対オールブラックス チェイカの戦い  ~ ランチェスター戦略の観点から ~

10月27日 キヤノン ブレディスローカップが横浜・日産スタジアムで開催されます。

今回はオーストラリア代表(以下ワラビーズ)の監督であるチェイカに成り代わり対オールブラックス戦の戦略を練ります。ここで主に依拠するのはランチェスター戦略です。この理論によって、ワラビーズ側の戦術を考察したいと思います。

ワラビーズは、今回の対戦で以下の二つの戦術を取るべきだと思います。

1.アップ&アンダーなどキックチェイスを中心戦術として採用し、勝負所で13番に入れたフォラウのランで勝負する。

2.フロントローだけのポッドを用意し、密集近くで、強いアタックをしかける

この2つの戦術を取る可能性が高いのは、ワラビーズが局地戦でのバトルで勝利し、ゲームを有利に進め、オールブラックスを打ち負かすことが出来るからです。ランチェスター戦略で、理論的なその裏付けを行いたいと思います。

◆ ランチェスター法則とは?


まずはランチェスター法則のまとめをざっと記します。

第一次世界大戦のさなか、戦闘機の開発に従事していた英国人エンジニアF・W・ランチェスターは、自分が開発した戦闘機が実際にどのような成果をあげるのか興味を持ちました。
研究したところ、兵力数と武器性能が一軍の戦闘力となり、敵軍に与える損害量を決めることを発見します。これがランチェスター法則と呼ばれるものです。
第一・第二の二つの法則で成立するランチェスター法則が、ランチェスター戦略の原点とされています。
 
■ ランチェスター第一法則

一対一が戦う一騎討ち戦、狭い範囲で(局地戦)、敵と近づいて戦う(接近戦)原始的な戦いの場合は第一法則が適用します。

第一法則の結論は次の通りです。

戦闘力=武器効率 × 兵力数

同じ兵力数なら武器効率が高いほうが勝ちます。同じ武器効率なら兵力数が多いほうが勝ちます。
敵に勝つには敵を上回る武器か兵力数を用意すればよいことになります。

■ ランチェスター第二法則

近代的な戦いの場合に適用するルールをランチェスター第二法則といいます。

同時に複数の敵に攻撃をすることのできる近代兵器(確率兵器という)を集団で使用して戦う方式の戦闘を確率戦といいます。

第二法則が適用される戦闘は、確率戦。広い範囲で(広域戦)、敵と離れて戦う(遠隔戦) 場合が該当します。
マシンガンを撃ち合う集団戦をイメージしてください。

第二法則の結論は次の通りです。

戦闘力=武器効率 × 兵力数の2乗

第一法則との違いは兵力数が2乗となることです。
武器効率は変わりません。
確率戦は相乗効果が高くなるので兵力数が2乗に作用します。

兵力が多いほうが圧倒的に有利です。
兵力の少ない軍は第二法則が適用する戦いでは勝つことは極めて困難です。

つまりワラビーズは第一法則に基づき、広域戦を避けることになります。

◆行動を決めるものとしての戦術

この法則の下で、プレーヤーの行動が決まります。
強者と弱者では採用する戦略は異なってきます。

2位を射程距離圏外に引き離したダントツの1位(これをナンバーワンと呼ぶ)になること。これがランチェスター戦略の結論です。第1のルールのナンバーワン主義です。強者の戦術です。まさしくオールブラックスの戦略であり、ワラビーズが採用する意味がありません。

一方、弱者は、事業領域を細分化し、勝ち易い地域、ルート、顧客、商品を設定し、そこに経営資源を重点投入することになります。これを一点集中主義といいます。2つめのルールです。この戦術がワラビーズのベースになります。

 3つめのルールは「足下の敵(そっかのてき)」攻撃の原則です。勝ち易い敵を狙うこと、足下の敵を射程距離圏外にすることで、自軍が安全圏となります。勝てるところで勝つという原則は採用しやすいものです。

◆小が大に勝つ原則

ランチェスター法則から導き出される小が大に勝つ原則は以下の3つです。

①奇襲の原則(ランチェスター第一法則が適用する一騎討ち戦、局地戦、接近戦といったゲリラ戦で戦う)
②武器の原則(武器効率を兵力比以上に高める)
③集中の原則(局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する)

孫子の兵法も考慮すれば④機動の原則も該当すると言われています。戦闘力の柔軟な適用を通じて、敵を不利な地点に位置させる原則、武田信玄の風林火山です。

この4つの原則に基づき、ワラビーズは戦術を確定します。

今回の勝敗を分ける最大のポイントはアイソレーション(孤立化)でしょう。ワラビーズの選手にとってもっとも有利なポジションで、うまくオールブラックスの選手を孤立させることができれば、局面で制圧することが可能になるからです。

ワラビーズの最大の武器といえば、ビール、フォラウ、ハイレットペティのランアタック。そのラン攻撃を最大化するためには、効果的なポジションを確保するため、キックで局面を整えていく形になります。

フォラウはスピードにおいて優れていますが、パワーで上回る方法もあります。
スクラムの最前線にいるパワフルなユニットをそのままぶつけることで優位性を出すのです。ポッド戦術を使うのであれば3人を分散化させるところを、あえて片寄らせる。奇策とも言えます。

また稀代のモチベーターでもあるチェイカの煽りも大事かもれません。オールブラックスに動揺を誘うようなワードバトルを仕掛ければ、戦局にも良い影響を与えるでしょう。

またこういった戦略を効果的に実施するには、下記のような戦略を組み合わせていく必要もあります。

1.地域戦略
エリア・テリトリーでナンバーワンになる実戦体系。
地域を細分化し、重点エリアを設定し、攻略していくノウハウと実践ステップ。地域の奪い合い。

2.シェア戦略
 シェア(占有率)の調査、調査情報を分析する手法。目標を達成するための戦略策定方法としてカバレッジ・構造シェアを考察。重点取組・標的を設定する。

3.攻撃戦略
 定めた標的に対してどのように攻撃をしていくのか。攻撃量と攻撃の質を戦略的格付けに応じて最適化していく方法論。

4.参入戦略
 地位別の戦い方を指導原理にしている。導入期・成長期はいかに戦うべきか、時期別の戦い方を指導するのが参入戦略編。同時にターゲット階層の絞り込み方、新規戦術の開発方法など

この辺は実際のデータで比較すべきでしょうが、それは今後の課題としたいと思います。

以上の戦略的な判断を考慮すると、冒頭の二つの戦術を採用することで勝利の可能性が高まると思われます。再度、冒頭の二つの戦術を記し、終わりとさせていただきます。

1.アップ&アンダーなどキックチェイスを中心戦術として採用し、勝負所で13番に入れたフォラウのランで勝負する。

2.フロントローだけのポッドを用意し、密集近くで、強いアタックをしかける

参考サイト

競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」とは

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