水中写真を始める人が最初に練習すべき4つのスキル #1

この記事は、
これから水中写真を始めてみたい方や、
水中写真を初めたばかりの方に
向けて書いたものです。

おそらく、みなさんは
それぞれ通われている
ダイビングショップの
インストラクターさんから
カメラの設定の仕方や
細かい撮り方などについて
いろいろ教えてもらっている
と思います。

なので、カメラに関することは
そちらにお任せして
わたしはもっとざっくりとした
考え方や姿勢というか。

要はダイビングスキルが一番大切だよね
ということについて
長々とお話したいと思っております。

さっそくですが、
みなさんが子どもだったころを
思い出してみてください。

習い事を始めるとき、
まず初めに基本を覚えて
繰り返し反復したことでしょう。
基礎が身についてから
応用編に進むという流れをふむと思います。

例えば書道に「永字八法」(えいじはっぽう)
という言葉があることを知っていますか。
「永」の一字には書道に必要な基本技法が
すべて含まれているというものです。

水中写真にもまさに「永」の字にあたる
最初に練習しておくべきスタイル
というものがあります。

それは「図鑑写真」です。


この記事では、
どうして図鑑写真を
撮る練習をすると
水中写真が上達するのか、
図鑑写真に必要とされる
4つのスキルの説明と
ともに解説していきます。



①図鑑写真には水中写真に必要な要素がすべて詰まっている

図鑑写真と聞いて
どのようなイメージをお持ちですか?

「むずかしそう」とか
「面白くなさそう」とか
そんな声が聞こえてきそうです。

インスタグラムを見ていると
素敵な写真がたくさん投稿されているので
私も「こんな写真が撮りたい」
「いますぐ撮れるコツを知りたい」と
思う気持ちが生まれるのも
とてもよく分かります。

しかし、長年フォト派向けの
ダイビングインストラクターを
続けてきた私の経験から
言わせてもらうと
小手先の撮り方を
覚えるより先に
図鑑写真を撮ることの方が
大切だと感じています。

図鑑写真を撮るには
タイミングの取り方
魚へのアプローチの仕方
ダイビングスキル
といった
水中写真に必要とされるスキルが
すべて詰まっているからです。

「今すぐかわいい写真が撮れる方法」
についてはこの記事では触れていません。

「しっかりと撮影スキルを身につけたい」
と思っている方は、ぜひとも
この先も読み進めてみてください。


②図鑑写真とは各ひれが完全に開いた横位置写真のこと

まず、図鑑写真とは
いったい何のことを
指しているのでしょうか。

厳密にいうと、
頭が左を向いていて
すべてのヒレが
完全に開いている写真のことです。

魚拓を想像してもらえれば
分かりやすいかもしれませんね。

魚類の写真図鑑では
右を向いている写真も
少なくありませんが、
基本は左です。

なぜ左向きなのかというと
「左上位」、「左優位」という
日本の伝統的な考えから
日本料理において
魚は左向きという概念が
定着したからだそうです。

そういえば焼き魚って
必ず左向きですね。

とはいえ、
みなさんは決して図鑑のために
写真を撮るわけではないですよね。

なので向きは気にしなくていいです。

ヒレが開いている瞬間を撮れるか
どうかだけ練習してください。

ちょっと難しい話ですが
分類学の世界では、
ヒレの節が何本あるか
で見分けます。
※棘条とか軟条とか名称がついてますので
気になる方は魚類図鑑の
最初の10pくらいにある
「各部位の名称」ページをお読みください。

ヒレが開いているかどうかは
魚を見分けるのにとても重要なことなんです。

魚の名前なんかどうだっていい
という人もいると思います。

覚えろとは言ってませんよ。

そんな方も、とりあえずは
尾びれ、尻びれ、腹びれが
完全に開いた状態の写真を
撮ることを目指してみてください。

「ヒレを開いた瞬間の魚を撮る」
という行為には
水中写真に
必要なスキルが
いろいろ詰まってるよ
と言いたいだけなのです。

次の項目からは
どんなスキルが詰まっているのか
4つに分けて説明していきますね。

あ、胸びれは常にうねうね動かしているので
一旦置いておきましょう。


③水中写真に必要なスキル⑴ タイミングをつかむ

まずはハゼを撮れるようになりましょう。

ヒレを開くタイミングをつかむ練習です。

ネジリンボウやダテハゼなど
テッポウエビと一緒に巣穴から出てくる
種類が特にオススメです。

比較的動きが少ないので
ヒレを開く瞬間を狙いやすいはずです。

着底できるので体を安定させられるのも
ビギナー向けだと思います。

引っ込ませないように
慎重に近づいてください。

あ!着底する前に
海藻類が生えてないかだけは
必ずチェックするようにしてくださいね。

それと砂を巻き上げないように
することも大切です。

ファインダーをのぞくと
ただでさえダイビング中に狭くなる視野が
一層せばまってしまいます。

常にもう一方の目で周囲の状況を
確認しながら撮影にのぞんでください。

巻きあがった砂が
どこへ流れていくのか。
流れの向きを把握しておくことも
大切なスキルです。

じわりじわり近づいていき
ハゼがふわっと浮き上がって
ヒレを開く瞬間を
狙ってみてください。

目にピントが合っていないと
ひれが開いていても0点ですよ。

必ず、目に
フォーカスポイントを持ってきて
尾びれの先まで
ファインダーの中に
入っていることを
確認しながら撮ってください。

エビが巣穴から
砂をかき出している様子も
一緒に撮ることができれば
最高ですね。


④水中写真に必要なスキル⑵ 気配を消して寄る

共生ハゼで練習を積んだら
オキナワベニハゼなど
岩の亀裂や暗がりに住む
種類を狙ってみましょう。

魚は目で周囲の状況を把握しています。
常に捕食の危険と共に生きているので
素早く動くものに対してかなり敏感です。

また、魚の体には
側面に線があります。
この側線(そくせん)という器官で
水流や振動、音を察知している
とも言われています。
息を吐くときの勢いにも注意しましょう。

