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【読書】宿野かほる「ルビンの壺が割れた」

 こちらで備忘録を兼ねて、読んだ本について記しておこうとおもいます。

 今回は宿野かほるのミステリ(?)作品「ルビンの壺が割れた」です。
  覆面作家である作者のデビュー作です。

 三十年前、結婚を約束していた男性からFacebookのメッセンジャーで、相手の女性にメッセージが届くことをきっかけに、当時を回顧しつつ会話のキャッチボールがはじまり、やがてその真相が徐々に明らかに……。という感じのミステリ(?)です。

 表題の「ルビンの壺」とは、いわゆる多義図形、だまし絵のようなもので、心理学にて用いられる図を指すようです。表紙の絵のように「中央に黄色の壺がある」とも「両サイドの黒い部分が向かい合う男女に見える」など、観察者の主観の相違によって、差異がうみだされる図のことです(私見かつ概略です)。

 すべての文章がメッセンジャーでの内容になっており、口語体で構成されています。ゆえにリーダビリティも高く、作品自体も短編~中編くらいのボリュームなので、サクサクと読み終えることができました。
 飛び道具的なアイデアが秀逸かと思います。

 前評判の「どんでん返し」で構えてしまっていたのですが、必要以上に構えてしまいました。

 後半に行くにつれて、どんどん怪しげな会話内容になっていきますが、ちょっと後付けに見えなくもないかな……、という印象を受けました。
 男性が、数年前からメッセンジャーを使いはじめるまでインターネットに興味がなかった、もしくは触れられない環境だったというのは、わりと伏線でした。

 前述の通り、作品本体がアクロバティックで、結果なおかつ読みやすく、分量もひかえめなので、ご興味あればいちど読んでみるとよいかと思います。

 ↓ 過去の読書noteはこちら。

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