覚えようとするだけでは意味がない

覚えようと頑張っているのに…


行政書士試験や司法書士試験のように、マークシート式の出題が中心の試験は、最後は「記憶勝負」であることは間違いありません。

そのため、テキストの記載内容をしっかりと覚える。
ここに集中をする。

テキストを覚えるために、ラインマーカーを引いて、何度も読み込んで。
丸暗記にならないように、きちんと内容の理解もして。
それでも、なぜか試験で点数が取れない。

これは、当該工程が「理解」→「記憶」というプロセスを辿っているだけであり、肝心の「想起」するという部分が欠け落ちているからです。

インプットとアウトプット


受験勉強において、「理解」→「記憶」というプロセスを「インプット」といいます。この工程は、試験対策上、当然ながら重要なものです。

もっとも、本試験においては、インプットした内容を、正確に「想起」することが求められます。

受験勉強において、「記憶」→「想起」というプロセスを「アウトプット」といいます。実は、この部分が一般的に軽視されていることが多いのです。
「理解」→「記憶」までいった知識を、「想起」するのなんて簡単だ。そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、ここには大きな隔たりがあるのです。

忘れたとはどういう状態?


人間の脳はとても高性能で、一度「知覚」・「記憶」したものは、よほどのことがない限り、そのまま残っているそうです。つまり、「理解」→「記憶」したことは、実は、1回で頭の中自体には入っているはずなのです。

それでも、なぜか思いだすことができない。
人は、これを「忘れた」と表現します。

忘れた知覚・記憶は、、あるきっかけがあると、いきなり思い出されることがあります。これを、走馬灯のように…と抒情的な表現をされる方もいらっしゃいますね。ふとテレビのCMを見ていたり、雨宿りをしているとき、はたまたコーヒーの香りをかいでみたときなど…。

あらゆる出来事が、「記憶」のトリガー(きっかけ)となり、いきなり思いだされる。そんな経験をしたことが誰もが一度はあるのではないでしょうか。これが、一度「知覚」・「記憶」したことは、なかなか忘れないことの証明でもあるわけです。

つまり、一般的にいう「忘れた」というのは、「記憶」を引き出すきっかけがない。こういう状態のことを指すわけです。

逆に言えば、「記憶」は、引き出す訓練(つまり、引き出すきっかけを何にして、何を思い出すのか意識すること)をしなければ、「想起」まではいかないということです。
(ゴロ合わせは一番イメージがわくと思います。あれは、まさに記憶を引き出すきっかけとなるようなフレーズを作り、そこから必要な知識を引き出しているわけですから、想起に重点を置いた素晴らしい学習なのです。)

テキストから、目線を外してみてください。
テキストの内容は理解できたとします。テキストに記載されていることは理解できている。それでは、その理解から、「記憶」を引き出せますか。理解はしているのに、肝心の結論が出てこないということはありませんか。それは、「想起」をするという訓練が圧倒的に足りていないということです。

本来、試験勉強においては、「想起」をする訓練を中心にしなければならないはずです。

問題を解くというのは確認にすぎない


ここまで出来たら、最後に「確認」です。

「理解」→「記憶」→「想起」のプロセスが淀みなく繋がっているか。
その「確認」を問題集などを通して行ってみてください。上記のプロセスが辿れている方は、問題のキーワードが浮き上がって見え、そのキーワードから、「記憶」を「引き出し」、解答ができるはずです。

これが、学習の基本です。

なお、「問題を解く」=「アウトプット」というような理解は、間違いです。「アウトプット」とは、前述したように、「記憶」→「想起」をすることです。問題を解くというのは、「記憶」と「想起」の確認をしているに過ぎません。したがって、いくら問題を解きまくっても、問題が解けるかどうかの「確認」にはなりますが、「想起」をする訓練にはなりません。つまり、問題を解くだけでは、何の訓練にもなっていないのです。

大切なことは、「記憶」してあるはずのものを、どうやって「引き出せば」いいのかということを考える。これが学習の中心であり、一番苦労をしないといけないことです。ここに気付けば、少なくとも、択一式中心の試験は、絶対に合格点を取ることが可能です。

学習の方向性だけは誤らないようにしてほしいと思います。

訓練とはきついものである


このようなことを書くと、必ずといっていいほど、以下のような相談がきます。(特定の誰かを指しているわけではありません。あくまで一般論です。)

「想起」の重要性はよく分かりました。
でも、講義の中の理由づけなどはよく理解できるのですが、そこから思い出すのに時間がかかるんです。そのことを意識すると時間がすごくかかるし、とても大変です。思い出すということが大事なのは良く分かりましたので、何か上手いやり方。方法を教えてください。


気持ちは、すごくよく分かります。

これが前提です。色々な事情がある中の勉強です。そういった事を考えるなというのが無理な話です。ですが、この相談は、「想起」の重要性が分かっただけであり、「想起」には「訓練」が必要だということを分かっていません。

例えるなら、42.195kmを走りきるために、最も重要なことは何かということは良く分かりました。ただ単に、走っているだけではダメなんですね。そこには様々な技術があるのだということを認識することができて、とても有意義な時間でした。それを踏まえて相談なんですが、42.195km走り切るために、実際に教わった方法で訓練するのは大変そうなので、何か上手いやり方はありますか?

こういうことを言っているのと同じです。
極端な例であることは重々承知ですが、言っていることは、近いのではないでしょうか。

学習において、一番きついのは、「理解」することでも、「記憶」をすることでもありません。一番きついのは、「想起」をする訓練です。

記憶のトリガーから、思い出す訓練をするのです。トリガーがないのであれば、編み出すのです。上記のご相談は、なるべく努力しないでいける方法はありませんか?というものだと思います。

はっきり言います。

この訓練から逃げたいのであれば、いわゆる難関試験に合格することはあきらめてください。難関試験とは、その名のとおり難関な試験であり、誰もが簡単に合格できるものではないのです。

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