ピントが合う最短距離まで
寄ることができたら
一人前と認めてあげます。

最新のミラーレス機では必要ないのですが
あえてフォーカス用に
ライトを点けて撮ろうとすると
難度の高い練習になります。

ハゼはときどき、
プランクトンを
捕食するために
飛ぶことがあります。

その瞬間をもし撮ることができたら
ほかに教えることは何もありませんね。

⑤水中写真に必要なスキル⑶ ファインダーの隅々まで意識する

次はスズメダイの幼魚を狙いましょう。

スズメダイの幼魚って
かわいいですよね。

沖縄地域では初夏になると
レモンスズメダイから始まり、
クロスズメダイや
ヒレナガスズメダイなど
カラフルでかわいい幼魚が
海にあふれかえります。

ところがスズメダイの幼魚って
撮るのはとても難しいんですよね。

動きの少ないハゼと違い、
スズメダイは前後左右に
さまざまな動き方をします。

ハゼを撮れるようになった
ということは、
目にピントを合わせながら
ヒレが開く瞬間に
タイミングよく
シャッターが切れるようになった
ということです。

おそらく、
ご自身の視線は魚の目をとらえながら
知らず知らず視界の片隅で
尾びれの先まで見えているように
なっているはずです。

動き回るスズメダイを撮るときには
このスキルをさらに向上させて
ファインダーの四隅まで
意識を張り巡らせてください。

別の魚が割り込んできたり
岩にヒレが隠れたり
邪魔な海藻が写りこんでしまう
ことがあるかもしれません。

これらの要素を
ファインダーをのぞきながら
ピントを魚の目に合わせながら
気をつけるのです。

急に難易度が上がりましたね。

でも、動くといえど
幼魚ですから
あまり行動範囲は広くありません。

体をしっかり固定して
じっくりと時間をかけて
練習してみてください。


⑥水中写真に必要なスキル⑷ 中性浮力

最後のターゲットはベラです。
ベラの成魚を狙いましょう。

ついに
「可愛くない!」
「ベラなんか興味ない!」
とブーイングが聞こえてきましたね。

そんなことは重々承知です。

種類はなんでもいいですし
名前をおぼえてほしいとも
言ってません。

ただ、
泳ぎ回るベラを
追いかけつつ
ヒレを開く瞬間を
狙ってみてください。

撮れるようになったころには、
きっとベラのことが
好きになっているはずです。

間違えました。

水中写真に必要なスキルで
最も重要な「中性浮力」を
習得しているはずです。

ベラの成魚ともなると
種によっては
かなり広範囲に
テリトリーを
持つものがいます。

右に左に泳ぐベラを
こちらも泳いで
追いかけるためには
中性浮力が必須です。

マイナス浮力では
泳いでいる途中で
着底してしまうからです。

また、視野も今まで以上に
広くないといけません。

これまではファインダーの四隅を
注視していればよかっただけです。

これからは岩にぶつからないよう
周囲の障害物も視界に
とらえなければいけません。

実はこのスキルも、
基礎は共生ハゼを撮るときに
練習しましたね。

砂を巻き上げていないか
流れはどちらに向かっているかを
ファインダーをのぞきながら
もう片方の目で見ながら
撮っていたなら
習得しているはずです。

着底してできるようになったことに
泳ぐという動作を加えることで
ようやく水中写真に必要なスキルが
完成されるというわけです。

以上、
⑷完璧に浮力をコントロールしつつ
⑵魚を驚かさないように慎重に近づいて
⑶ファインダーの四隅に気を配りながら
⑴タイミングよくシャッターを切る

という水中写真に必要なスキルが
4つの被写体の図鑑写真を
撮ることによって
すべて身につくということを
説明してきました。

一朝一夕で
できるようには
決してならない
険しい道のりです。

私が以前勤めていた
ダイビングショップでは
「1000本潜るまで
カメラの所持は禁止」
という決めごとを
愚直に守られた
お客さまがいました。

その方が撮られる写真は
とても上手だったことを
覚えています。

結局、
水中写真は
ダイビングスキルが
土台にないと
撮れないよね
ということです。

さすがにみなさんが
そこまでやる必要は
ないと思うので
写真を撮りながらでも
ダイビングスキルを
身に着けられるように
私なりに練習のノウハウを
まとめてみました。

もしもですが、
もしあなたが1000本も
カメラを持たずに
潜ることができたなら
今回の記事では
説明を省いた
水中写真に大切な
もうひとつのスキル
「見る」が身につくことでしょう。

このスキルに関しては
次の記事で取り上げたいと思います。


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