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プロセスを可視化し、デザインを民主化する【ARIGATOBANK × Goodpatch Anywhere】

株式会社ARIGATOBANKが運営するarigatobankは、「楽しいコトが、お金に変わる。」をコンセプトに、アプリ内で実施されるキャンペーンに応募したり、ゲームで遊んだりすることでお金(電子マネー)をもらえるサービスです。もらったお金は、世界中のVisa加盟店ですぐに使用することができます。

フルリモートデザインチームのGoodpatch Anywhere(以下、Anywhere)は、2022年3月より、arigatobankのリニューアルに関するサポート業務をしています。サービスとユーザーとの関係性をより双方向的なものにするため、デザインプロセスの整理やアイディエーションなど、サービス設計の段階から業務に併走しました。本記事では、具体的な業務に触れながら、プロジェクトの様子をご紹介します。

「利益がゴールではない」サービスの面白さと難しさ


——Anywhereにお声がけくださった経緯を教えてください

株式会社ARIGATOBANK プロジェクトPM・三宅さま:
「arigatobank」の前身は、個人間で簡単に寄付し合えるプラットフォームアプリ「kifutown」でした。6月にリニューアルし、arigatobankとして生まれ変わったんです。kifutownは、「お金に困っている人をゼロにする」というビジョンに基づいて作られたサービスで、寄付をする人と、寄付をして欲しい人とを繋げるというモデルを持っていました。しかし、寄付者の数には限界がありますから、たくさん応募をいただいても、一部の人にしかお金が届かず、需要と供給のバランスに課題を感じていました。
そこで私たちは、このビジョンを実現する手段として「寄付」以外のさまざまな可能性について検討をはじめました。3月ごろから新規事業の検討を開始し、Anywhereにワークショップなどを依頼したんです。
5月に入ってからは、kifutownにあった「お金贈り」の楽しさは残しつつ、ユーザーがより能動的で持続的に利用できるよう、リニューアルの方向性の検討を進めていきました。

ARIGATOBANK プロジェクトPM・三宅さま


——依頼の際に、Anywhereに期待したことは?
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
Anywhereに声をかけたときは、UIUXの検討や、中長期的なデザインのプロセスの整理をしてほしいなと思っていました。いざ一緒に働いてみると、プロジェクトの進め方や、社内でアイディエーションする際にどう合意を取ればいいか、という部分にも知見をもらえました。ここを体系化できたのはよかったなと思っています。
 
Anywhere クオリティマネージャー・大堀:
一般的なサービスでは「ユーザーから利益を得る」ことが前提としてあるのですが、arigatobankプロジェクトではゴールが利益ではなかったんですよね。そこがとても面白かったし、難しくもありました。
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
かなりカオスな環境でしたよね、良い意味で。プロダクトの筋を検討する際に軸となったのは、利益ではなく、ビジョンや世の中の流れなど、さまざまな要素を掛け合わせた視点でした。アイディエーションでは多くの事業アイデアが出てきましたが、「新しいお金の流れをつくる」ことを考えたとき、Web3で増えてきている「楽しみながらお金を稼ぐ」動きは重要な要素でした。こうした流れとの掛け合わせで事業検討を進め、arigatobankのコンセプト「楽しいコトが、お金に変わる。」が生まれました。
arigatobankは「前払い式」のサービスなので、ユーザーが報酬金を受け取り、身近な場所で使えるということも大事な世界観です。

限られた時間の中で「新しさ」を打ち出していくために

——印象に残ったコミュニケーションや、気に入ったポイントはありますか?
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
3月から5月の新規事業検討で一緒に働いたときの印象が強く残っています。プロジェクトの初期に、方向性を決めるワークショップがありました。オンラインホワイトボードで可視化しながら進めてもらえたので、社内でのコミュニケーションの質やスピードが向上したんです。今までもオンラインホワイトボードは使っていましたが、会議の内容に合わせてフォーマットを作ったりするナレッジがなかったので、助かりました。アイディアが出やすくなり、参加者の満足度も上がったと思います。 

新規議場検討のワークショップ

ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
リブランディングのためにデザインを刷新をしたのですが、その際にAnywhereのデザイナー陣と協業したことが印象に残っていますね。kifutownからarigatobankに生まれ変わるので、ロゴやビジュアルアイデンティティを変える必要がありました。AnyehereのみなさんはUIデザインのトンマナを変更する際に「なにを変えずに、なにを変えればいいか」という整理をしてくれたり、デザインシステム上のブランドカラーなど、細かいニュアンスを検討するためのアイディアを出してくれたので、スムーズにデザインの移行ができました。

ARIGATOBANK デザイナー・角間さま

Anywhere デザイナー・ナヲミ:
リリースまで割とタイトなスケジュールでしたが、ブランドのデザインを決めることができるポジションの角間さんがご一緒してくださったのは心強かったです。ブランドの「新しさ」を、最小限でどう打ち出していけるか、を一緒に検討していきましたね。
 
Anywhere デザイナー・福永:
作業のコストを下げながら、効果的に変化を出す、ということを意識してデザインサポートをしていたと思います。Anywhereは開発側とのコミュニケーションをメインで行いながら、みんな黙々とデザイン作業を進め、適宜、角間さんに相談をする、というような。
 
ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
ロゴのデザインもタイトなスケジュールでしたよね。ブランドコンセプトをつくった時点でメインモチーフを「ハイタッチにする」という意思決定ができたので、あとはアイデアの発散からディティールを詰めるところまで、スピーディに進めていきました。
 
Anyhere デザイナー・ナヲミ:
初めて角間さんのデザインを見せてもらったときは、Anywhereのみんなで「すごい!」と盛り上がりました。

角間さまの製作したビジュアルアイデンティティ

デザイナーでない人も見やすく、触りやすいデータ

 ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
オンラインデザインツールのFigmaを使用して、社内の他の部署にレビューを依頼したりコミュニケーションをとったりするAnywhereの手法は、参考になりました。デザイナーでなくとも見やすく、触りやすいデータにしてくれたんですよね。申し送り事項を書き込む付箋や、デザインデータのステイタスを示すラベルなどを作ってくれたので、ほかの部署の人が見ても分かりやすい状態に整理されていました。この方法は継続していきたいなと思っています。

Figmaのデータを付箋やラベルで管理

Anywhere デザイナー・ナヲミ:
arigatobankさんは、デザインフェーズでもミスが起きがちな場面でしっかりコミュニケーションをされていて、「すごいなあ……」と思いました。そうして出来上がったブランドカラーやトーン&マナーは温かさに溢れていて、これもまた素敵だな、と。
 
ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
金融に関するサービスはどうしてもビジュアルが堅くなりがちなので、やさしさや柔らかさを意識しながらデザインを進めました。

実際の画面を見ながら話し合うことで、すれ違いをなくす

——Anywhereのメンバーと一緒に働いてみた率直な感想は?
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
キャッチアップが早くて、すぐに適応してくれた印象があります。「業務」というお付き合いだとビジネスライクになりがちですが、「プラスの提案」をしてくれたり、コミュニケーションにも温かみがあったなと思っています。
 
ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
コミュニケーションの温かみ、私も同じように感じました。さっきみたいにロゴをみんなで褒めてくれたり、Slackで賑やかなスタンプを送ってくれたり。
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
Anywhereと一緒にプロジェクトを進めたことで、ステークホルダーが多い環境でUIUXの検討や意思決定のスピードが上がったと思います。組織内のコミュニケーションスピードも上がりました。今までは文字を中心として議論を進め、最後にデザインを見せたときに「想像と違った」ということもあったのですが、今回はFigmaを活用して、初期段階から画面を見せられた。だから、サービスの検討が素早く正確にできたんです。言葉を起点としたイメージには幅があるので、「画面が実物として存在し、それに対して意見を言える」という環境はとても良いなと思いました。
 
ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
デザイン面においても、UIのデザインプロセスを整えてくれたので、業務のスピードが上がったと思います。KPT(「Keep・Problem・Try」で構成されるふりかえりのフレームワーク)を設定してくれたので、チェックしながら進めていけるのもよかったです。KPTは今後も社内で定期的にやっていきたいですね。

KPTの様子

Anywhere PM・浜田:
Slackの「ハドルミーティング」機能やZoomでの会議など、必要に応じてコミュニケーションツールを取捨選択するのがAnywhereの特徴ですが、今回はそれが功を奏したと思っています。相談しながらプロジェクトを進めていくためには、存在感を出していく必要もあります。デザインフェーズでは、Figmaにある通話機能も使いながら、コミュニケーションをとっていきました。

フェーズに応じて専門家をアサインする

 ARIGATOBANK デザイナー・角間さま:
それから、AnywhereにはUIUXやライティングなど、専門的な知識を持っている人が多く、必要なフェーズに応じて専門的な知見をくれるのにも安心感がありました。
 
Anywhere クオリティマネージャー・大堀:
今回は、Anywhere内部での勉強会も実施したんです。NFTに詳しいメンバーをアサインして、今後の展望などをリサーチしてもらい、内部共有しました。
 
Anywhere デザイナー・福永:
私は、arigatobankプロジェクトに関わる中で、「ブロックチェーンをもっと勉強したいな」と思ってSTEPNを始めたんです。

STEPNerになりたいAnywhereメンバーがSlackで福永さんに群がる様子

Anywhere クオリティマネージャー・大堀:
実は福永さんの後で、僕もSTEPNを始めました。NFTゲームユーザーにとってのギルド制のありがたみやカルチャーについて、ユーザーとしての経験を積むことで理解が深まっていくと思います。NFTゲームはポンジ・スキーム的な側面があるという指摘もあり、個人的には距離を置いて来ましたが、今回のことで、新しい分野を理解するためのいいきっかけをいただけたなと思っています。

楽しみながらお金を得られて、日常で利用できるサービス

——kifutownから生まれ変わったarigatobank。今後は、どんなふうに運用していきますか?
 
ARIGATOBANK PM・三宅さま:
「お金に困っている人をゼロにする」というビジョンを実現するために、楽しみながらお金を得られるようなコンテンツを、どんどん増やしていきます。アンケートに答えるとお金が貰えたり、ログインしているだけでお金を貰えたり、楽しくてサプライズに富んだサービスを実施していこうと思っています。それから、arigatobankには決済機能もあるので、複数の金融サービスと提携し、ユーザーが日常で利用できるような身近なツールにしていきます。

Anywhereでは今回のようなサービスリニューアルのデザインサポートを、今後も積極的に行ってまいります。「サービスを生まれ変わらせたい」「プロセスや考え方から一緒に整理したい」という方は、いつでもご相談ください。

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