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京都創業の企業にインタビュー!第1弾 分析・計測機器メーカー 株式会社堀場製作所 <後編>

~国内初・元祖学生ベンチャーの挑戦 京都から世界へ~


1953年に「国内初・元祖学生ベンチャー」として設立、「おもしろおかしく」の社是のもと、世界シェア80%※を誇るエンジン排ガス測定装置をはじめ、多数の分析・計測機器を展開する株式会社堀場製作所(本社京都市南区。以下、堀場製作所)。

今回は、堀場製作所の本社に訪問し、元取締役副会長 石田耕三氏、グローバル本部 エクスターナルコミュニケーションセンター センター長 上杉英太氏、ビジネスインキュベーション本部 R&D Planningセンター長 中村龍人氏にお話を伺いました。

後編では、堀場製作所のグローバル戦略や、スタートアップとの協業について取り上げています。

※堀場製作所推定

 <堀場製作所 基本情報>
創業:1945年
設立:1953年
事業内容:自動車、環境、医用、半導体、科学分野における分析・計測機器   製造・販売
連結売上高:2,243億1千万円(2021年12月期)
グループ従業員数:8,205名(2021年12月31日時点)

(左から1番目:上杉氏  中央:石田氏  右から1番目:中村氏)

2.株式会社堀場製作所の歩み(続き)

(4)グローバル展開の経緯

――御社の沿革を調べると、創業初期からのグローバル展開が成功の要因の一つなのでは、と思いますが、創業初期にグローバル展開することは計画されていたのでしょうか?それとも計画されていないチャレンジとしての側面があったのでしょうか?

グローバル展開は偶然の必然だったと思います。創業者である堀場雅夫氏は企業を起こし成功するためのすべての領域でセンスがあったのだと思いますね。堀場雅夫氏の父は学者で、ドイツ留学もされていたので海外に目を向ける素養が身についていたのかもしれません。

堀場雅夫氏は30歳くらいのときに初めて渡米し、日本は計測関連技術の領域ですごく遅れているため、海外にパートナーを見つけて事業展開をする必要があると考えたそうです。

その頃、自動車排ガスの課題に対する市場が世界で急速に広がっていて、特に欧米が先行していました。そのような状況の中、欧米の公的機関と繋がりを持つことができ、「堀場製作所の排ガス測定装置を売り出そう!」ということになり、欧米に進出しました。まず米国、次に欧州という風に先進国から売れていきましたね。米国はフェアな国で、ベンチャー企業の製品でも「良いものは使う」という考えで導入してもらえましたし、堀場製作所の製品を見て感激してくださった方もいました。しかし日本の企業は技術ではなく、会社の規模や上場しているかなどを重視し、追随型であることが多く、「米国の機関に導入されたから使ってみる」という状況でした。

(5)高シェア獲得の要因

――御社の製品の中には、世界の市場をほぼ独占しているものもあります。独占状態を維持できる要因は何なのでしょうか?

中国やインド、韓国など順番に海外展開をしていくとき、一番大切にしたのは現地に寄り添ったサービスですね。現地でのエンジニアリング体制を持ち、お客さんをサポートしました。現地の組織は実際にその場所で生活している人を集めて作りました。

また、地方で創業するにしても、世界を見たときに自分たちの会社や製品はどうなのか?ということを常に考えなければいけません。

世界が自分たちのマーケットでディファクトスタンダードをとるんだという認識を持つんです。そして極端に言えば日本のレギュレーションを世界に持っていくぐらいの気概で経営をしないと、本当のグローバリゼーションではないと思います。

すごく困難な道ではありますが、そこまでの気概があるくらいがちょうどいいですし、そういった気概のある起業家がもっと育ってほしいなと常々思いますね。

(6)本社を京都に置く理由

――世界を市場に戦っていく中で、本社を京都に置くメリットは何でしょうか?

自分の生まれ故郷って多くの人にとって大切なものじゃないですか。本当はずっと生まれ故郷で育ちたいという想いもあると思います。企業にとってもそれは同じで、自分の育った場所は、やはり心の原点なんです。

深刻にならずに自分たちの仕事を楽しむ、堀場製作所の社是「おもしろおかしく」、英語で「Joy and Fun」のような精神が原点にあるんじゃないかと思います。

3.スタートアップとの協業

(1)これまでのスタートアップとの関わり

――スタートアップとの協業についてお聞きします。これまでスタートアップとの関わりはあったのでしょうか?

これまでシード期への投資はなく、ある程度育った企業に投資をしていました。

私の経験で言うと、化合物半導体の製造装置を開発する子会社ができたとき、その会社の初代社長に就任しました。結果的にはこの事業はより大きな規模で行うことが必要と考えて他の会社に統合したのですが、同社の持っていた製造プロセスが堀場製作所にとってすごく勉強になりました。技術の吸収ができたんですね。その会社の技術者のうち数人は堀場製作所に残り、赤外線のレーザーなどの研究をしていて大きな成果に結びついています。

(2)スタートアップとの協業方針

――今後スタートアップと関わる際、どのような方針で関わっていくのでしょうか?

堀場製作所が必要とする技術を持つ会社があれば、今後も投資を検討すると思います。

今までは海外の企業に投資することが多く、最近ではFuelCon社(※1)などにも投資しましたね。

日本では社内政治を気にする企業が多く、企業同士の協業がうまくいかないように感じます。それに対して海外企業は社内政治などを気にせず、いい企業だと思ったらそこの傘下に入ってパートナーとして自分たちの仕事をする。堀場製作所の考え方から、結果的にそういう企業を選んでいるのだと思います。

また、我々はこちらから求めている会社を買いに行くのではなく、向こうから買収を依頼されるような会社になることを目指しており、今までの買収は後者のケースが多いです。

最近では日本でもオープンイノベーションやコラボレーションが増えていて、堀場製作所も東京大学や理化学研究所などとの連携を強化しています。ただ、これは最近始まったことで、過去の成功経験は多くありません。連携の声かけは増えていますが、それをどう成功に繋げていくかが今後の課題ですね。

 

<注釈>
※1 現ホリバ・フューエルコン社。本社ドイツ。バッテリー・燃料電池評価装置の開発等を行う会社で、2018年に堀場製作所が買収。

インタビュー:栖峰投資ワークスアシスタント 中山

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