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さよなら、香りの図書館

NOSE SHOPという少し変わった名前の店舗がある。
そのまま訳せば「鼻屋」であり、界隈でもよく鼻屋と呼ばれている。


NOSE SHOPは「ニッチフレグランス」に分類される香水を販売している。
ニッチフレグランスとは、メインストリームと言われる大手ブランドやメゾン系と対をなすような、いわゆる一般ウケとは異なる個性の強いものや、アーティスティックなものを指すが、それほど明確な定義はないように思われる。
既に百貨店にはテナントとして入っているので、ニッチフレグランスに対するマニアックなイメージは、もうあまりないかもしれない。
NOSE SHOPでは、企業規模にまだ伸びしろがあるブランドの他、あまり知られてはいないが由緒ある老舗ブランドや、海外の新進気鋭のブランドなどの香水も扱っている。

国内に数店舗あり、私が初めて行ったのは有楽町店だった。
サノマの香水を買うために行ったのだが、せっかくなのでいくつか見せて(嗅がせて)いただいた。

当時私は、自分の香りの好みを探すために、試した香りをすべてリストアップしていたので、それを販売員に見せたところ、あれやこれ、この調香師の作品が好きならこちら…というように、通常の香水売り場とは異なる接客をしていただいたのがとても楽しかった。
同時に、ロット数が少ないのもあって、価格に少々驚いた記憶がある。

それからしばらくして、丸の内店を訪れてみた。
新丸ビルの一角にある図書館をテーマにしたこの店舗は、都会的な有楽町店と趣が全く異なる。
店の奥の壁が緩やかなカーブがついており、そこに香水と共に、香水に関する本が飾られている。
全体的にクラシカルで、落ち着いた佇まいの店である。
私はこの店舗がとても気に入り、その後何度か通うことになるのだが、元々この店舗はポップアップであり、今日7月27日で閉店となる。

通った店がなくなるのは寂しい。
ここには香水の知識が豊富な店長や、私のニーズを把握した上で良いチョイスをしてくれる販売員がおり、商品はけして安価ではないものの、私は絶対の信頼をおいている。

ここで開催されたイベントに参加したこともある。
そこで創業者の中森さんとお話をさせていただいたが、尖ったファッションとは逆に柔和で親しみやすいお人柄であり、こういう人のもとで良い販売員が育つのだなと思った。

何よりも丸の内店の知的な店構えが大好きだった。
「犬は人につき、猫は家につく」とよく言われるが、私は人にも家にもついたようだ。
通ったのは1年弱ではあったが、香水のことがわかる友人をひとり失くすぐらいの寂しさである。
できればこのまま常設になってほしかったが、終わりが明確であるから良いのだろう。
またどこかの店舗であの人たちに会いたいと思う。

会いに行こう。

NOSE SHOP 丸の内店

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