水中写真を撮り始める前にやってほしいこと(2/2)#3

前回の記事では
「写真を撮り始める前に
やってほしいこと(その1)」
と題して
水中写真を始めたばかりの人に
知っておいて欲しい
魚が持つテリトリー
ついてお話しました。

要約すると
魚を見つけたら
撮り始める前に
まずはどこまで寄れるか
確かめた方がいいよ

という内容でした。

フォト派ガイドとしての
目線が強すぎて
もしかしたら一般ダイバー
が参考にするには
少し難しかったかもしれません。

もちろん、
すぐできるようになるよ
と思って書いてはいません。

ですが、
高度なことを言っているようで
実は生物を観察する上で
初歩的なことしか言っていません。

10年以上フォト派ガイドとして
働いてきた私から言わせてみれば
魚との距離感をつかめないまま
ベテラン風を装って潜っている方が
少なからずいます。

そのまま300本、500本と
経験を積んでしまうと
癖づいてしまうのか
どれだけ説明しても
もう直りません。

ぜひ、
一般ダイバーの方も、
特に初心者の方こそ
私には無理だと思わず
魚との距離感を気にして
潜るようにしてみてください。

同じ1本でもその差は大きく、
いつか、写真が撮りやすく
なる日がくるかもしれません。

今回の記事では
前回書ききれなかった
水中撮影を始める前に
やってほしいこと
のうち
残りの2つ、
2⃣行動パターンの観察
3⃣撮影位置の確認
について解説しています。

まずは前回の記事を
お読みになってから、
難しさを承知の上で
続きも読みたいと
思ってくださった方のみ
ご覧ください。


①行動パターンの観察

魚にはたくさんの種類がいるので
ひとくくりにして行動パターンを
説明することは無理なのですが、
今回はパッと思い浮かんだ
ルリホシスズメダイの幼魚を
例に解説しましょう。

温帯域では見る機会が
少ないので例としては
分かりづらいかもしれませんが
やることはどの種でもほぼ同じです。

これからお話することを
それぞれの種に置き換えて
考えてみてください。


スズメダイなど
サンゴ礁に暮らす小さな生物は
驚かせるとサンゴの隙間や
岩の亀裂に逃げ込んだきり
出てこなくなることがあります。

ルリホシスズメダイを見つけたら
いきなり近づかずこうとせず
まずは遠目から観察しましょう。

前回の記事に書いた
1⃣テリトリーの観察ですね。

小さいルリホシスズメダイが
テリトリーとする範囲は
たいていサンゴ1つか2つ分くらいです。

そのうちどこが一番長い時間滞在する場所か
どの順番で顔を出す頻度が多いか
を判別するためにさらに観察を続けます。

これが
2⃣行動パターンの観察です。

生き物なので
一概に
AならばB
が必ず成り立つわけでは
ありません。

ですが、
その時の流れのかかり方や
サンゴ周辺のスペースの関係で
捕食しやすさが変わるのか
あるいは単純にその個体の好き嫌いなのか
本当の理由は知りえませんが
姿を現す頻度が高い場所というのは
だいたい分かります。

そこを見極めずに近づくと
撮影のチャンスがないまま
ただエアを浪費してしまうだけに
なりかねません。

ゆっくり魚と向き合うためにも
どこが一番お気に入りなのか
しっかり見極めてください。

見極めて初めて
緊急退避線まで寄っていく価値が出てくる
というのが私の考えです。


②撮影位置の観察

ここまでの説明で
1⃣テリトリーの観察
2⃣行動パターンの観察
した方がいい理由を
理解していただけたと思います。

さあ、あとは寄って撮るだけ!
ではありません。
緊急退避線に近づく前に
もう一つだけ、
もっとも重要な
3⃣撮影位置の観察
が残っています。

これを怠ると
手をついたところに
オニダルマオコゼがいて
毒がある背びれを触って
しまうかもしれません。

一見すると生物がいなくても
そこには底生生物の
ホヤが群生しているかもしれません。

海を愛する人は
きっとこういうことにも
ちゃんと理解がある方々だと
信じてはいますが、
たまに全くの無関心で
平気で押しつぶしていく人がいます。

ウミヒルモに隠れる
かわいいカエルアンコウの幼魚を
撮りながら、ぶちぶちと
ちぎっていくダイバーだって
よく見ます。

次の日、カエルアンコウは
いなくなってます……

少し横道にそれましたが
3⃣撮影位置の観察とは
周囲の状況を確認するということです。

「ここから撮ったら
手前にある石が邪魔だな。」

とか

「あそこから撮ったら
後ろにあるオレンジ色の
カイメンを背景に使えそうだな。」

とか

「魚の顔がそっちを向いてるから
ここから撮ったら後ろ顔しか
撮れそうにないな。」

とか考えてください。

これらのことを総合的に
判断した上で
どこから撮影をするか
を決めます。

3⃣撮影位置の観察
自分の身を守るためにも
水中撮影を楽しむためにも
必要なことです。


③まとめ


以上、水中撮影を始める前に
やってほしいことでした。

  • 1⃣テリトリーの観察

  • 2⃣行動パターンの観察

  • 3⃣撮影位置の確認

3つ挙げましたが
すぐさますべてを
完璧にこなすことは無理でしょうし、
どれからやらなければいけない
という順序もありません。

3⃣撮影位置を確認して
1⃣テリトリーを意識しながら
寄っていくだけでもいいですし。

1⃣テリトリーの把握をして
3⃣撮影位置を確認してたら
2⃣行動パターンに気づけたでもいいわけです。

最初はうまく距離感がつかめず、
驚かせてしまったりするはずです。

難しいと諦めて
気にせず潜っていても
誰も攻めません。

今はカメラの性能が優れていますから、
とりあえず手当たりしだいに撮っておいて
トリミングと色補正をしてしまえば
Instagramでいいねがもらえます。

ひとそれぞれに
写真の楽しみ方がありますので
それが悪いこととも
言ってません。

それに、
あまり観察しすぎると
せっかくのシャッターチャンスを
逃してしまうことにも
なりかねません。

ここまで長々と語ってきた
「観察する」は、
実は諸刃の剣でもあるからです。

例えば、
目の前でコケギンポが
噛み合いの
喧嘩をしていた時に、
どこまで寄れるだろうか・・・
なんて
いちいち間合いを
測っていたら
そのうちに
終わってしまいます。

こういう時は
Don't think feel.です。

と言っても、往々にして
何も気にしないで潜ってきた人は
慌てて突っ込んでいって
喧嘩の仲裁に入っていって
しまうのではないでしょうか。

あきらめずに
しっかりと「観察する」を
続けた人だけが
いざという時に
的確な距離を
瞬時につかみ取って
撮影できるようになるのです。

初めてnoteに書いた記事も
前回から続く観察についての記事も
意識したからといって
すぐにできるようになることではありません。

魚に警戒心があることを知って、
距離感を気にして潜っていけば
もしかしたらちょっとだけいいことあるかもよ
くらいのつもりで
頭の片隅にしまっておいてください。

100本潜ったくらい、
あいつが言ってたことって本当だったかもな
と気づいた頃に連絡ください。

ひとこと、
「言ったろ?」
と返信させていただきますんで。


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