サッカー戦術クラスタがポケモン対戦について考察してみた

どうもこんにちは。羊と申します。コロナ禍によるスポーツイベントの中止により暇を持て余し、そんな時に金ローで放送された『名探偵ピカチュウ』を劇場ぶりに見たら改めて刺さってしまい、嫁がSwitchを抽選で当てた事もあり、初代以来のポケモンに手を出した次第です。初代では学友と対戦に明け暮れ、赤をメインロムとし、努力値上昇のためのドーピングアイテム購入のために四天王周回、セカンドロムの緑初回版をわざマシン入手のためにセレクトバグを駆使して周回してはセーブデータを消し、を繰り返していた程度には嗜んでいます。個体値厳選を繰り返して育てたスターミーとサンダースが当時の相棒でした。

現在は戦術的にサッカーを解きほぐす事を趣味としており、今回はそういった角度から『ポケットモンスター Let's GO!ピカチュウ/イーブイ』の対戦について考察していければと思います。

『試合』『ゲーム』と呼ばれるものには『原理/原則』というものがあります。それはルールの存在によって形作られた、選手がプレーする上での『常識/セオリー』とほぼ同義です。サッカーは90分間と定められた時間の中で、相手より1点多く取って勝つ事がチームの目標となります。そのために決まった広さのピッチの中でどのように振る舞う必要があるのかが『常識/セオリー』として共有されています。例えば、ラグビーは得点を挙げるためにトライする場所はピッチの中央でもサイドでも構いませんが、サッカーのゴールはピッチの中央にしか無いため、最後は必ず中央での攻防になります。そのため、守備側の選手はゴールを守るべく極力中央に密集し、中央を厚く守る必要があると周知されています。ポケモンならば、相手が電気タイプを繰り出してきた場合、電気を無効化する地面タイプで対抗しようと考えるはずです。そうした『原理/原則』を知らないまま対戦を繰り返しても勝利は望めません

そして現代サッカーには『プレーモデル/ゲームモデル』という考え方があります。ざっくり説明すると『チームが勝利を目指すためにどのように振る舞い、どういった戦い方を志向するかのコンセプトの集合体』です。各クラブチームにはそれぞれの歴史があり、勝ち負けを繰り返し、培ってきた戦い方があります。そうしたクラブの文化の中から『是』とされるスタイルが浮かび上がってきます。価値観や信念と言い換えてもいいかもしれません。その価値観や信念をピッチ上で表現するために、現代サッカーでは『プレーモデル/ゲームモデル』としてチームが実現すべきサッカーはこれなんだ!という枠組み/型をチームに植え付けます。そこから「ウチは死んでもボールを繋いで相手の守備を崩して点を取る!」「ウチは我慢して引いて守ってカウンター!」みたいなスタイルが選択されていきます。ポケモンの対戦でもそれは同じで、勝利を目指すならばスタイルを明確にする事が肝要です。戦い方が1戦毎にブレていては、パーティ構築する際に必要なポケモンの数も無尽蔵に増えていきますし、育成のための時間を考えると得策とは言えません。時間は有限です。1戦毎の対戦時間も同様に有限です。

また『プレーモデル/ゲームモデル』をチームに植え付け、スタイルを選択した次は『プレー原則』を選手に叩き込む必要があります。この『プレー原則』は前述の『原理/原則』とは異なるもので、『チームの戦い方/スタイルを実行する上で、それぞれの局面において各選手が最優先で実行すべき事』です。「ボールを繋いで相手を崩して点を取るんだ!」と戦い方を定めているのに、やみくもに前方にロングボールを蹴り込むだけでは目的を達成できません。ボールを繋いで相手を崩す方が効果的だ!だからウチはそうするんだ!とチームが定めているのですから、選手もその指針に沿ったプレーを優先して選択する必要があります。パルシェンの強力な積み技『からをやぶる』をメインに据えて相手を全抜きしようと考えるならば、残り5体の戦い方もそれに合わせる必要があります。事前に『ひかりのかべ』でパルシェンの特防の弱さをカバーしてから場に出すなり、『でんじは』で相手を麻痺させた上で後出しでも安全にパルシェンを場に出せる状態を整えなければなりません。

