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人の言葉を話す猫と宝石の川

とある場所に立って、前方の景色を眺めている。あまり深くはない、谷のような場所だ。やや離れた場所に、黒土の断崖がある。その上は、一軒家が建ち並ぶ住宅街になっている。自分の足元は、黒っぽい岩盤のようだ。

左を向くと、自分と同じように、猫が前方を眺めている。そして、猫が前方を眺めたまま、口を開いた。

「川澄 澄明」

カワスミチョウメイ、猫は人の言葉で、確かにそう言った。瞬間に、どのような漢字なのかも、すぐに頭に浮かんだ。何だか人の名前のようだと思ったが、それが何なのかは、はっきり分からなかった。

気が付くと、近くに川が流れていた。川幅は十メートルはある、そこそこ大きな川だ。流れも速い。しかし、水深は浅く、岩盤の上を滑るように流れて行く。

川の水の色は、鮮やかなエメラルドグリーンで美しい。しかし、透明度は非常に低く、まるでエメラルドグリーンの塗料が流れているかのようだ。

よく見ると、その川の向こうに鳥居が見える。川は鳥居の方から流れて来る。この川を中心とした、あまり深さのない比較的幅の広い谷は、神社の参道でもあるらしい。あまり整備されていない、岩や土がむき出しの参道の上を、緑の塗料が流れている。そして神社は、鳥居の向こうではなく、こちらの背後にある。

その川のほとりに近付いた。川のほとりの石は、白っぽい黄土色の、土くれようなもので、数多くの緑色ににじむ斑点がある。川のエメラルドグリーンに呼応したような、鮮やかな緑色で、美しい。そこらじゅう、そのような石ばかりで、岩と呼ぶべき大きなものもあるが、やはり白っぽい黄土色に、多くの緑の斑点があった。

そのうちの一つを拾ってみた。土くれのように見えた石は、本当に柔らかく、まさに土くれで、手で簡単に折る事が出来た。

折った石の断面には、赤やら黄やら透明やら、色とりどりの宝石が、土に埋め込まれているように入っていた。天然の石の中のはずなのに、それらの宝石は、つやつやとして、人の手で磨いたかのようだったが、形は丸だったり長細かったり、様々だった。

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こちらは子供の頃、実家でともに暮らした猫で、名はグーという。私より一年程先に生まれた猫であり、私が病院で生まれて初めて実家(現在の実家とは異なる)に来た時、既にこの猫はいた。雌猫であり、よく私のゆりかごにともに入っていて、私を自分ことども勘違いしていたらしい。

赤ん坊の私が泣くと、私の首の後ろを噛んで泣き止ませたそうで、その後は今も残っている。夢の中の猫は、このグーかどうかというと、それは明確ではない。ただ、外見はこれと似たようなシャム猫だったと思う。グーは、私が小学三年生の時に亡くなった。

なお、この写真は、グーが亡くなって一、二年くらいの後、近所のスーパーのペットショップで、手持ちの写真をバッジにするサービスを行っており、その際にバッジとしたもの。それを、近年撮影した。

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こちらは先日旅行先で撮った、秋田県仙北市の抱返り渓谷。この渓谷を形成する玉川の上流に、日本一の酸性度とも言われる玉川温泉があり、その強酸性の水が流れ込むため、このように青い水を湛えているのだという。抱返り渓谷の水は、近付けば透明度は高く、色も青みが強くて、夢の中の川とはやや異なるが、しかし、絵の具のような鮮やかな色の川ということで、私のこれまで見た川の中では、最もイメージに近い。

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この二つの写真を組み合わせて、ヘッダー画像とした。雑な加工ではあるが。

なお、私の大学の卒業論文のテーマは、ドイツ・ロマン派の作家、ティークの「長靴をはいた牡猫」がテーマである(猫が人語を話す作品)。

サポート頂けると、全市町村踏破の旅行資金になります!また、旅先のどこかの神社で、サポート頂いた方に幸多からんことをお祈り致します!