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オリンピック・パラリンピック開催後の意識調査

こんにちは。ゼネラルパートナーズです。

今回は、「オリンピック・パラリンピック開催後の意識調査」をお届けします。

先日9月5日のパラリンピック閉会式をもって東京オリンピック・パラリンピックが終了いたしました。振り返れば東京オリンピック・パラリンピックは開催に至るまでにさまざまな困難がありました。コロナ禍での開催是非や観客の有無については、直前まで国民の高い関心の的だったと思います。

そこで障がい者総合研究所では、自国でオリンピック・パラリンピックを開催したことについて、障害のある方々はどう感じたのかを知るべくアンケートを実施いたしました。

対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/09/06~2021/09/10(有効回答者数:170名)

【質問1】東京オリンピック・パラリンピックをテレビ等で観戦しましたか?

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障がい者総合研究所が同じ内容の質問を4年前の同時期(2017/10/26~2017/11/2)に実施していますが、この時は「観戦したい」の割合が59%でした。自国開催のオリンピックということで観戦機会が多かったも影響あるかと思いますが、世界的なスポーツの祭典に多くの方の関心が集まったことがうかがえます。

※4年前(2017/10/26~2017/11/2)に実施したアンケート調査はこちら

【質問2】ご自身は東京オリンピック・パラリンピックを通じてどんなことを期待していましたか?(複数回答可)

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およそ回答者の6割に当たる103名の方が東京オリンピック・パラリンピックを通じて「障害者への理解の向上」を期待している、という回答結果となりました。

【質問3】東京オリンピック・パラリンピックは日本のバリアフリーを推進するきっかけになったと思いますか?

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東京オリンピック・パラリンピックは、バリアフリーを推進するきっかけになったと思った方は約46%という回答結果になりました。

【質問4】東京オリンピック・パラリンピックは、日本の多様性・共生社会の実現につながる活動を推進するきっかけになったと思いますか?

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東京オリンピック・パラリンピックは、日本の多様性・共生社会の実現につながるきっかけになったと思った方は約45%という回答結果になりました。

【質問5】東京オリンピック・パラリンピックは、日本の障害者への理解・関心を推進するきっかけにつながったと思いますか?

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東京オリンピック・パラリンピックを通じて、障害者への理解が進むと思うか聞いたところ、「すべての障害への理解・関心を推進するきっかけにつながったと思う」と回答した方の割合は12.4%にとどまりました。「パラリンピックに出場した障害に関しての理解・関心を推進するきっかけにつながったと思うがそれ以外の障害への理解は進まないと思う」、「すべての障害への理解は進まないと思う」の合計は約87%となり、東京オリンピック・パラリンピックによる障害への理解の促進は限定的であると思っていることがわかりました。

【質問6】東京オリンピック・パラリンピックを開催してよかったと思いますか?

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東京オリンピック・パラリンピックを開催してよかったと思うか尋ねたところ、開催してよかったと回答した方がおよそ6割を超えました。

まとめ


東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)は開催にあたり、「オリンピックレガシー」が当初より掲げられており「安心・安全」「文化・観光」「教育・多様性」「被災地復興支援」などといった各分野でその取組が進められてきました。こうした背景もあり、東京2020大会を契機に実現してほしい社会について、障害当事者の方々もいろいろと期待を寄せていたと思われます。

ふたを開けてみれば、東京2020大会はオリンピックで歴代過去最高のメダル数、パラリンピックにおいても史上2番目のメダル獲得数となり、自国開催にふさわしい結果をもたらしました。連日のメダルラッシュにマスコミでも話題に上らない日はない盛況ぶりでした。

こうした盛り上がりを受けてか、今回のアンケートにおいても、「東京2020大会を観戦したか?」という質問に対し、およそ7割の方が観戦機会を持ったようで、自国開催での関心の高さを伺える結果となりました。

また、東京2020大会を契機に実現してほしい社会(オリンピックレガシー)として、障害のある方々がどういったことを期待したかというと、一番多い回答は「障害者への理解の向上」となりました。では現実社会でオリンピックレガシーはどれだけ実感できているでしょうか。この疑問に関連するアンケートへの回答は以下の通りとなりました。

【質問3】「日本のバリアフリーを推進するきっかけになったと思うか?」という問いに対しては、「バリアフリーを推進するきっかけになった」と思った方は約46%、

【質問4】「日本の多様性・共生社会の実現につながる活動を推進するきっかけになったと思うか?」という問いに対しては、「日本の多様性・共生社会の実現につながるきっかけになった」と思った方は約45%、

【質問5】「日本の障害者への理解・関心を推進するきっかけにつながったと思いますか?」という問いに対しては、「すべての障害への理解・関心を推進するきっかけにつながったと思う」と回答した方の割合は12.4%にとどまりました。

オリンピックレガシーへの期待が大きい反面、おおよそアンケート回答者の半数は実感が持てていないという回答結果になりました。特に「障害者への理解・関心の推進につながる」とみている方はおおよそ12%程度と、限定的なものにとどまりました。