こうした『プレーモデル/ゲームモデル』に沿ったチームを構築する事ができれば、チームは極力偶然性に頼らない、再現性の高いプレーを繰り返し行え、得点という目的に近づけるようになっていきます。偶然性=即興に頼ったプレーといえば「翼くん!」「岬くん!」のような阿吽の呼吸によるコンビネーションプレーが思い浮かびますが、2人のイメージが瞬時に共有できなければプレーは空振りに終わってしまいます。チームの『プレーモデル/ゲームモデル』を定め、スタイルを選択し、プレー原則を叩き込んでチーム/個人戦術を仕込む事で試合中に似た局面を何度も再現する事で「あ、この配置でこういう崩しは前にやったぞ!」と選手の脳内に経験が蓄積されていきます。公文式の売り文句さながらです。こうして運否天賦に頼らない、確実性の高い戦い方を選んでいくとポケモンの対戦勝率も上がっていきます。『つのドリル』で6体を抜く事は現実的ではありません

私は柏レイソルを率いてJリーグの全てのタイトルを勝ち取ってきた、名将ネルシーニョ監督の下でサッカーを観る目を養ってきたため、彼のスタイルに多大な影響を受けています。彼は非常に現実主義者で、勝つ可能性が高いと思えば何でもやります。戦い方の幅が非常に広く、思考面でネルシーニョ監督を上回る事は並大抵ではありません。そんな彼の口癖は「相手をニュートラルにする」です。これは『チームとしての相手の狙いを打ち消し、状況をイーブンにする。相手の狙いを消した上でこちらの狙いを相手にぶつける事で相対的に相手を上回る事ができる』というものです。つまり、守備からチームを構築していく事になります。これはポケモンの対戦で言うところの『受け』です。相手の繰り出すポケモンに有利なタイプを矢継ぎ早に繰り出し、タイプ相性で相手に対する優位性を確保しつつダメージを与えていく。こちらのポケモンに有利なポケモンを相手が交代で繰り出してくる事を予想して弱点となる技を先に置いておく。そういった戦い方、『プレーモデル』を私は志向しています。

私が『ピカブイ』に触れて一番強く感じた事は『仕様が初代に限りなく近い』という事です。昨今のポケモン各シリーズと違い『ピカブイ』には特性も持ち物も無く、回復手段にも乏しいため、相手の攻撃を受け続ける事が困難になっています。よって「相手の攻撃を受け止めて返す刀で切る」というスタイルは採用しづらくなっています。タイプによる弱点を突かれずとも、3ターンもあればHPが尽きます。各ポケモンの継戦能力に問題があるため、『先手を取れる素早さの高いポケモンが強い』。これは恐らく初代の仕様を意識して作られたものと感じます。それは同時に「各ポケモンは相手を攻撃するチャンスが精々3回しかない」とも言い替えられます。与えられたその僅か3回のチャンスで各ポケモンに何ができるか、何をさせたいのかを明確にし、正しく役割を与える事が勝率に繋がってきます。

よって、私のパーティ構築にもその辺りが考慮されています。また、ミュウツーを含む通常ルールであれば禁止レベルのポケモンの使用も『ピカブイ』の対戦ではOKとなっているため、勝率を上げたいのならばミュウツー対策は絶対に欠かせません。そうして現時点で採用しているのが以下のパーティです。


プテラ、ベトベトン、ウィンディ、スターミー、ニドキング、ギャラドス


プテラ

いわなだれ、ステルスロック、じしん、リフレクター

先鋒役&実質エース。凶悪技であるステルスロックを展開する事を考えつつも、最優先は相手ポケモンを減らす事。じしんで確定1発の電気タイプが場に居るのにステルスロックを選択するのは得策とは言えない。6vs5の数的優位性を馬鹿にしてはいけない。いわなだれの命中率が悩みの種。リフレクターを展開して場も作れる。


