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ドサクサ日記 3/25-31 2024

25日。
静岡は藤枝へ。アーティスト支援型のスタジオ作りも、ひとつめの山場だと思う。素敵な支援者たちに囲まれて、物件のところまでは辿りつけた。しっかりとプランを練って実現させたい。しかし、本当に、音楽スタジオというのは造るのにお金がかかって、面積の割に儲からない。維持費も必要。というわけで潰れることが多いのだけれど、黙ってそれを見ていると録音文化が細って、機会が開かれず特定の人たちのものになってしまう。プライベートスタジオは大小問わず百花繚乱の感もあるけれど、そういう場所やラップトップでできることと、ドラムが録音できるスタジオでできることに違いがある。サンプルがあれば格好いいビートは組み上げらるけれど、録音する以外にない演奏ならではグルーヴとその記録もある。そういう音楽体験が多くの人に開かれるような場所にしたい。大変だけど頑張りたい。

26日。
音楽をひらすら何時間もかけて聴いた。愛好家のひとりとして聴くぶんには単純に楽しいだけだけれど、職業の耳で聞くと気力も体力も使ってぐったりする。まあでも、それはそれで楽しくもある。音色が気になって仕方ない音楽もあるし、歌詞に耳が行く音楽もある。ここがすごいなと思うところと、俺だったこうするなとか、ファンとしての視点だとここはこうして欲しいなとか、いろいろなことを思う。自分のなかに複数の視点が見つかって面白い。それは繋がっているようで分裂しているし、分裂しているようでどこか繋がっているようにも思う。ファンとしてはもっとわかりやすくして欲しいなと思うアレンジも、自分がやるとなるとそういう選択ができるかどうかは分からない。やっぱり凝っちゃうよねーとか思う。自分の多面性というか、作品との関係をいくつも見つけられるのは、楽しいことだと思う。

27日。
『Recent Report I』というアルバムをリリースした。これは個人的な手紙のような作品で、音楽というかたちで実現させないと、どうしても次に進めないような気持ちがあったので、一年じっくり考えてから録音とミックスを行った。仕上がりについては、これが自分の精一杯の近況報告だと思う。好きなところも、もうちょっとできたかなと思うところもある。日によって感じ方が違うのが、こういう音楽のいいところではあるのだけれど。Apple MusicではDolby Atmosで音源を聴くことができる。他のサービスのバイノーラル音源よりもはるかに立体的なので、できたらそっちの仕様で聴いてほしいなと思う。ただ、体験できないひとが多いと思うので、どこかで立体音響として展示できたらと考えている。前後上下、様々な方向から音が聞こえては消えていく感じなので、きっと面白い体験になると思う。

28日。
朝から取材。そして会議。音楽について話すのは難しい。というか、何についても話すのは本来難しいのだと思う。その難しさと向き合って、言葉として記録したのが人類の歴史でもある。書き留めなければ、残らない。ただ、音楽はそれそのものが言語として記録可能になっている。録音物は、その音楽が言葉で語られる可能性を未来に拓く役割を担っている。もしかしたら、今を生きる僕たちにはその魅力がわからないかもしれない。というか、時代や社会との関係のなかで、新しい魅力が立ち上がることもあるだろう。現在は過去からすると未来なので、私たちは未来を生きているとも言える。過去の作品の新しい魅力を、現在に見つけることも可能なのだ。音楽をやったことのない人にだって、音楽の魅力を語る力はあると俺は思う。むしろ音楽を作ったことで、ある種の魅力から遠のいてしまうこともある。

29日。
ゲストハウスを見学したり、エンジニアと音楽について話し込んだり、とにかくよく話した1日だった。面白いことをしている人はどこにでも居て、そういうひとたちのローカルな、身の丈の活躍の話を聞くと楽しい。たったひとりだとその場所限りでも、人が関わることでそのスペースが広がる。自分の人生は結局、身一つのローカルなわけで、俺の幸福もまた身一つなのだと思う。グローバルのような考え方が、私たちを連帯させてくれたり、立ち上がるときの支えになってくれたりする。一方で、日本の田舎町のどこに言っても、同じような商業施設によって風景の均一化が起こっていると感じる。住民もそれを望んでいる。欲望もまた、グローバルみたいな考え方で配布されているので、黙って受け入れているとそれを自分が望んでいるように思い込んでしまう。まとまらないけれど、ローカルについて考えたい。

30日。
台湾は高雄へ。高雄暑い。そして熱い。フェスまわりをぷらりと歩きつつ、Fire EX.の事務所兼スタジオへお邪魔した。皆とも談笑。それなりに疲れがたまっていたのでしばし休んでから夕食へ。東京酒場という日本風の居酒屋で台湾料理を食べた。甘くて不思議な味のマヨネーズの料理にはもれなくカラースプレーが乗っていて謎だった。日本のマヨネーズは世界一美味しい。台湾ビールは温くても最高。

ホテルの近くの牛麺店。大人気で行列が絶えない。味はさっぱりしていて美味しい。麺はツルツル。

31日。
高雄の街を散歩。狭い路地を歩くと、サバのような魚を背骨ごとぶつ切りにしたような料理を食べている人たちの店があったかと思うと、その先にオシャレなロースターや雑貨屋が点在していて、面白いエリアがあった。肉の吊るし切りをしていたと思しき市場が改装されて、素敵な商業スペースになっていた。そこらでアートに関するポスターや告知も見かける。パッセンジャーなのでざっくりとしたことしか言えないが、良い街だなと思った。フェス会場はとても暑かった。ZAZEN BOYSがとても格好よかった。俺たちの出番では、ステージのモニター卓が壊れてしまって、復旧に時間がかかった。アジカンのスーパースタッフたちの活躍で10分押しで始められた。居なかったら出演ごと飛んだかもしれない。音止めの時間がきっちり決められた場所だったので数曲削ったのは残念だけれど、良いフェスだった。

古い街の狭い路地を歩いた。オシャレなエリアを発見。古い店と新しい店が混在していて面白い。
市場のようなところがリノベーションされている。中にはいろいろな飲食店が並んでいる。
併設された公衆トイレがとても綺麗。
何らかの台だけど、おそらくお肉の吊るし切りなどをしていたのではないかと思う。
入口あたりには優しい笑顔のマダムが営む肉屋が営業していた。
楽屋エリアに昔の高雄の写真が展示されていた。写真家の名前をメモするのを忘れてしまった。