北海道地震日記2日目

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 前回の日記になかった物理的被害の一覧

<家の中のもの>
・ガラスのコップ×2
・ビアジョッキ
・陶器の丼(地震収まったあとに棚を開けたら上から降ってきた)
・本棚(板が外れて変形)
<マンション全体>
・自転車置き場の壁に30cmほどのひび

 しかし本棚そのものが壊れるとはなあ。寝室に置かれていることもあり、これのみ強力な転倒防止シートをひいた。だから棚が動かなかった代わりに、変形したのだろう。我々の身を守ってくれてありがとう、本棚。

さて、
2日目・2018年9月7日(金)の日記

「血がでたよー」という息子の声で目がさめる。ファッ! と起きると、鼻血! この人は寝ぼけまなこで鼻をいじる癖があり、時々こうして出血するのだ。なんとかティッシュで止血するも、パジャマとシーツに血がたれる。それぞれの予備はあるけれど、即座に洗濯しないと汚れが落ちないよなあ……と洗面台でざっと洗う。シーツとベッドパッドを交換して、朝ごはん準備。

 冷凍庫を覗くと丁度いい感じに食パンが解凍されている。なにかしら加熱したいが停電でオーブントースターは使えない……とフレンチトーストに。250mlの豆乳をあけ、砂糖と卵を加えてまぜる。常温でも大丈夫な豆乳パックは停電時に牛乳の代わりとして大活躍するのだ! これはいい発見。食パンを卵液にひたし、大変柔らかくなったバターをたっぷりひいて焼く。ぬるくなったベーコンも焼き、溶けかけの冷凍ラズベリーをのせる。メープルシロップをかけて完成!

 わははは! いつもの朝食より豪華じゃん。辻さん(夫)が「白くまアイスバーは溶けちゃったかな……」と寂しげにきくので、冷凍庫をのぞいてみるとほぼ液体。そのまま食べるのもなんなので、冷凍ラズベリーと合体すると酸味と甘さのバランスがちょうどよいデザートになった。ただ非常時の対応をしただけで、こうなるとは驚きである。

 職場の電気が完全復旧したこともあり、今日の辻さんはフルタイム出勤。2つあるモバイルバッテリーの1つを充電してもらうことに。今日の日記に写真が多いのはバッテリーを気にしなくなったからである。ありがとう辻さん職場! これだけで大変心が楽になった。スマホ充電できる手立ては災害時に必須だ。食料事情が不安定なので大きなバウムクーヘンとゆで卵2個、ペットボトルのお茶とアイスコーヒーをお弁当としてもたせる。なにかあった時の避難場所を確認して彼を送り出す。仕事がんばれ辻さん。

 さてここから、停電ワンオペ育児である。本来なら幼稚園の親子観劇で泣いた赤鬼を観る予定だった。しかしJRも地下鉄も動いていないし、園も停電なので当然中止。通園バスが来る時間に非常階段をゆっくり降りて、公園で砂遊びを開始する。砂遊びのコツは大人も本気で遊ぶことだ。靴がすぐビショビショになるので晴れていても長靴が望ましい。万全の装備で臨めばあっという間に時間がすぎる。9時前に近所のドラッグストアが開店するなあ、息子の夜用オムツのストックがないのどうしようかなあ……と「夜オムツないけど、寝る時もパンツはく?」と本人に相談。それは嫌ですとの回答を得たので、遊びを切り上げて買い出しに。マンションにもどり自転車に乗って出発! 開店前に到着できたにも関わらず、長蛇の列がそこにはあった。うひゃーどこにいっても行列だぜ! 息子を飽きさせないように、空飛ぶヘリコプターを指差したり、赤トンボを観察したり、後ろのおばあちゃんと世間話をして3〜40分、やっと入店できた。

