はじめてのソールドアウト。
シンガーソングライターの後藤大です。
コロナ禍でライブ活動を再開して約9ヶ月。悩んだり迷ったりしながらも、その中から信じる気持ちや希望を見つけるように歌ってきました。そして先日の主催ライブで、人生はじめての「ソールドアウト」という結果にたどり着くことができました。本当にありがとうございます。
どうせならおもしろがる
この日は諸事情で、AZYTATEのスタッフが不在の状況での開催。本来ならイベントが延期になるところ、店主のよっくんが僕たちのイベントに向けての活動を見ていてくれて、「この日だけは延期にするのは違うから」と外注で音響の方を派遣してくれて開催することができました。
更にCOLORS TO COOKS(以下、カラクク)のサポートメンバーが、濃厚接触者になり参加できなくなったりと、波乱のイベント幕開け。
でも、不思議と不安や不満はなく、むしろ「この状況だからなれる気持ちを、しっかりと味わって楽しみにしてしまおう」と思っている自分がいました。
コロナ禍でのライブ活動はもちろんですが、プライベートでも考え方を大きく変えるきっかけがあり、そこから少しずつ「どうせなら物事をおもしろがる」ことができるようになってきた。その成果をここぞで出せたのだとしたら、ちょっと自分が誇らしいです。
頼りがいのないリーダー
イベント前のコラボ配信でも、カラククのボーカルの稜くんに「リーダー感が出てきた」と言ってもらったのですが、もしかしたら考え方の変化が伝わっていたのかもしれません。
リーダーというのは「頼りがいのある人」がなるものだと思っていたけど、「みんなで目的地にたどり着くために、同じ方を向かせてくれる人」なのだとしたら、「頼りがい」とは違う要素で僕でもリーダーになれる。
少し話は飛びますが、ライブ中にある感覚が体中を巡っていました。
「テンションが上がる」でも「お腹が痛いぐらい笑う」でもなく、「冷静なのに幸せが体をまとっている」感覚。実はそれを感じるのは7~8年ぶりでした。嬉しかった。ずっとずっとそれを探して歌ってきたから。もうなくしてしまったのかもと苦しんでいたから。
みんなで同じものを共有して、それぞれが幸せを感じる。みんなの幸せが空間を埋め尽くす。それに包まれている感覚が、あれの正体なのだと思います。
イベントをいい日にしたいと本気で思ってやってきた過程。単純に後藤大とカラククの音楽、トラブルも含め、色んな要素が重なって、全員が「このイベントができて幸せだ」と感じていられたのでしょう。
ここまで後藤大の活動がみんなの楽しみになれるように、SNSや配信、ライブでの気持ちの持ち方や、言葉の伝え方も考えたりしました。プライベートでも自分がその役割を担う場面がありました。
「ついて来い」じゃなく、「ひとりじゃできないから、一緒に来てほしい」と言ってきました。頼りがいはないかもしれないけど、その結果みんなが「イベントがあってよかった」と言ってくれた。間違いじゃなかったと思っています。
自分自身、共演者、スタッフ、そしてお客さんの、「そこに行きたい理由」を見つけたり、作ったりできるリーダーでこれからも在りたいです。せめて音楽活動をしている間だけでも。
ソールドまでの軌跡
この2マンを発表してから当日までは、約2ヶ月半でした。だけどこの気持ちやソールドアウトという結果は、2ヶ月半で成したものではありません。
・再始動のきっかけ
2021年の8月に後輩のGIMMICK_SCULTがイベントに誘ってくれたことで活動を再開できました。またやるか、まだ止まっているか曖昧な時期でしたが、「コロナ前になくなったイベントに呼び直してもらえた」のをきっかけにGoサインが出せました。
・集客0人
先輩ミュージシャンのmiyabiさんの主催ライブに出演したときのこと。この日ひとりもお客さんを呼べず、現状に打ちひしがれました。配信で少し卑屈な言葉を口にした記憶があります。
でも当日、イベントの空気がすごくよくて、ライブ自体は本当に楽しくて、miyabiさんも「呼んでよかった」と言ってくれました。そこで思ったんです、「時間はかかっても、結果でお返しできる人になろう」と。それからは卑屈になりそうになっても、グッとこらえて違った視点を探すようになりました。
・具体的な目標があるから
そしてライブ再開一発目の主催。安西彩矢とのバンド2マンライブ「すまいるぱんでみっく!」。ここから大きく動きだしたことが多かった。
コロナ前からライブ活動を減らしていたせいもあって、目標を持ってチャレンジすることが怖くなっていました。お客さんを呼べなかったらどうしよう。今はバンドでやったら赤字になってしまうから。「できない理由」を次々に見つけては小さくなっていました。ずっと「これじゃよくない」と思っている自分がいて、そこに安西が2マンの話を持ってきてくれました。
ぼんやりと「またファンのみんなと楽しめるように」と言って配信をやっていたけど、そんな曖昧なものじゃなく具体的な目標を決めて、そこに向かっていくほうがリアリティーも体感も生まれる、きっとそうじゃなきゃダメだ。と思いその話に乗っかりました。勇気を出すきっかけでした。
・目標、現地に10人以上
