見出し画像

凄絶!巨大狸穴と空中狸合戦

暗いトンネルのような場所を進んでいる。前後には沢山の狸達がいる。人間は私だけだ。狸の群れの中に私はいる。
前を行く狸がこちらを振り返ったり、子狸が私の背中を登って、右肩を通り、胸や腹を伝ってまた降りたりしている。
そしてこの狸達は、人の言葉が分かり、人の言葉を話す。

トンネルは、私が立ったまま歩いて行ける高さがある。しばらく進んで行くと、地上に出た。レールとホームが見える。レールの位置から、ホームを見上げる形だ。ホームの向こうにも、幾つもの線路とホームが見える。大きなターミナル駅だ。線路の道床の砂利や、青々とした草も見える。

ここから、再び地下の道に入る。何度か地上に顔を出しては、また地下に潜って進む。
同行している狸達は、河川を管理しているという。地下水脈や伏流水の関係から、こうした彼ら専用の地下通路を持っているようだ。

そうして時折地上に出ては地下の道を進むうち、大きな川の近くに、屏風のような高層マンションが建ち並んで、巨大な谷のようになっている場所に出た。
左側のマンションの屋上に、「敵」の狸達が立っている。マンション一部屋分につき、一匹の狸がいる。部屋はパッと見十以上は連なっており、敵も十匹以上いる。向かって右に行く程、格上の狸らしい。また、マンションは階段状の造りになっており、右に行けば行く程階層が高い。

敵の狸達は、暗雲立ち込める空から吹く嵐の中、凶悪な目をぎらつかせ、牙を剥いて、立っている。敵は本当は狸ではないのかもしれない。あるいは山犬か狼か。そういった凶暴な表情をしている。

しばらく、双方にらみ合った後、突如、こちらの狸達が、狸の長老の合図で、跳んで敵に襲い掛かった。こちらの狸達は、物凄い跳躍力だ。十階層はあろうかというマンションの屋上へ、軽々と飛び跳ねて舞い降り、次々と敵の狸を仕留めて行く。

一番右の、敵の大将には、こちらの狸のNo.2が向かって行く。敵の大将は右端のひときわ高い階層の屋上にいるため、さすがのNo.2も一跳びでは辿り着けない。そこでNo.2は、マンションの背後にある巨大な川の土手を駆け上がり、勢いを付けて宙返りして空に躍り出る。スケートボードかスノーボードの達人の技でも見ているかのようだ。ただし、そのスケールは人智を超えている。

そうして宙返りしたNo.2の狸は、背後の空から敵の大将の喉笛に噛み付いて、一撃で仕留めた。そうして凱旋するNo.2の姿を、狸達の長老は満足そうに眺めている。狸の長老は、背中側は黄色の、腹側は白の毛をまとっており、四足で立っていても、人間の私と同じくらい高さにある、巨大な狸だ。歴戦の強者であり、左目には十字を斜めにした傷があって、隻眼だ。牙も鋭い。この長老自ら戦うのは、余程の相手の時だけだ。

それからまたしばらく進んで行くと、草地に出た。先の大河の河原なのかもしれない。いつの間にか、周囲に狸達は一匹もいなくなっている。代わりに草地に巫女がいた。白衣に緋袴をまとった、紛れもない巫女だ。彼女は、弱っているらしく、草地に半ばへたり込んで、下半身を横たえ、手を草地について、辛うじて上半身だけを起こしている。

私は今にも倒れ伏さんとする彼女を助け起こした。しっかりして下さいと声を掛けた。私の腕の中で彼女は言う、日の神の巫女であると。また、先の狸達は、彼女の眷属らしい。

私は彼女に、もうお止め下さい、と言ったが、彼女は、人々に力を供給し続けなければいけないのだという。彼女の霊力をもってすれば、先の敵など一掃できるのだが、その役目の為に力を振るう事が出来ず、戦いは眷属の狸達に任せているようだ。

気が付けば、私はまた歩き出していた。それは地下通路なのか、地上の河原なのか、よく分からない。地上だとしても、空は暗い。道には小さな石の砂利が敷かれている。ところどころ、砂利がなく、真っ黒な土が、地下から湧き上がって来たかのようになって存在している。これは世界の「穢れ」が溜まったものらしい。

その砂利の道に、三人の初老の婦人方がいる。高級そうなジャケットやスカートを身に着けた、貴婦人方だ。三人ともメガネを掛け、タマネギのよう髪をまとめている。知性は高そうだが、口うるさそうだな、と私は思った。彼女達は、博物館や美術館の所蔵品を眺めながら、それを評論し合うような話をしている。この道沿いにある何か、あるいは道から見える何かを評論しているのだが、それが何なのかは分からない。

----------------

ここで目が覚めた。実家で犬や猫を飼っていたこともあり、犬猫の夢は今までも時折見て来たのだが、狸の夢を見たのは人生初かもしれない。

なお、この夢を見た何時間か前の日中には、「しょう、しょう、しょうじょうじ、しょうじょうじの庭は」という童謡で歌われている「狸囃子」の伝説で有名な、千葉県木更津市の証城寺に参拝した。

画像1

証城寺の狸塚

また、その二日前には、同じく著名な狸の伝説「分福茶釜」で知られる、群馬県館林市の茂林寺に参拝した。茂林寺には「分福茶釜」の現物が保管されており、拝観した。

画像2

茂林寺

また、通常狸合戦と言えば、コミカルな雰囲気が漂うが、今回は終始非常にシリアスな雰囲気だった。

なお、ヘッダー画像は、茂林寺門前の土産物屋。狸しか売っていない。

画像3


サポート頂けると、全市町村踏破の旅行資金になります!また、旅先のどこかの神社で、サポート頂いた方に幸多からんことをお祈り致します!