憧れ

電車を移動した少女はほっと一息ついた。

視線を下げてみると分かるのだが、彼女の太腿ないし脹脛は平均的な中2女子よりもむっちりとしている。これは彼女がソフトボール部に所属していることに起因していた。

日々の練習は勿論だが、部員が悲鳴を上げたのは8月に1週間暑い高知の地で行われる合宿だった。朝は5時に起床し、10kmの坂道をランニングするところから始まる。あまりのキツさから近くの葡萄畑に逃げ込む部員もいたほどだ。日中は基本練習から試合形式までハードな練習に励み、宿に帰ると先輩の食事の用意や洗濯をした。夜11時までボール拭きをし、寝付く頃にはくたくただった。

同学年たちが次々と辞めていく中少女が熱心に部活を続ける理由はただ1つ。兄に少しでも近づきたい、その想いだけが少女を突き動かしていた。

6歳上の兄は気前が良く、面白く、その上野球が上手かった。何を隠そう、少女が初めて尊敬した大人は兄だった。少女は大人に対してあまり良い感情を抱いていなかったが、兄のような大人になら喜んでなりたいと思った。そんな兄は高校を卒業後MHPSに就職し、今社会人野球に励んでいる。

ハマショーの『MONEY』がすきです。