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OudとRose、美しきコンチェルト

どこもかしこも「ウード(Oud)」である。サロンドパルファン(サロパ)でもウード系がずいぶん人気だったようだ。

はじめてウードに触れたのは、おそらくThe House of OudのTHE TIMEだったと思う。…が、その香水にウードが入っていたのかはわからない。レシピに記載はされていないし、その時私が求めていたのはウードではなくお茶の香りだったから。それにウードの香りそのものを知らなかった。

次が同じくThe House of Oud Crop2021。Nose Shopで「ウードの香りを知りたいんです」と言った時に、棚の中で厳かに陳列されていたものを親切な店員さんが出してきてくれた。
こちらはチョコレートではじまり、20分程度で少しずつウードの香りがでてくる。
鼻の奥にズンとくる刺激臭のようなものが感じられ、正直、何故これが人気なのかわからなかった。
ムエットを持ち帰り、数日経った頃、静かにたたずむ香木の香りが、ムエットを置いた周辺に香っていた。確かにそれは香しかった。

その次にMaison Christian DiorのOUD ISPAHANを試したとき、なるほど、レザーのような動物っぽさ、これがウードのアニマリックな香りなのだと思った。

ところで、ウードとローズは王道の組み合わせなのだそうだ。
どうしてそれが王道なのか、私はずっと考えていた。他の花、たとえばジャスミンだって良さそうなものだ。

ある日、サノマの2-23胡蝶をつけていたときだった。
2-23はサノマが作った”日本版ウード”であるが、ウードそのものを使った香りではなく、"ウード調"である。そこにスパイスと甘さのないフレッシュなローズが使われている。
私の肌ではどちらかというと少し男性的な香りになってしまう。
ところが、ふとした瞬間にローズだけが際立って感じられた。

重く下の方に漂うコントラバスのようなウード(調)の香りの上で、華やかに鳴るピアノのようなローズ。
それはまさにコンチェルトと呼ぶに相応しい、立体感をもったアコードであった。


もしこれがローズでなく、ジャスミンだったら、そのモワっとする熱帯のジャングルのように籠った花粉の香りは、2-23から透明感を奪い、おそらく動物っぽさを呼び込むだろう。
たとえそれが、Tom Fordのジャスミンルージュのように華やかで明るく透明感のあるジャスミンであっても、ジャスミンがもつ尖った部分がウードの強さと喧嘩するのではないかと思う。

やっぱりローズなのだ。

コンチェルトとは、元々は「論争する」という意味から発展し、今では「力を合わせる」という意味合いが強くなった言葉らしい。

ローズの優しさがウードの荒々しさをなだめるように、ウードの力強さがローズの弱さを守るように、両者は生涯添い遂げる仲睦まじい夫婦のようなコンチェルトを奏でているに違いない。


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