 ここもまだ停電しているので、レジが動かない。昨日のコンビニのようなハンディのバーコード読み取り機をつかっての会計だ。会計場所が2つしかないので入場制限をかけて、2〜30組ほどが常に入っている感じ。1組出れば1組はいる。店員さんに話をきくと大量に落下した商品を片付け、元に戻すのは大変だったらしい(特にワイン!)。
 しかしそのおかげで、薄暗いながらもいつもと変わらない大型ドラッグストアだ。この日常的な空間! ずらっと並ぶ大量のオムツ! これが人間ならば惚れてしまいそうなほどの安定感。感動した。ここにきてよかった。夜用オムツの他にもトイレットペーパーや洗剤、頑張った息子にはおやつを購入し店を出る。
 子乗せ自転車に荷物をぶらさげている姿が「いかにも」な感じだったのか、すれ違ったご婦人から素敵な笑顔で会釈される。いいのです、The主婦って感じでも。私は今を楽しんでいるのです!

 荷物をかかえて非常階段を登り、部屋に到着。ああー今日の仕事をやりきった! と言いたいがまだ午前中。「お腹減ったー」の合図でホットケーキ作りを開始する。大きなジップロックに粉と卵、豆乳は朝使い切ったので水を注ぎ、息子にもんでもらう。だいたい生地が混ざったら、朝よりゆるくなったバターをフライパンにたっぷりひく(せめてもの乳成分)。温まったフライパンを濡れ布巾の上にジュッと置いて冷まし、またコンロへ。袋の端を切って生地を絞り出す。

 できた。ボウルを洗うのがめんどうだなあ&息子も調理に参加しやすかろうと思いつきでやったけど(たぶんネットにはこのやり方がごまんとあるだろう)成功してよかった。朝から甘いものばっかり食べてる気がするけど、非常時だし楽しい方を優先しよう。ホットケーキは大人も子供も大好きさ!

 食器を洗っていると「動画かルパンレンジャーがみたい」との要望がくる。いつも家事の時、それらに息子の面倒をみてもらっていたからだ。しかし停電の今、それはできない。スマホもyoutubeがみせられるほどのバッテリーと電波がない(この時かなり通信速度が遅くなっていた)。レゴはどうですか? 久々にピアノで遊ぶとかは? などと提案しても「嫌だ」の一点張り。確かにここまで彼なりに頑張ったもんね。非常事態の中で我慢もしたよね。と泣き出す彼をだっこする。こういう時こそしっかり遊んであげたい……しかしいつもより時間のかかる家事を放置すると、より後が大変になる……。分身の術が使えたら、どれだけいいだろう。

 動画やテレビは停電でみえないことを伝え、そこは納得してもらう。おそらく去年ならばこれはできなかった。ああお兄さんになったなあ。嗚咽しつつも「レゴでバイク……」との要望がきたので、よしきた! と家事放置でバイク作り。タイヤをつければ即完成する車より面倒な二輪のバイクだが(自立しないと怒られるのだ)、最近構造をマスターしたのでなんとか作れる。大変なのは大量のレゴパーツから欲しい部品を探し出すことだ。ヘッドライトやテールランプにキラキラのクリアパーツをつけてかっこよさを演出する。

 できたー! 息子も笑顔になってきた。ここからさらにオリジナルの改造を彼が加え出したところで、そっと席をはずし食器洗いにもどる。

 レゴに集中している隙をみて、完全には洗えていなかった鼻血シーツを洗面台で手洗いする。シーツはまだ大丈夫だが、ベッドパットは分厚くて曲者である。いろいろ考えたすえ、バスタブで踏み洗い。水が冷たい(ガスコンロはつかえるけどお湯はでないのだ)。これで風邪引いたら完全に阿保だなと顔が半笑いになる。しかし替えは1組しかないので明日鼻血やおもらしが発生するとアウトだ。いつ電気が復旧するかもわからない。ああー! と踏む力も強くなる。もっといい方法もあったと思うが、こういう時には頭が働かず、いつもの習慣に固執してしまう。なんとか干す。無駄に満身創痍です。