■期待と現実のはざまで

では自国開催についてはどうだったかというと、開催に肯定的な意見はおおよそ6割を超える回答を得られました。自由回答欄の回答を見ると、東京2020大会の開催に肯定的な方でもオリンピックレガシーにはネガティブな意見、東京2020大会の開催に否定的な方でもオリンピックレガシーになお期待を寄せる意見など、一人ひとり様々な思いを抱えて東京2020大会期間を過ごされていたということが分かります。ここではアンケートで寄せられた自由回答の一部ご紹介させていただきます。

■東京2020大会を開催してよかったという質問に「そう思う」と回答した方
「こんなにパラリンピックがテレビで放映されたことはないし、多くの人に見てもらうことができた。アスリートは普通の障害者ではないが、
障害者へのスポットが当たったことは非常に意味のあることだと思う。」(聴覚・言語障害 男性)

「今回はパラリンピックのテレビ中継の時間枠がたくさんあり、テレビ観戦によって、障害の種類や人間の持つ可能性などを知ることができた。これをきっかけに、パラリンピックの選手を支援する企業がたくさん出てくることを期待したいと思ったから。」(下肢障害 男性)

「(中略)様々な不安や反対はあったが、オリンピック・パラリンピックを楽しんだ人は、その一時だけでも、文化的な豊かさを取り戻せたのではないか。それこそがオリンピック・パラリンピックを行ってよかったと思う一番の理由だ。」(精神障害 男性)

■東京2020大会を開催してよかったという質問に「どちらかといえばそう思う」と回答とした方
「マインドに従えば、『どちらかと言えばそうは思わない』であるが、できるだけマイナス点を排除し、プラス点を必死に見つける努力をしてこういう評価になった。メディアの報道姿勢は、10年前に比べれば格段に進歩したと感じられるが、それでも『感動ポルノ』傾向は残っていると感じた。」(精神障害 男性)

「スポーツの祭典としての開催は否定しない。しかし調和と多様性をテーマにしても障害者スポーツや選手の障害について関心が向くだけであり、スポーツを通じて調和や多様性を向上するところまでは難しい。ただ選手の活躍自体は素晴らしいと思う。」(内部障害 男性)

「開催してよかったとは思いますが、この1回で直接理解に繋がるとは限らないと思います。ここからいかにつなげていくかの道筋が見えていないので、この後大きく変わるとはあまり思えないです。」(発達障害 男性)

「開催したおかげで、開催地のバリアフリーが少しは進んだと思う。でも、ボランティアに参加して、まだまだ日本では障害への理解が足りないことも実感した。そこを声に出しても理解されない壁はあった。」(内部障害 男性)
■東京大会2020を開催してよかったという質問に「どちらかといえばそう思わない」と回答
「障害については大きく報じられたため周知という意味では効果があったのかなと思います。一方で、世間の受け止め方として競技のことはわかったけれど、障害全般に対する理解が深まっていないと思うため。」(発達障害 男性)

「コロナ渦で外出が出来ない状況が続いてるなかでの開催は違和感がありました。どうしても、今回の開催は否定的な意見にならざるを得ないというのが自分の意見です。もう一つは盛り上がっても一過性なので、どこの地域で開催されてもそれほど変化は無いと思われます。」(精神障害 男性)

「私は、国民・市民や競技者、関係者の命を危機にさらしたという面において、東京大会を開催すべきではなかった、と思っていますが、大会を通して得ることができたポジティブな影響についても考慮すべきであり、それを発展させていくことでスポーツ振興、障がいへの更なる理解、だれもが安心して生きられるよりよい社会づくりにつなげていかなければいけないと思います。」(聴覚・言語障害 男性)
■東京2020大会を開催してよかったという質問に「そう思わない」と回答した方
「パラリンピックに関しましては素直に「オリンピックは放送枠が十分あるのになぜパラリンピックは放送枠が少ないのか」と。これも障害者に対する差別の一つであるとつくづく思います。」(精神障害 男性)

「そもそも今回のオリンピックないしパラリンピックは延期若しくは中止すべきだったと思う。一方、多くの駅で車いすが動きやすい動線の確保やインフラの整備が進められたことは最大の評価だと思う。しかしながらSDGsだインクルージョンだと言いながらも障害者は状態が安定している身体障害が優位であり、オリンピックやパラリンピックが行われたことで理解や関心が得られたとは1ミリとも思わない。現状の格差について主張することすら諦めている。」(発達障害 男性)

総じて東京オリンピック・パラリンピックに寄せる期待が高かった分、現実の変化が遅々として進まないことが不満としてあらわれるものの、自国開催を契機に社会に何かしら変化を起こすきっかけになってほしいという、当事者の声が見て取れるような気がします。

▼なお、開催まで残り1年のタイミングにあたり、2019年も同様の調査を実施。

▼開催まで残り1000日前のタイミングにあたり、2017年も同様の調査を実施。


<調査に関するお問い合わせはこちら>
株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所 所長 戸田重央
〒100-0011 東京都千代田区内幸町 2-1-1 飯野ビルディング 9 階
Mobile : 080-3004-6108
Mailto : toda@generalpartners.co.jp





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