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ウェブ解析を巡る連想 Vol.1 ~  ”Web Analytics” からはじめる

2020年5月、コロナ禍によって自由な時間が増えたので、長年ウェブ解析の実務を通して考えてきたことを、記録するつもりであてどもなく書き連ねてみようと思う。

独り言とはいえ、今まで積み重ねてきたものをひととり吐き出せば、ウェブ解析の初心者やウェブマーケティングのおさらいをしたい方には、「なんだか頭の中の整理になるかも」と感じてもらえるものではないかという色気もある。でも、用語の解説や技術的な解説は極力書かない。それらの情報はウェブ上に腐るほど溢れているので、解析を真剣に身につけるぞ!という意気込みがある方にはそちらをお勧めする。

まず初回は「ウェブ解析」という呼び名に触れるところから始めたい。
GoogleのエバンジェリストであるAvinash Kaushik著による「Webアナリスト養成講座」(翔泳社)が日本で発刊されたのが2009年7月。まさにウェブアナリストのバイブル的な著書である。Web Analyticsは1990年代にその原初が見られたというが、Google Analyticsが誕生したのが2006年だから、いずれにせよこの十数年に飛躍的に広まった若い分野である。90年代半ばにWebカウンターが広く使われた(これもAnalyticsの歴史に含まれる)が、私が年配の方に職業は?と訊ねられて仕事内容を説明しても、相手が???となることが多く、最近まで「インターネット上の交通量調査です」とお茶を濁すのが一番納得してもらえた。この意味で「アクセス解析」という呼び名はある面正しいが、これではウェブ解析のごく小さな部分だけを取り上げているので、面倒くさがりの私の短絡的な説明と同じだ。

ところで細かい話だが、ウェブ解析の英訳はWeb Analysisであって、Web Analyticsではない。Analyticsの日本語訳は本来は「分析論」であり、分析の方法論を意味する。しかし、前著にて恐らく初めて公式に、Web Analyticsをウェブ解析と訳している。この時日本でもウェブアナリストという職業が誕生し、私は自分のしてきたことの職名がそう呼ばれることを初めて意識した。ちなみに著書には、米国のWeb Analytics協会(現在はDigital Analytics協会)がWeb Analyticsを次のように定義していると記載されている。

「Web Analyticsとは、WebサイトとWebマーケティングにかかわる判断を最適化するために、数値化できるインターネットデータを客観的に追跡、収集、測定、報告、分析することである」

この定義は今でも通用すると思うが、社会そのものがDX(Digital Transform)化の大荒波に晒されている現在、チャネルは急速かつ複雑にマルチ化/オムニ化している。協会がWebからDigitalへ改称した思惑の通り、デジタルマーケティングにおけるAnalyticsの位置づけと機能の拡張は急務である。現状では、ホームページ担当と一見役割が限定されつつあるように見えるWeb Analyticsではあるが、本筋では将来的なDXのプラットフォームの解析を担うことを見据えるべきだ。しかし、肝心の足元のWeb解析ツールの進化にもどかしいものがあるのも確かだ。

Google Analytics 360(GA)は、無償版ならまだ許される機能の未熟さも、有償版でもこの程度かとイライラさせられることが多い。もともと直感的に操作できて初歩的ユーザーにはフレンドリーなGAだが、プロとして大量で複雑な分析を実践するならば、現段階でAdobe Analytics(AA)には到底及ばない。Googleがぐずぐずしているはずはなく、DX社会に対応したAnalyticsの構想が私の想像の遥か先を行っているのは間違いないが、足元のGAの拡充にも手を抜かず、スピード感をもって取り組んで欲しい。  [ 続く ]

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