々感想を書き進められなかったくらいには題材としては複雑は気持ちでした(何度も言いますがその不安は観劇中に綺麗に拭われています)

冒頭のシーン、富士山登山決行の前、自信に満ち「同じような人に希望を与えられたら」と話す良輔と記者の中洲さん、という構図を最初に見た時は、いわゆる『感動ポルノ』と言われた、障害者を感動の『材料』にするそれに見えてしまい、不安は一層深まりました。ただし、このシーン劇中でもう一度出てくるのですが、その時の見え方は大きく変わっていました(後述します)。そこまで狙ってやっていたのなら完全に術中にハマっていますね、、、。

その後の矢部学野球部の一年目、事故までの日々は駆け足ながらも良輔が最初波乱を起こしつつも認めあい、絆を深めていく様が爽やかに描かれており、ずっと見てられるくらい好きです、、。部員が自己紹介していくシーンで思わず一緒に拍手しそうになるくらい、のめり込んでみていました。

個性的な部員みんな魅力的ですし、本当好き、、

三年生はあの四人、というバランスが素晴らしく、正統派に爽やかに部を引っ張ってくれそうな部長、おちゃらけている良くも悪くもムードメーカーなごっつぁん、部長があまり怒ったりしないぶん怒る担当しつつおちゃらけていたりもするともやん、そして優しい小野瀬。理想的な先輩方、のバランスだと思った。

部長には女子生徒にモテてて欲しいし、ごっつぁんが試合で良いプレーして調子に乗って欲しいしそれでベンチがめちゃくちゃ盛り上がって欲しいし、「怖い先輩」を下級生に聞いた時にわりとともやんに票が入って落ち込んでて欲しいし、逆に小野瀬は下級生からやたら慕われてて欲しい。小野瀬たぶん寡黙なんじゃなくて裏で色々下級生と話してるだろうしなんならともやんと良輔の和解のきっかけを少しつくったりしてそう

こう書きながらやっぱり自分の時の先輩の誰に似てるな、なんて頭に浮かぶのですが、本当に、最終的に学年を超えた「仲間」になっていく様はどれも部活の良さ、仲間の良さを思い出して、ずっとニコニコしながら見ていました。

そして合宿の事故と、それによる良輔の絶望。事故以降の良輔は人が変わったような暗い表情ばかりで、好きな事を奪われる苦しみが伝わってくるようで見ていてとても辛かった。変わらず接しようとする仲間たちと、野球が好きな気持ちと野球ができない悔しさの狭間で揺れる良輔のすれ違いは泣きそうになりながら見ていました。

そしてそんな良輔が出会う少女、優衣ちゃん。私の推し。ただひたすらに芯の強い子だな、と印象を受けました。初めて会った時に「じゃあ歩けるようになるかもしれないんだね?」と自分のことのように嬉しそうに良輔に語りかける姿でまずそう思いましたし、何よりその次に登場したシーンが印象的でした。

転げ落ちた車椅子からなんとか戻る良輔に「歩けていいね」と言い、「自分が一番不幸だと思っていた」と言って謝る良輔に、「やめて。私は自分が不幸だなんて思ってないよ」と。

文章だと伝わりずらいですが、「やめて。」という一言が、怒るわけではなく、でも確かに強く、静かに意志を秘めた言葉で、それは良輔への言葉だけれど、同時に、「これは障害者を感動の材料にしてる作品なんじゃないか」と不安に思っていた私自身もハッとさせられるような言葉でした。最初に観劇した時はここで私は泣いた。

凛として芯が強く、純粋で、良輔じゃなくても惚れるわコレは、、、となりました。


そしてその後の寄せ書きのシーン、みんなの寄せ書きがみんならしかったし、落とした寄せ書きを拾って「大切にしなさい」と諭す看護師さん含め、一番泣きました。


部活の場面好きすぎて前半でお腹いっぱいなレベルなんですが、後半の山登りも、部活の頃のままの関係性で、一つの目標に進んでいく様は「14年越しの部活」であったし、頂上で皆ヘトヘトなのにふざけながら全体写真を撮る様は本当に「合宿最終日」そのもので、あの日事故がなかったらあったはずのその日を取り戻す、そんな物語だったんだ、と強く思いました。

そして、冒頭のシーンが再び出てきた山登り前のシーン、やけに自信たっぷりに見えた良輔のその自信の裏に仲間と築いてきた絆に対する信頼が見えて、初めて見た時に感じた不安なんてものは全く感じず、こうも見え方が変わるのか、ととても感心しました。見え方が変わると中洲さんも杖の補助などから親身に取材しているのが伝わってきてより感動しました。


そして観劇後、元の話がある、ということを聞いて調べてみたのですが


大学ラグビーじゃん!!!!そりゃ私好きだわ(大学でアメフトやってたしラグビーも知ってた)!!

ただまぁ、分かりやすく高校野球にしたのは正解だとは思います、、ラグビー好きだけど、、。

上の記事で良輔のモデルの方自身が、取材されテレビに記録される事に対して、障害がとりあげられる事に対して複雑な思いもあるけれど、仲間とやりたいことをやる、その約束と絆にこそ意味があるんだ、的な事をおっしゃっていて、改めて最初に不安がっていた自分を反省し、このような素敵な舞台にしてくれた方々を素晴らしく思いました。



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