 息子はまだ元気なので、晩御飯前の仕上げにまた公園で遊ぶ。今度はボール遊びと鬼ごっこ。走り回ったあとは鉄棒。子供のころは平気だった前回り、一回転するだけで頭がグワングワンになる。大人の三半規管! 体力は削られるけど、閉塞的な家よりは気分がいい。いつも行く公園にもなにかしらの変化はあって、今日は名も知らぬキノコをたくさん発見した。よくみると階段の下や草の中にも群生している。地震のあとにキノコ! なんか俳句になりそうだな。

 帰宅して、真っ暗になる前に洗面台で髪と顔を洗う。水が冷たい。でも汗かいたからすこし気持ちいい。やかんに湯をわかし、お湯を水で割って体をふく。今日は面倒臭くて、母は台所で裸になりましたよ! あはは。息子の体もふく。麺やパンに飽きたので、はじめて土鍋で米を炊く。失敗が怖いのでわずかな電波で作り方を調べる。ご飯を炊きつつ、豆腐とわかめの味噌汁を準備し、麻婆茄子の材料を切る。土鍋からでる蒸気が「豊かな生活!」を訴えてきて妙におかしい。

 辻さん帰宅。夕飯の仕上げをする。

 できたー! 土鍋ご飯は最高においしかった。おこげもまたいい風味。ちゃんとレシピ通りに作ったのが功を奏した。あまったご飯を塩むすびにする。疲れてぐでぐでになった息子を寝かしつける。
 ほっと一息ついたところで外をみると、近所が明るい。もしやとブレーカーを上げると電気がついた!!!!!!

 文明の光!!!! 辻さんとハイタッチする。まだエレベーターは動いてないようだけど全然いい。テレビみえる。お湯でる。トイレの便座もあったかい。最高である。また職場に戻る辻さんを見送りつつ、大人ひとり子ひとりの夜も怖くないと思う。冷蔵庫を復旧させるために中の食材を整理して、アルコール除菌。大掃除気分でピカピカにする。がらんとした庫内に不安ではなく気持ち良さを感じる。

電気がついた瞬間に動物的な鋭さが完全に失われ、頭がゆるゆるになる。あーーーもうなんにも考えられねーーーー! と思いつつも日記をnoteに公開。辻さんが23時頃帰宅し、先ほどの塩むすびを食べる。これ以上ないくらいおいしい夜食だった。

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後藤グミ

ゴトーの漫画と日記

日々思いつくあれこれを漫画や日記にしています

コメント9件

>山中龍之介さん
このあたりのTwitter議論は不毛だなあと思っていて、結局自分はどうすればいいかを色々な角度から検証して実践するしかないと考えています。もちろんできることに限界はあるのですけど、家族とどうするのが「我が家にとってベストか?」を話し合う機会が持てたのは大きな成果でした。
>後藤さん
度々の返信ありがとうございます。以前にTV番組ケンミンショーで「北海道の人は冬、暖房をめちゃくちゃ暖かくするので部屋の中では暑くてTシャツで過ごす」という話を聞いて北海道の知人に話したら「それは金持ちだけ、うちみたいな貧乏人には無理な暖房の使い方」と言っていたのを思い出しました。私も我が家にとって何がベストかを考えるって大事なんだなと思いました。余震を考えるとロウソクも危ないって聞きますし。じゃあどうせーっちゅーねん!ってなっちゃいそうです。
こんにちは、同様に被災していた道民です。お子様のいるご家庭は本当に大変だろうなあと思っていました。ジップロック袋でホットケーキ、いいアイディアですね!
電気が開通した瞬間の安心感がものすごかったのを、記事を拝見していて思い出しました。オデッセイ精神、私も見習いたいです。
コメントありがとうございます!
危機的状況な時こそSFをはじめとする物語が救いになるのだなあと思いました。実用的な災害知識と心の持ちようの物語。この両輪でこれからも過ごしたいと思います。
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