「現地に10人以上の人に来てもらえるようになる」。その目標を掲げたのもこのときです。10人というのは、インディーズミュージシャンにとって重要な「鍵」なのです。
コロナ前でも、これだけの人に来てもらえれば、いいイベントに入れてもらえていたし、ワンマンやイベントもなんとかできる。ひとりじゃ開けられない扉を開けて、みんなでいい景色を見れるようになりたい。
配信もあるけど、生のライブを再開したのならまずは現地にこれだけの人に来てもらえる活動をしたいと思ったし、ここまでライブをしてきて直接音楽で笑い合える喜びを思い出してしまったら、やっぱりこれにこだわっていきたいと思った。
生のライブをやる以上、直接聴きに来てくれる人がいるから意味が生まれる。聴きに来てくれる人のおかげで、配信にも素直にありがとうと思えています。
そして3月のイベントでは、惜しくも8人でした。届かなかったけど、何よりも「また目標を掲げて本気で日々を生きられた」という実感が持てたことが、一番大きかったです。
・たしかに好きになってくれる人がいる
少し時をさかのぼって、1回目の主催前のライブ。元々はファンで、今は音楽活動をしている前田葵ちゃんの企画に呼んでもらったときのことです。
葵ちゃんは音楽活動を始める前からライブを見に来てくれていて、今でも後藤大の音楽をいちファンとして好きでいてくれています。
だからこそ、言い訳ばかりしている自分では、胸を張って「ありがとう」と返せませんでした。でも、3月の主催に向けて少しずつ心に火が灯って、このライブに出演する頃には、「尊敬してます」と言ってもらっても恥ずかしくない自分でいようと、前を向けていました。
そしてこの日の手応えに、「あ、歌えば好きになってくれる人がいるぞ」と思うことができたのです。当たり前のことなのかもしれませんが、うまくいかない時期に自分の中に「誰にも届かないんじゃないか」という傷がついていました。
きっとこの日単体でなく、それまでの活動で出会ってくれた人の笑顔や気持ちが重なってのことですが、ここでついに堤防が決壊したのだと思います。「ここに好きになってくれる人がいるかもしれない」と信じて歌えるようになりました。
この時期プライベートでは仕事を変えるために、面接に落ちまくっていたことも大きいと思います。「自分の持っているものを必要としてくれる場所が絶対にある」のを前提にいたほうがいいと考えるようになっていたから。
この前提を持って変わったのは、ライブをしてCDが売れなくても、チケット予約がすぐに来なくても「ちょっとでも気になってくれる人がいるなら上出来」と思えるようになったことです。信じているから、ゆっくり好きになってくれる人もいるはずだって。
・ソールドアウト
そして再始動から2度目の主催ライブ。カラククとの2マンを決めてから2ヶ月半。ここまでで得たものをもって、とにかく地道に積み重ねをしてきました。
基本的には毎日配信で歌いながら、月2回ほどのライブ。出会いの数で言えば圧倒的に足りない中でした。前日まで目標に届かないかもしれないと不安でした。でも信じてやり続けたその向こうに目標の10人以上達成、イベントソールドアウトという結果がありました。
大きな転換になったライブだけを書きましたが、ひとつひとつのライブでの出会いや、苦戦や、見に行く側でもらったものがあってのものです。
miyabiさんの主催で結果を出せなくて絶望したあの日。安西との2マンで一度到達できなかった事実。想いや過程に言い訳しないで求めてきたものがそこにはありました。やってきたことは間違っていなかったのだと、結果で見せてもらえて、勇気や希望、ここから先の兆しを持つことができたのでした。
ゴールをスタートに
ここまで、ライブ活動再開から目標達成までのことを書いてきましたが、もちろんこれが終わりではありません。また、次の主催ライブを決定しました。
次はこの日に向けてまた日々を積み重ねていくわけですが、今回はいったん「目標まで何人です!」と言わずにやっていこうと思っています。
先ほども言ったように、達成した目標はこれからも楽しいことをやっていくための「鍵」です。ここまでで僕は「本気でやれば鍵を手にすることができるんだ」と知ったところです。そう、「鍵を手にすること」が目的になってはいけないのです。
次は「いつでもこの鍵で扉を開けられる状態」になることが目標です。主催だけでなく、ライブハウスや他のミュージシャンに誘ってもらったイベントでも、「後藤大がライブをするなら行くよ!」という人が10人を超えるように、まず9月のイベントは数字を言わずに結果を出したいと思っています。
抱負はすぐに忘れるといいますが、2022年の抱負「楽せず楽しむ」は今も継続中です。楽ではないけど楽しく「音を楽しむことを活かして動いていく」には結果を見て見ぬふりしないことです。数字のことを考えるのは苦手だけど、それを本気で考えることがみんなとの楽しみにつながるはずだから、6月4日のソールドアウトをまたスタートラインにして行きます。
ひとりでは行けません。一緒に来てくださいね。
あらためて、ライブ再開からソールドアウトまで、後藤大に関わってくれたみなさん、ありがとうございます。ここからもよろしくお願いします!
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