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ドサクサ日記 4/8-14 2024

8日。
都内で録音。定説というか、スタンダードとされている手法は大事だけれど、それを疑ってみるのも大事で、無視してはいけないが居ついてもいけない、みたいなところが創作の難しさだと思う。スタンダードを突き詰めた美、みたいなものもあるし、破滅的な新発見がスタンダードになったこともある。究極的には、いつかZakさんが言ってくれたように「音楽は何してもいいんだよ」に尽きるんだけれど。

9日。
坂本さんと高谷さんの『TIME』を観劇。観念的で難しい内容だと思う。しかし、この日もたくさんの人が訪れていて、東京はこういう部分では素敵な街だなと感じる。作品には「死」が横たわっているように感じた。老夫は回想のような幻想のような瞬間を彷徨っているように見えた。誰しもが生命の回転のなかで朽ちていく。命における進歩と後退は判別がつかないのかもしれない。「時間の否定」というテーマがあったことが、パンフレットに書かれていた。坂本さんは生前、「時間」ついて深く考察されていたように記憶している。この舞台のなかを右往左往する人物が老夫であることで、凡庸な俺はそこに時間の経過を見てしまう。作品ではなく、私と言う存在、あるいは経験のなかにある観念的で規則的な時間のせいなのかもしれない。存在と時間の経過を切り離さずに考えるのは難しい。笛の音の複雑な倍音で、それはギリギリ雑音ではなく、これは楽器の音だと俺は認識する。そうは思わない人や、文化圏の人もいるのかもしれない。笙の音は柔らかくて美しい。懐かしいような、懐かしくないような不思議な音だと感じる。水が滴る音は、それが何を打っているかで印象が変わる。流れる水の音には癒されるが、雨が人生とその背中を冷たく打つこともある。死後には、時間を自由に行き来できるのだろうか。

10日。
いろいろ面白い町とコミュニティを見学。どこの町でも、商店街などの古い物件をぶっ壊して宅地にするという流れがある。文化的な価値とか、町の歴史とその文脈を分断するように真新しい住宅地が造成されたり、宅地への転用を待つべく駐車場などにされている。高齢化と少子化と過疎で人がいなくなった先に、個別で無個性の住宅街が取り残された風景を思う。バキバキと建物を壊して、そのほとんどを廃棄物にして、新たに山を削り木を切って家を作ることの環境負荷。スクラップビルドで懐が潤っても、文化的な魅力まで壊してしまってどうすると思う。そういうことに敏感な若者はどこにでもいて、会うと安心する。建材にではなく、人件費ばかりにお金を使う建築家にも会った。消費しないことは大事だ。金銭を払って消費者になるのではなく、俺は参加者になりたい。そういう暮らしもある。

11日。
領収書をくださいと伝えると、ペンとメモ用紙をバンッ!っと机の上に叩き置かれてしまった。とてもびっくりして、同時に腹が立ち、「そういう態度はどうかと思いますよ」と販売員に抗議せざるを得なかった。何か腹が立つことがあったのかもしれない。商品を買っている側のほうが関係性として上、みたいな気分はまったくないけれども、さすがにこれはないと感じて「普通にしてください」と伝えた。

12日。
NPO設立のための総会に参加。今、自分が仲間たちと始めようとしている活動は、見返りを求めないGive=贈与のような活動にしなければ、持続可能性が下がるだろうと思う。しかし、世の中的には、ビジネスとしての収益性が持続可能性と直結している。お金がないと止まる。清貧をうたって、敵視すべき存在でもない。でも、資本主義とは違った、違うエナジーの集め方について考え続けたいと思う。

13日。
Spotifyが再生数1,000回以下の楽曲に報酬を支払わないという制度改変のニュースを見た。なかなか厳しいことだと思う。今やなくてはならないサービスだけれども、配信サービスの規定やアルゴリズムに振り回されるのはしんどいなと思う。だったらいいやと作品を引き上げることで閉じる可能性についても考えてしまう。音源制作には時間もお金も労力もかかる。中指を立てて終われない。悩ましい。

14日。
電気屋で掃除機を買った。自分の好みのデザインと吸い込み力を天秤にかけると、家電選びは大分難しくなる。オシャレでスマートなのに塵や埃を良く吸うとか、流線型で小さくて格好良いのに米が5合も炊けるとか、デザインと機能が両立しているものは少ないと感じる。ダイソンは、なんでそういうケバい色やねん、という気持ちになる。もうちょい、シックでシンプルなデザインであってほしいと思う。しかし、ダイソンはいかにも吸いそうな見た目をしている。「いや、僕は吸うことだけを考えてこの色と形なので、シックとか言われましても」みたいな掃除機であることは承知しているが、色は吸い込む力と関係ないだろうと、俺は思う。相撲で言えば、紫のまわしというのは高貴な色で横綱しか締めることができない。「最高に吸うので紫です、ごっつぁんです」というわけではないだろう。外国の製品だし。