ベトベトン

イカサマ、かわらわり、メガドレイン、ちいさくなる

ミュウツー対処役その1。悪タイプでサイコキネシスゴリ押しのミュウツーなら完封。イカサマで確定2発。逆にミュウツーのじしんで確定2発である事に注意。かわらわりで対カビゴン、メガドレインで対サイドンを意識。


ギャラドス

たきのぼり、かみくだく、じしん、れいとうビーム

ミュウツー対処役その2。メガシンカ前提。ベトベトンで撃ち漏らした場合もメガギャラドスで対処可能。4倍弱点も消えるため、電気タイプの10万ボルトも確定で1発耐える。サンダー以外はじしんで返り討ち。れいとうビームはそのサンダーを意識してのもの。


ニドキング

じしん、いわなだれ、どくどく、だいもんじ

水タイプがパーティに2体居るため、電気タイプへの対処を目的として採用。飛行タイプでもあるサンダーにはいわなだれ。地面&毒タイプのため、サンダーの攻撃手段を全て消す事が可能。だいもんじは特防の低いメルメタルを意識。


スターミー

サイコキネシス、ねっとう、10まんボルト、じこさいせい

趣味枠その1。初代からの大事な相棒。技範囲も広く何でもできるが、突き抜けた種族値が無いため押しに欠ける。ココをミュウツーに変えれば勝率が上がる事は解っているがそれはやりたくない。面白くない。相手の耐久型を意識してなみのり/ハイドロポンプではなくねっとうで火傷狙い。相手の水タイプの対処は彼に掛かっている。どくどく、でんじは、ちいさくなる、じこさいせいを採用した型も育成済みだがパーティに組み込むには至っていない。


ウィンディ

フレアドライブ、かえんほうしゃ、かみくだく、じゃれつく

趣味枠その2。初代の炎タイプは対戦環境のせいもあって滅茶苦茶不遇だったが、それ故にどうにかどこかに捩じ込めないものかと考えを巡らせた事が懐かしい。なおステルスロックが幅を利かせる対戦環境ではリザードンは生きる権利すら与えられていない。かみくだくの採用でミュウツー対処役その3としても運用可能。ミュウツーには水タイプの技を採用する枠の余裕がないため優位性が確保できる。当初はおにびを採用していたが、命中率の事もあってかえんほうしゃに変更。メルメタルに刺され。


ピカブイの対戦環境において最強と呼んで差し支えないミュウツーの対処を最優先に考えた構成。アローラベトベトン、メガギャラドス、ウインディの3体を正面戦力として投入可能です。また、じしんの刺さらないサンダーへの対処を考慮してニドキングを採用。個人的に重要なポイントは初代からの大事な相棒の1体であったサンダースを泣く泣く切った事。相手の繰り出すポケモンに対して幅広く受ける事を重要視すると、各ポケモン1体1体に複数のタスクを担わせる必要性を感じました。その際に電気タイプの一致技メインウエポンが刺さるのが電気&飛行タイプ2種類しか居ない事と、サブウエポンの選択肢に乏しく、シャドーボールほぼ1択で第3の選択肢がない(サンダー&アローラライチュウ以外の電気タイプにも共通する)事で、サンダースを正面戦力として計算するのは難しいという結論に達しました。耐久の貧弱さもそれに拍車を掛けています。

各ポケモンに明確な役割が与えられている中で、趣味枠その1のスターミーだけがふわふわ宙に浮いているように役割がハッキリしないのは解っているのですが、切れないな、と。ロマンを廃して現実主義を貫き通すならミュウツー6体のパーティで話が終わってしまうので、ロマンを完全に捨てる事はしたくないんです。害悪系にシフトしたスターミーの採用は迷いどころではあります…。

以上が25年近くポケモンから離れていたサッカー戦術クラスタの対戦考察です。突っ込みどころは多数あると思いますので、ご意見ご感想お待ちしております。

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